efさん
レビュアー:
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あらま~、ピンチョンはんお茶目やわ~
トマス・ピンチョンは難物であります。これまでに何冊か買い、そして借りて読んでは来ましたが毎回苦しんできました(それでも歯を食いしばって読了はした)。
どうにも「読めた」という気には到底なれず、私の中のピンチョンのイメージは「何書いてんだ、ごるぁ!」という難解文学の一つなのでした。
そんな私がまたまたピンチョンに手を出してみましたよ。今度こそという気持ちもあれば、また駄目だろうなぁという最初からあきらめ半分の気持ちも抱いての読書でありました。
さてさて……おりょ?! 今回は……なんか読みやす~い。わっはっは! おもしろ~い!! なのですよ(自分でもびっくり!)。どうやら遂に私にもピンチョンを読める日が来たのか?!
物語は架空のヴァインランドという土地を中心に展開します。色々な読み方はできそうですが、ファミリー・ヒストリーと読むのも一つの読み方ではないでしょうか?
お父さんはゾイドという60’sヒッピーを未だにやってるかなり頭のネジが緩んじゃってるダメおやじ。一応バンドのキーボード奏者なんですが、ドラッグでグズグズになっており、訳あって精神障碍者のフリをして政府から補助金をかすめ取っている男。
そろそろ一発かまさないと障碍者認定が取り消されそうだ……ということで、毎年恒例の『窓破り』に出かけます。近所のスーパーで派手派手な女性もののパーティー・ドレスを買って着替え、用意されたガラス窓に突撃~!! この様子は全米TV中継されちゃいます(笑)。
ゾイドの娘はプレーリィという割としっかり者のお嬢。父親のゾイドと二人暮らしをしているのですが、まだティーンなんですけどこのダメおやじの手綱をしっかり握っております。彼女、お母さんのことを知らないんですよ。彼女はゾイドと、フレネシというおみ足の美しい女性の間に生まれたの子供なんですけど、フレネシはプレーリィを生んで間もなくゾイドと離婚。なのでプレーリィも母親のフレネシの記憶がないんです。
まあ、このフレネシというのも筋がね入りでありまして。三代に渡るがちがち左翼過激活動家。なのにどうゆーわけか悪辣連邦検事のブロック・ヴォンドに籠絡されちまうのです。でも嫌気がさしたフレネシは逃げ出し、身を隠す方便としてゾイドと結婚しちゃったんですけど、あらま、そこでプレーリィをご懐妊。でも、たちまち育児ノイローゼに陥り、産後の手伝いに来た母親にプレーリィを押し付けて姿をくらましてしまうのです。
本作は、基本的にはプレーリィがフレネシを探し、ヴォンドがそれを邪魔しようとするという物語になっているわけですが、そこにふざけたキャラが多数絡み、それぞれのパートで思いっきり話を膨らませるのでなかなか混み入った物語になっております。
ゾイドは長年麻薬取締係の警察官ヘクタにつきまとわれているんですが、このヘクタが何故かこてこての大阪弁で、腐れ縁の二人のやり取りはまるで漫才のよう。ある時、ゾイドは麻薬所持の容疑でハメられて逮捕されるというエピソードがあるんですが、この時、ヘクタは天井にまで届こうというような巨大なマリファナの塊(まるでモノリスのようだわ)をゾイドの家に運び込み、「あんさん、麻薬所持の現行犯やで!」とやるんですが爆笑してしまいました。
はたまた家を出ちゃったプレーリィはDLというかっ飛んだ女性ニンジャと親しくなるのですが、このDLのパートがまたはじけまくっておりまして、彼女、日本人の猪四郎なる、ヤクザともつながりがある裏殺法の達人に弟子入りし、怪しげな技を承継するのです。んで、ヤクザに誘拐されてヴォンド殺しを求められ、なんと売春宿に売られつつ機会を狙っているのです。
そこで巻き添えを喰うのが謎の日本人である文茂田武(フミモタ・タケシ)。まあ、彼はスケベでありまして、そこに付け込まれてヴォンドの身代わりとしてDLが待つ売春宿に送り込まれ、そこでDLから『秘技一年殺し』を食らっちまうのです。あらま~、人違い!(以後、二人も腐れ縁に)。
