はるほんさん
レビュアー:
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司馬史観とは、美味い酒を出すのにオヤジがうるさい店みたいなモンである。
※6~8巻の評をまとめています(最終便)。
前回書いた「日露戦争の流れ」を抜粋。
①旅順港を包囲する日本海軍vsロシア艦隊 →坂の上の雲1~3巻
②旅順要塞を落とすため、日本陸軍が内陸側から援護攻撃 →坂の上の雲4・5巻
③内陸にて、増軍されたロシア軍vs陸軍 →7巻
④遠征してきたロシアバルチック艦隊vs海軍 →8巻
6巻が無いのは、日露戦争の「裏の戦い」を書いているからだ。
元よりロシアに勝てる筈がないと思っていた日本は
スパイを派遣し、ロシアに生まれた革命の兆しを積極的に後押しさせる。
国内情勢が悪くなれば当然、戦争にかかずらっていられなくなるからだ。
とにかく政府は、負ける前に講和に持って行きたかった。
既に戦争をする金も無く、前線では砲弾すら不足していたのだから。
国力や兵力では相手にもならない日本だったが、
砲弾においてロシアに勝っている点があった。
照準精度と、強い爆薬を開発したことだ。
多分ゲームで言うと、戦闘レベルは低いが
スキルを1点だけ突出させたキャラみたいなモン。
この僅かな利を生かし、日本は奇跡的に勝利する。
まさに桶狭間の合戦のごとく日本人好みのシチュであり
東郷らこの時代の軍人が神格化されるのは恐らく、このためであろう。
乃木をあれだけ叩いていた作者も、海戦においては
活動写真のように生き生きと物語に筆を振るう。
個人的に、「司馬史観」というクセのある味は嫌いではない。
が、今回はそれが初めて鼻についた。
作者は戦争の善悪を描いたのではない。
恐らく日本を含む「戦争の民族性」がテーマだと考える。
少なくとも自分はそれを面白く読んだ。
その所為か、作者の過剰な乃木批判と東郷崇拝を邪魔に感じた。
なんというか、折角いい酒を出してる店なのに
ツマミはこれでなくちゃいかんとかこうやって呑めとか
店のオヤジが少々ウザい。
まあコレで「この店には二度と来ねぇ!」と思ったり、
「いやもう大将の仰る通りで」と勧められるままに呑んでしまうのが
司馬史観というものなのだが。
ま、自分もメニューとしては★4つだと思うので
また呑みにいっちまうんだけどねー。
=====================================
●戦争の資金繰りに困った日本は、外債を発行する。
が、ロシア有利に映っていた当時は買い手がなかった。
それを買ったのがユダヤ人の銀行家。
●国を奪われ、打倒ロシアを日本に願う外国人は結構いたらしい。
ロシアの反ユダヤ主義の報復として、
ユダヤ人銀行家は日本の国債の半分を買い上げた。
●が、当然慈善事業ではないので、これは日本の借金となる。
調べてみたらコレを完済したのが1986年と聞いてオドロキ。
なんぼ無茶な戦争したんや…。
●日本が送り出したスパイ・明石元二郎。
ロシア国内の革命活動に手を貸し、誘発したとされる。
1巻も割くあたり、作者のお気に入りとみた
●元二郎は第一次ロシア革命期に暗躍しており、
ロシア崩壊の立役者になったワケではない。
せいぜいちょっと名前のある配役、くらいであろう。
●陸軍会戦においては、ロシア将軍がものすごい心配性で
あれよあれよと好機を逸したことが、日本に勝機をもたらす。ワロタ。
●海戦においては、やはり最新式の旅順艦隊を落としていたことが大きい。
バルチック艦隊は残った艦から、何とか選りすぐられた。
しかし日本と同盟中の英国商船をうっかり攻撃してしまい、
渡航先の港を閉鎖され、ふんだりけったりのアフリカ周り航路で疲弊。ワロタ。
●その上ロシアは増軍と称して、旧艦ばかりの援軍を送りだす。
バルチック艦隊はこれを待たなければならない上、足手まといなのでいらない。
この増軍は「浮かぶアイロン」と呼ばれたとか。ワロタ。
●職業として兵をしているロシアは、危うくなれば逃げるか投降する。
死を覚悟して特攻してくる日本は、さぞ理解不能で恐ろしかったろう。
この辺も勝負の明暗を分けたのかもしれない。
が、戦死を賞賛した時代がやるせない。
船員の為にあっさり投降したアイロン艦船長は、デキる男だと思う。
●鵜呑みにさえしなければ、司馬作品は素晴らしい歴史小説であると太鼓判。
前回書いた「日露戦争の流れ」を抜粋。
①旅順港を包囲する日本海軍vsロシア艦隊 →坂の上の雲1~3巻
②旅順要塞を落とすため、日本陸軍が内陸側から援護攻撃 →坂の上の雲4・5巻
③内陸にて、増軍されたロシア軍vs陸軍 →7巻
④遠征してきたロシアバルチック艦隊vs海軍 →8巻
