はるほんさん
レビュアー:
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司馬先生初の挫折本になるかと思ったが。
※書評は1~3巻でまとめてあります
以前から読もうと思っていた司馬先生の全8巻の長編に着手。
図書館予約が上手く操れず、一気に3巻手に入ってしまったのは誤算。
簡単に言えば、日清・日露戦争で列強入りを果たした日本が素材だ。
主人公は俳人の正岡子規、日本騎兵の父と言われる秋山好古、
そして連合艦隊参謀であった弟の秋山真之の3人だ。
まずは日本帝国というものを肯定している訳ではないと前置いて
「夢」に満ちていた時代を紐解きたいと思う。
正直、2巻の中腹までなかなかページが進まなかった。
主人公たちが松山から東京へ出てくるあたりの青春時代は、
3人の話が均等かつ平淡過ぎて、面白味が感じられなかった。
司馬先生初の挫折本になるかと思ったくらい。
が、世界情勢が絡んでくるあたりからぐいぐいページが進んだ。
自分は基本的に歴史の授業が好きだったが、
それでも学校の授業では世界史と日本史は別モノであり、
年表は丸覚え的な感覚で捉えていた。
日本史は世界史と共に動いているという感覚があれば
授業はもっと面白く感じただろうに、と思う。
手元の巻ではまだ勝敗には至っていないが、
日露戦争は「有色人種が初めて白色人種に勝った」歴史の1歩でもあった。
※「勝利」というには微妙な点もあろうが、ここではさて置く
それもちっぽけな島国の日本に、大国ロシアが負けたのだ。
日本の桶狭間や上田の合戦級、いやそれ以上の逆転劇やもしれない。
当時日本は「蛮国」だった。
ちょっと前までみょうちきりんな服と髪型の民族が住む、
東の果ての小さな島でしかなかったのだ。
長い鎖国と封建制度から突然社交界デビューし、
お仕着せの洋服を引きずる日本人たちを、世界は「猿」と呼んだ。
だからこそ「文明国入り」することは、日本の悲願であった。
また20世紀当時は、植民地獲得から産業革命というコースを開いた
イギリスが最先端の文明国でもあった。
善悪の話ではなく、戦争や侵略が当たり前のステップでもあったのだ。
文明国を目指すというコトは、その世界に足を踏み入れることでもある。
日本の第一歩は、日清戦争であった。
「眠れる獅子」と言われた清が実は完全に爆睡していて、
うっかり日本は戦争に勝ってしまうのだ。
そこから清はあれよあれよという間に列強国に食い荒らされ、
その割を食うのが満州・朝鮮半島となる。
ロシアとしては、当然地理的にいただきたい。
が日本としても文明国になるため、そして
ロシアの脅威を大陸で留めるために、その地が欲しい。
しかしロシアは、眠れる獅子どころかでっかい暴れ熊である。
常識的に考えて、そんなモンに勝てるワケがないのである。
このストーリーからして、子規の絡みは微妙である。
事実、3巻冒頭にして逝く。
ま、そんなチョイ役で終わる筈はないだろうと先を期待するとして、
秋山兄弟がメインかというと3~4割というところだ。
とにかく日本軍を語るために、司馬先生は
他国という世界に向けてがんがんページを割いてゆく。
しかしこれが面白い。
3巻では日露開戦、海と陸から遼東半島を攻める日本軍が
慣れぬ対外戦争にアワアワしたり、
ちょっとは立ち向かったりしている段階で終わる。
また2~3巻程まとめ読んでから、次の評をあげたいと思う。
================================================
●興味深く思ったのは、どの国も多かれ少なかれ「井の中の蛙」であることだ。
自国から見た歴史や地形、世界情勢からなかなか抜けきれない。
国内合戦ほどの経験値しかない日本は、戦術経験値の土台が弱い。
奇襲で勝った武将が「名武将」とされるのもその為という指摘は面白い。
しかしだからこそ、日本は貪るように他国の真似をする。
「蛙」でなく「猿」であったことを、司馬先生は描いたのだろう。
●秋山好古は「進撃の巨人」のピクシス指令のモデルと言われる。
写真探してみたら、成程似てるわ。
●ピョートル大帝(ロシア最初の皇帝)の話が少し出てくるのだが
お忍びで船大工になったり、ヒゲを禁止して課税したりして
かなり面白い御仁。別に読みたい。
●日露戦争当時の皇帝はニコライ2世。
来日した際に滋賀県で暴徒に襲われ、ケガをしたそうな。
以来日本への心証が悪くなったとか。ごめん。
●図書館で読むのに間が空くため、メモ書き評失礼します
以前から読もうと思っていた司馬先生の全8巻の長編に着手。
図書館予約が上手く操れず、一気に3巻手に入ってしまったのは誤算。
簡単に言えば、日清・日露戦争で列強入りを果たした日本が素材だ。