その他、これでもかという位に濃ゆいキャラが満載であります。もうゴジラも出て来ちゃうわ(足跡だけっすけどね)、シンデルロなるゾンビのような死人(まさに死んでるろ!)たちがコミュニティを作ってるわ、もうハチャメチャなスラップスティック展開になっております。
また、全編にわたり60~70年代辺りの音楽、映画、TV番組等々が押し込まれており、中には日本人にもお馴染みのものがあってその度にニヤニヤ。
という作品なのですが、これまでのように「ピンチョンはん、よーわからん」とはならず(いや、まあ、よく分からないのは分からないんっすけどね)、結構楽しく読めちゃいました(まあ、『重力の虹』もかなりぶっ飛んだ話で似ているテイストはあるんですが、あれよりは読みやすかった)。
とは言え、プロットの枝葉の方を異様に膨らませるいつもの書き方なので混迷の度はかなり深いんすけどね。
そして特筆すべきは巻末の訳注であります。これがふつーのまともな訳注などではなく、書きたい事書いてる面白~い注なのでおっくうがらずに是非読むべし! 本書にはしおりが二本ついているので、一本は巻末訳注の方に仕込んで、注番号が出る度にちゃんと読むといいよ~。この訳注は単なる注にとどまっておらず、ピンチョンの読み方まで指南してくれるスグレモノであります。もちろん訳自体も素晴らしく、これは名訳じゃないでしょうか?
惜しむらくは、登場人物一覧を是非つけて欲しかったぁ(いや、相当多数のキャラが出て来るので次第に「誰だ、こいつは?」になっちゃうのよ~)。
ということで、ようやく私にもピンチョンが読めた~と感慨にふけった一冊でありました(ようやくピンチョンを読むコツのようなものが分かってきたような気もするのだ)。これに気を良くしてまたピンチョン読むぞ~(プラス、これまでどうにも消化不良のまま終わった作品も再読しなきゃだわ)。
でも、読了後ぐったり疲れた。
読了時間メーター
□□□□ むむっ(数日必要、概ね3~4日位):2023/06/22
どうにも「読めた」という気には到底なれず、私の中のピンチョンのイメージは「何書いてんだ、ごるぁ!」という難解文学の一つなのでした。
そんな私がまたまたピンチョンに手を出してみましたよ。今度こそという気持ちもあれば、また駄目だろうなぁという最初からあきらめ半分の気持ちも抱いての読書でありました。
さてさて……おりょ?! 今回は……なんか読みやす~い。わっはっは! おもしろ~い!! なのですよ(自分でもびっくり!)。どうやら遂に私にもピンチョンを読める日が来たのか?!
物語は架空のヴァインランドという土地を中心に展開します。色々な読み方はできそうですが、ファミリー・ヒストリーと読むのも一つの読み方ではないでしょうか?
お父さんはゾイドという60’sヒッピーを未だにやってるかなり頭のネジが緩んじゃってるダメおやじ。一応バンドのキーボード奏者なんですが、ドラッグでグズグズになっており、訳あって精神障碍者のフリをして政府から補助金をかすめ取っている男。
そろそろ一発かまさないと障碍者認定が取り消されそうだ……ということで、毎年恒例の『窓破り』に出かけます。近所のスーパーで派手派手な女性もののパーティー・ドレスを買って着替え、用意されたガラス窓に突撃~!! この様子は全米TV中継されちゃいます(笑)。
ゾイドの娘はプレーリィという割としっかり者のお嬢。父親のゾイドと二人暮らしをしているのですが、まだティーンなんですけどこのダメおやじの手綱をしっかり握っております。彼女、お母さんのことを知らないんですよ。彼女はゾイドと、フレネシというおみ足の美しい女性の間に生まれたの子供なんですけど、フレネシはプレーリィを生んで間もなくゾイドと離婚。なのでプレーリィも母親のフレネシの記憶がないんです。
まあ、このフレネシというのも筋がね入りでありまして。三代に渡るがちがち左翼過激活動家。なのにどうゆーわけか悪辣連邦検事のブロック・ヴォンドに籠絡されちまうのです。でも嫌気がさしたフレネシは逃げ出し、身を隠す方便としてゾイドと結婚しちゃったんですけど、あらま、そこでプレーリィをご懐妊。でも、たちまち育児ノイローゼに陥り、産後の手伝いに来た母親にプレーリィを押し付けて姿をくらましてしまうのです。
