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Wings to fly
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「兵とは国の大事なり。」開戦前の熟慮こそが、最も大事なことなのだ。
以前読んだ『戦国大名と読書』に、武家の子弟は『孫子』により戦を学んだと書いてあった。この中国最古の兵書は昔から日本人に大きな影響を及ぼし、今も教養本としてビジネスマンに人気のようだ。戦争のやり方についての書なのになぜだろうと、気になっていたので読んでみた。

まず解説が最初に置かれているから、基礎知識をもって本編に臨める。ちょっと驚いたのは、著者が誰だかはっきりわからないことだ。春秋時代の呉の国の孫武か、戦国時代の斉の国の孫臏か、という研究の話も面白い。どちらにしろ成立は紀元前500から400年あたりということだ。

十三篇で構成されており、まず最初に、戦争を起こす前に考えねばならない事が並べてある。民と君主の信頼関係、戦える季節であるか、戦地の土地の状況、将軍の人材、軍隊編成。その他にもあと七つのことを考えなさいという。そうすれば戦う前に勝敗の行方がわかるというのだ。「兵とは国の大事なり。」国家の存亡がかかるのだから、開戦前の熟慮こそが最も大事なことなのだろう。

続く章には、「戦争はとにかく早く終わらせるように」とか「戦闘なしで敵を屈服させるのが最高」とか書かれていて、国の荒廃を慮っている。その後に続くのが、軍の態勢や行軍の方法、火攻めとかスパイ活用法など実践編である。

一篇を数段落に分け、原文である漢文、その読み下し文、口語訳の順に並んでいる。著者が口語訳解釈の参考にした注釈の中には、魏の武帝(『三国志』の曹操)によるものもある。

「軍争篇」を読んで、武田信玄の旗印「風林火山」は「陰」と「雷」をカットしていると知り、信玄が最も大事にした事柄に思いを馳せる。戦い方は生き様と重なるから、この書物はずっと読まれ続けてきたのかもしれない。

隣国ロシアが戦争を始めて以来、軍備について色々な意見が飛び交う今日この頃であるが、『孫子』はこう語っている。(九変篇より)
戦争の原則としては、敵のやって来ないことを(あてにして)頼りとするのではなく、いつやって来ても良いようなような備えがこちらにあることを頼みとする。また敵の攻撃してこないことを(あてにして)頼りとするのではなく、攻撃できないような態勢がこちらにあることを頼みとするのである。

「故に兵を知るの将は、民の司命、国家安危の主なり。」(作戦篇より)
我々の生死の命運、国の安危を決するにふさわしい人材が、今の日本には見当たらない。これはあまりにも心配な事だわいと思いつつ、本を閉じる。
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Wings to fly
Wings to fly さん本が好き!免許皆伝(書評数:862 件)

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