すずはら なずなさん
レビュアー:
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短い文で状況と人間関係と細やかな感情を伝え感動させる手腕。
短編の名手 O.ヘンリ。この「2」には「賢者の贈りもの」が収録されています。
相手を思う気持ちと愛から出る行き違いや勘違いなら、どんな結果を引き起こしてもやっぱりハッピーで心は温かくなる、ということなのだと思いました。
短い物語でまとめるためには経過した時間や会話などの描写を最小限に留めながら、きちんとどんな登場人物でどんな関係か見えないといけない。そこが描かれているから、ラストのどんでん返しやくすっと笑えるオチが見事に読者に伝わるのだと思います。
時々さしはさまれるキリスト教の知識がないと分かりづらい比喩や一文も、逆に素養のある読者には それを引き合いに出すだけで奥深くなるのでしょうか。注釈を読んでもピンとこない異文化の人間には仕方ないことですがまあ、それはそれとして。
夫に殴られてはご機嫌取りのプレゼントをせしめる友達をうらやむ主人公。
夫に殴られたいなんてとんでもない話だと思うけど、オチがよかったです。「ハーレムの悲劇」
セレブとの結婚願望のあるデパート勤務の女の子と優しい彼氏のいるクリーニング店勤務の友達。婚活話は今の時代でも通じそうです。「手入れのよいランプ」
ホームレスの一人を気まぐれに自宅の食事に誘い、身の上話を聞こうとするお金持ちの男。
ホームレスの彼らが皆それぞの境遇や経験を共有してこんな時に「身の上話」を語れるという話が面白い。
望まれて彼のしたのは「本当の彼の身の上話」。相手の「内面まで描けすぎて」失業した肖像画家だったということ。
それを聞いて一枚の写真を元に彼にパステル画を描かせるお金持ち。出来上がった絵は一流で、モデルの内面も間違いなく素晴らしいと近所の現職の画家にもお墨付きをもらう。
でも、どうしてそのホームレスの元肖像画家を帰してしまって(多額のお礼と立派な食事は出したけれど)、ほかの画家にそれを基にした傑作を依頼したんだか結末がちょっと疑問。
●後で考えてみたので追記
富豪には名画かどうか、透けて見えると言うモデルである自分の妻の本性を確認する自信がなかった、またはこのホームレス画家に続けて製作させて別の本性が見え出すのが怖かった、なんて理由も考えてみました。
ホームレスの元画家がこれをきっかけに再起できるまでは描かないところが作者らしいのかなとも思いましたがどうでしょうか
「マディソン・スクエア・アラビアンナイト」
二十年後また会う約束した場所で相手を待つ男。かなり危ない相手と渡り合ったりしながら富を得たようですが、見巡りに来た警官に問われて、少しばかりの身の上話と待ち合わせ相手の「今」をを気遣う会話をかわします。後にやってきた待ち合わせ相手(と、思しき相手)。
実は…というところがちょっと切ない。「二十年後」
少し長い最後の一遍は3つに分かれた道のどれを選ぶかで物語を3つ用意されています。詩人になりたい羊飼いの男が彼女と喧嘩の末旅にでた後…という物語。人生どの道を行っても結果は同じ?
なんだか皮肉で残念ですが、一瞬でも美女と結婚できそうだったり、大きな事件に関わりそうだったり、波乱万丈なのがいいのか、平凡でもいいから幸せに暮らせるもう一本の道はなかったのか考えてしまいます。(もともと旅に出ないという選択肢もあったのかも)「運命の道」
その他10編収録されています。
相手を思う気持ちと愛から出る行き違いや勘違いなら、どんな結果を引き起こしてもやっぱりハッピーで心は温かくなる、ということなのだと思いました。
短い物語でまとめるためには経過した時間や会話などの描写を最小限に留めながら、きちんとどんな登場人物でどんな関係か見えないといけない。そこが描かれているから、ラストのどんでん返しやくすっと笑えるオチが見事に読者に伝わるのだと思います。
時々さしはさまれるキリスト教の知識がないと分かりづらい比喩や一文も、逆に素養のある読者には それを引き合いに出すだけで奥深くなるのでしょうか。注釈を読んでもピンとこない異文化の人間には仕方ないことですがまあ、それはそれとして。
夫に殴られてはご機嫌取りのプレゼントをせしめる友達をうらやむ主人公。
夫に殴られたいなんてとんでもない話だと思うけど、オチがよかったです。「ハーレムの悲劇」
セレブとの結婚願望のあるデパート勤務の女の子と優しい彼氏のいるクリーニング店勤務の友達。婚活話は今の時代でも通じそうです。「手入れのよいランプ」
ホームレスの一人を気まぐれに自宅の食事に誘い、身の上話を聞こうとするお金持ちの男。
ホームレスの彼らが皆それぞの境遇や経験を共有してこんな時に「身の上話」を語れるという話が面白い。
望まれて彼のしたのは「本当の彼の身の上話」。相手の「内面まで描けすぎて」失業した肖像画家だったということ。
それを聞いて一枚の写真を元に彼にパステル画を描かせるお金持ち。出来上がった絵は一流で、モデルの内面も間違いなく素晴らしいと近所の現職の画家にもお墨付きをもらう。
でも、どうしてそのホームレスの元肖像画家を帰してしまって(多額のお礼と立派な食事は出したけれど)、ほかの画家にそれを基にした傑作を依頼したんだか結末がちょっと疑問。
●後で考えてみたので追記
富豪には名画かどうか、透けて見えると言うモデルである自分の妻の本性を確認する自信がなかった、またはこのホームレス画家に続けて製作させて別の本性が見え出すのが怖かった、なんて理由も考えてみました。
ホームレスの元画家がこれをきっかけに再起できるまでは描かないところが作者らしいのかなとも思いましたがどうでしょうか
「マディソン・スクエア・アラビアンナイト」
二十年後また会う約束した場所で相手を待つ男。かなり危ない相手と渡り合ったりしながら富を得たようですが、見巡りに来た警官に問われて、少しばかりの身の上話と待ち合わせ相手の「今」をを気遣う会話をかわします。後にやってきた待ち合わせ相手(と、思しき相手)。
実は…というところがちょっと切ない。「二十年後」
少し長い最後の一遍は3つに分かれた道のどれを選ぶかで物語を3つ用意されています。詩人になりたい羊飼いの男が彼女と喧嘩の末旅にでた後…という物語。人生どの道を行っても結果は同じ?
なんだか皮肉で残念ですが、一瞬でも美女と結婚できそうだったり、大きな事件に関わりそうだったり、波乱万丈なのがいいのか、平凡でもいいから幸せに暮らせるもう一本の道はなかったのか考えてしまいます。(もともと旅に出ないという選択肢もあったのかも)「運命の道」
その他10編収録されています。
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電車通勤になって 少しずつでも一日のうちに本を読む時間ができました。これからも マイペースで感想を書いていこうと思います。
この書評へのコメント
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- 出版社:新潮社
- ページ数:239
- ISBN:9784102072028
- 発売日:1987年02月01日
- 価格:420円
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