本作は、基本的にはプレーリィがフレネシを探し、ヴォンドがそれを邪魔しようとするという物語になっているわけですが、そこにふざけたキャラが多数絡み、それぞれのパートで思いっきり話を膨らませるのでなかなか混み入った物語になっております。
ゾイドは長年麻薬取締係の警察官ヘクタにつきまとわれているんですが、このヘクタが何故かこてこての大阪弁で、腐れ縁の二人のやり取りはまるで漫才のよう。ある時、ゾイドは麻薬所持の容疑でハメられて逮捕されるというエピソードがあるんですが、この時、ヘクタは天井にまで届こうというような巨大なマリファナの塊(まるでモノリスのようだわ)をゾイドの家に運び込み、「あんさん、麻薬所持の現行犯やで!」とやるんですが爆笑してしまいました。
はたまた家を出ちゃったプレーリィはDLというかっ飛んだ女性ニンジャと親しくなるのですが、このDLのパートがまたはじけまくっておりまして、彼女、日本人の猪四郎なる、ヤクザともつながりがある裏殺法の達人に弟子入りし、怪しげな技を承継するのです。んで、ヤクザに誘拐されてヴォンド殺しを求められ、なんと売春宿に売られつつ機会を狙っているのです。
そこで巻き添えを喰うのが謎の日本人である文茂田武(フミモタ・タケシ)。まあ、彼はスケベでありまして、そこに付け込まれてヴォンドの身代わりとしてDLが待つ売春宿に送り込まれ、そこでDLから『秘技一年殺し』を食らっちまうのです。あらま~、人違い!(以後、二人も腐れ縁に)。
その他、これでもかという位に濃ゆいキャラが満載であります。もうゴジラも出て来ちゃうわ(足跡だけっすけどね)、シンデルロなるゾンビのような死人(まさに死んでるろ!)たちがコミュニティを作ってるわ、もうハチャメチャなスラップスティック展開になっております。
また、全編にわたり60~70年代辺りの音楽、映画、TV番組等々が押し込まれており、中には日本人にもお馴染みのものがあってその度にニヤニヤ。
という作品なのですが、これまでのように「ピンチョンはん、よーわからん」とはならず(いや、まあ、よく分からないのは分からないんっすけどね)、結構楽しく読めちゃいました(まあ、『重力の虹』もかなりぶっ飛んだ話で似ているテイストはあるんですが、あれよりは読みやすかった)。
とは言え、プロットの枝葉の方を異様に膨らませるいつもの書き方なので混迷の度はかなり深いんすけどね。
そして特筆すべきは巻末の訳注であります。これがふつーのまともな訳注などではなく、書きたい事書いてる面白~い注なのでおっくうがらずに是非読むべし! 本書にはしおりが二本ついているので、一本は巻末訳注の方に仕込んで、注番号が出る度にちゃんと読むといいよ~。この訳注は単なる注にとどまっておらず、ピンチョンの読み方まで指南してくれるスグレモノであります。もちろん訳自体も素晴らしく、これは名訳じゃないでしょうか?
惜しむらくは、登場人物一覧を是非つけて欲しかったぁ(いや、相当多数のキャラが出て来るので次第に「誰だ、こいつは?」になっちゃうのよ~)。
ということで、ようやく私にもピンチョンが読めた~と感慨にふけった一冊でありました(ようやくピンチョンを読むコツのようなものが分かってきたような気もするのだ)。これに気を良くしてまたピンチョン読むぞ~(プラス、これまでどうにも消化不良のまま終わった作品も再読しなきゃだわ)。
でも、読了後ぐったり疲れた。
読了時間メーター
□□□□ むむっ(数日必要、概ね3~4日位):2023/06/22
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幻想文学、SF、ミステリ、アート系などの怪しいモノ大好きです。ご紹介レビューが基本ですが、私のレビューで読んでみようかなと思って頂けたらうれしいです。世界中にはまだ読んでいない沢山の良い本がある!
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- 出版社:新潮社
- ページ数:645
- ISBN:9784105372019
- 発売日:1998年12月01日
- 価格:3990円
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