6巻が無いのは、日露戦争の「裏の戦い」を書いているからだ。
元よりロシアに勝てる筈がないと思っていた日本は
スパイを派遣し、ロシアに生まれた革命の兆しを積極的に後押しさせる。
国内情勢が悪くなれば当然、戦争にかかずらっていられなくなるからだ。
とにかく政府は、負ける前に講和に持って行きたかった。
既に戦争をする金も無く、前線では砲弾すら不足していたのだから。
国力や兵力では相手にもならない日本だったが、
砲弾においてロシアに勝っている点があった。
照準精度と、強い爆薬を開発したことだ。
多分ゲームで言うと、戦闘レベルは低いが
スキルを1点だけ突出させたキャラみたいなモン。
この僅かな利を生かし、日本は奇跡的に勝利する。
まさに桶狭間の合戦のごとく日本人好みのシチュであり
東郷らこの時代の軍人が神格化されるのは恐らく、このためであろう。
乃木をあれだけ叩いていた作者も、海戦においては
活動写真のように生き生きと物語に筆を振るう。
個人的に、「司馬史観」というクセのある味は嫌いではない。
が、今回はそれが初めて鼻についた。
作者は戦争の善悪を描いたのではない。
恐らく日本を含む「戦争の民族性」がテーマだと考える。
少なくとも自分はそれを面白く読んだ。
その所為か、作者の過剰な乃木批判と東郷崇拝を邪魔に感じた。
なんというか、折角いい酒を出してる店なのに
ツマミはこれでなくちゃいかんとかこうやって呑めとか
店のオヤジが少々ウザい。
まあコレで「この店には二度と来ねぇ!」と思ったり、
「いやもう大将の仰る通りで」と勧められるままに呑んでしまうのが
司馬史観というものなのだが。
ま、自分もメニューとしては★4つだと思うので
また呑みにいっちまうんだけどねー。
=====================================
●戦争の資金繰りに困った日本は、外債を発行する。
が、ロシア有利に映っていた当時は買い手がなかった。
それを買ったのがユダヤ人の銀行家。
●国を奪われ、打倒ロシアを日本に願う外国人は結構いたらしい。
ロシアの反ユダヤ主義の報復として、
ユダヤ人銀行家は日本の国債の半分を買い上げた。
●が、当然慈善事業ではないので、これは日本の借金となる。
調べてみたらコレを完済したのが1986年と聞いてオドロキ。
なんぼ無茶な戦争したんや…。
●日本が送り出したスパイ・明石元二郎。
ロシア国内の革命活動に手を貸し、誘発したとされる。
1巻も割くあたり、作者のお気に入りとみた
●元二郎は第一次ロシア革命期に暗躍しており、
ロシア崩壊の立役者になったワケではない。
せいぜいちょっと名前のある配役、くらいであろう。
●陸軍会戦においては、ロシア将軍がものすごい心配性で
あれよあれよと好機を逸したことが、日本に勝機をもたらす。ワロタ。
●海戦においては、やはり最新式の旅順艦隊を落としていたことが大きい。
バルチック艦隊は残った艦から、何とか選りすぐられた。
しかし日本と同盟中の英国商船をうっかり攻撃してしまい、
渡航先の港を閉鎖され、ふんだりけったりのアフリカ周り航路で疲弊。ワロタ。
●その上ロシアは増軍と称して、旧艦ばかりの援軍を送りだす。
バルチック艦隊はこれを待たなければならない上、足手まといなのでいらない。
この増軍は「浮かぶアイロン」と呼ばれたとか。ワロタ。
●職業として兵をしているロシアは、危うくなれば逃げるか投降する。
死を覚悟して特攻してくる日本は、さぞ理解不能で恐ろしかったろう。
この辺も勝負の明暗を分けたのかもしれない。
が、戦死を賞賛した時代がやるせない。
船員の為にあっさり投降したアイロン艦船長は、デキる男だと思う。
●鵜呑みにさえしなければ、司馬作品は素晴らしい歴史小説であると太鼓判。
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歴史・時代物・文学に傾きがちな読書層。
読んだ本を掘り下げている内に妙な場所に着地する評が多いですが
おおむね本人は真面目に書いてマス。
年中歴史・文豪・宗教ブーム。滋賀偏愛。
現在クマー、谷崎、怨霊、老人もブーム中
徳川家茂・平安時代・暗号・辞書編纂物語・電車旅行記等の本も探し中。
秋口に無職になる予定で、就活中。
なかなかこちらに来る時間が取れないっす…。
2018.8.21
この書評へのコメント
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- 出版社:文藝春秋
- ページ数:397
- ISBN:9784167105839
- 発売日:1999年02月01日
- 価格:670円
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