主人公は俳人の正岡子規、日本騎兵の父と言われる秋山好古、
そして連合艦隊参謀であった弟の秋山真之の3人だ。
まずは日本帝国というものを肯定している訳ではないと前置いて
「夢」に満ちていた時代を紐解きたいと思う。
正直、2巻の中腹までなかなかページが進まなかった。
主人公たちが松山から東京へ出てくるあたりの青春時代は、
3人の話が均等かつ平淡過ぎて、面白味が感じられなかった。
司馬先生初の挫折本になるかと思ったくらい。
が、世界情勢が絡んでくるあたりからぐいぐいページが進んだ。
自分は基本的に歴史の授業が好きだったが、
それでも学校の授業では世界史と日本史は別モノであり、
年表は丸覚え的な感覚で捉えていた。
日本史は世界史と共に動いているという感覚があれば
授業はもっと面白く感じただろうに、と思う。
手元の巻ではまだ勝敗には至っていないが、
日露戦争は「有色人種が初めて白色人種に勝った」歴史の1歩でもあった。
※「勝利」というには微妙な点もあろうが、ここではさて置く
それもちっぽけな島国の日本に、大国ロシアが負けたのだ。
日本の桶狭間や上田の合戦級、いやそれ以上の逆転劇やもしれない。
当時日本は「蛮国」だった。
ちょっと前までみょうちきりんな服と髪型の民族が住む、
東の果ての小さな島でしかなかったのだ。
長い鎖国と封建制度から突然社交界デビューし、
お仕着せの洋服を引きずる日本人たちを、世界は「猿」と呼んだ。
だからこそ「文明国入り」することは、日本の悲願であった。
また20世紀当時は、植民地獲得から産業革命というコースを開いた
イギリスが最先端の文明国でもあった。
善悪の話ではなく、戦争や侵略が当たり前のステップでもあったのだ。
文明国を目指すというコトは、その世界に足を踏み入れることでもある。
日本の第一歩は、日清戦争であった。
「眠れる獅子」と言われた清が実は完全に爆睡していて、
うっかり日本は戦争に勝ってしまうのだ。
そこから清はあれよあれよという間に列強国に食い荒らされ、
その割を食うのが満州・朝鮮半島となる。
ロシアとしては、当然地理的にいただきたい。
が日本としても文明国になるため、そして
ロシアの脅威を大陸で留めるために、その地が欲しい。
しかしロシアは、眠れる獅子どころかでっかい暴れ熊である。
常識的に考えて、そんなモンに勝てるワケがないのである。
このストーリーからして、子規の絡みは微妙である。
事実、3巻冒頭にして逝く。
ま、そんなチョイ役で終わる筈はないだろうと先を期待するとして、
秋山兄弟がメインかというと3~4割というところだ。
とにかく日本軍を語るために、司馬先生は
他国という世界に向けてがんがんページを割いてゆく。
しかしこれが面白い。
3巻では日露開戦、海と陸から遼東半島を攻める日本軍が
慣れぬ対外戦争にアワアワしたり、
ちょっとは立ち向かったりしている段階で終わる。
また2~3巻程まとめ読んでから、次の評をあげたいと思う。
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●興味深く思ったのは、どの国も多かれ少なかれ「井の中の蛙」であることだ。
自国から見た歴史や地形、世界情勢からなかなか抜けきれない。
国内合戦ほどの経験値しかない日本は、戦術経験値の土台が弱い。
奇襲で勝った武将が「名武将」とされるのもその為という指摘は面白い。
しかしだからこそ、日本は貪るように他国の真似をする。
「蛙」でなく「猿」であったことを、司馬先生は描いたのだろう。
●秋山好古は「進撃の巨人」のピクシス指令のモデルと言われる。
写真探してみたら、成程似てるわ。
●ピョートル大帝(ロシア最初の皇帝)の話が少し出てくるのだが
お忍びで船大工になったり、ヒゲを禁止して課税したりして
かなり面白い御仁。別に読みたい。
●日露戦争当時の皇帝はニコライ2世。
来日した際に滋賀県で暴徒に襲われ、ケガをしたそうな。
以来日本への心証が悪くなったとか。ごめん。
●図書館で読むのに間が空くため、メモ書き評失礼します
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歴史・時代物・文学に傾きがちな読書層。
読んだ本を掘り下げている内に妙な場所に着地する評が多いですが
おおむね本人は真面目に書いてマス。
年中歴史・文豪・宗教ブーム。滋賀偏愛。
現在クマー、谷崎、怨霊、老人もブーム中
徳川家茂・平安時代・暗号・辞書編纂物語・電車旅行記等の本も探し中。
秋口に無職になる予定で、就活中。
なかなかこちらに来る時間が取れないっす…。
2018.8.21
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