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Rokoさん
Roko
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黒人だというだけで、どうしてこんなにも差別されるの?
先日読んだ「ぼくの図書館カード」という絵本に感銘を受け、その元となっているこの本を読むことにしました。

20世紀初頭のアメリカでは、黒人であるというだけで、ありとあらゆる場所で差別を受けました。それはもう、想像を絶する状況です。

学校の友人から薦められて新聞配達をして、ちょっとお金を稼げるようになったころ、その新聞をとっている男性から聞かれました。「きみは、この新聞を読んだことがあるのかい?」 いいえと答えると、「この新聞の内容を知らずに配達してるのかい。だったらそれはまずい。この新聞はKKKが出している新聞なんだ。黒人のきみがこれを配達してはいけないと思う。」と言われたのです。リチャードはその時初めてその新聞を読み、この男性が言っている意味がわかり、すぐに新聞配達を辞めました。

リチャードが、ある白人の家で働かせてもらおうとすると、そこの奥さんが「お前は盗みをするのか?」と聞いてきました。彼がクスッと笑ったら怒られました。「だって、盗みをしようとする人が、わたしは盗みをしますなんて、言うわけがないでしょう」と答えたら、「黒人が生意気なことを言うんじゃない!」と声を荒げて怒られたのです。彼は初めて、こういう時には「盗みはしません、奥さま」という答えしか求められていないのだということを知ったのです。


リチャードの周りには訳の分からない人ばかりいて、家族や学校の先生からもわけが分からない圧力を受けます。行儀が悪いといっては叩かれ、生意気なことを言ったといっては蹴られ、黙っていれば反抗的だといって鞭打たれてしまうのです。

たぶんリチャードは子どもの頃から「知りたい」という欲求が強い子だったのでしょう。疑問を持ては「どうしてなの」を聞きたくなります。でも大人たちはちゃんと答えてくれず、怒り、暴力で押さえつけようとするだけでした。

社会も、教会も同じでした。ただ言われたとおりに従えと命令するだけなのです。

リチャードはついに家を出る決心をします。


この物語は約100年前の話ですけど、今でも基本的なところは変わっていないのだろうと思います。そうでなかったら「Black Lives Matter」なんて運動が生まれるわけがないのです。

この本の中には黒人社会のつらさや、あきらめや、神にすがるしかない気持ちや、貧しさゆえの悲しさが満ちています。そこから抜け出そうとするリチャードは、周りから浮いた存在として扱われてしまいます。そこがとてもくやしいのです。もっと違う選択肢があるはずなのに、大人しくそこにいろと強制されてしまう人生なんて嫌だと思い、行動に出たリチャードは、どこへ向かっていくのでしょうか。

白人から黒人へ、大人から子供へ、自尊心を叩き、従順にさせようという魂胆はどちらも同じで、そんな人間の在り方は間違っているということを、彼はこの時点で良くわかっていたのでしょう。

リチャードの未来に幸あれと祈ります。

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Roko
Roko さん本が好き!1級(書評数:2964 件)

好きなジャンルはスポーツ、音楽、美術。
心・脳に関するものも、ついつい読んでしまいます。
小説もいいけどノンフィクションもね!

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この書評へのコメント

  1. noel2024-11-25 15:00

    悔しいですね。

  2. Roko2024-11-25 16:10

    noelさん、すっごく悔しいです。

  3. No Image

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