Yasuhiroさん
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酒見流講談三国志の始まり始まり~、マーベラス・クレバー・ワン、スリーピング・ドラゴン、ミステリアス・サノバビッチ、グレート・ファッキン・ボーイ、後のスペル・マエストロ・コン・ミンの登場だぜい!
私にとって酒見賢一と言えば中国史、そして代表長編と言えば「陋巷に在り」だったのですが、この「泣き虫弱虫諸葛孔明」は作者のイメージを一変させた新たな長編で、この6月に完結しました。実は途中で放ってあったので今回読み返すことにしました。
三國志、三国志演義、いずれも中国史屈指の超有名な史書・物語であり、日本では吉川英治の小説、横山光輝の漫画で人口に膾炙し、そして現在では歴史RPGゲームの王道です。ついでに言うと、今や腐女子の格好のターゲットになっています。
その一番人気はやはり、魏呉蜀のうちの、劉備玄徳、諸葛亮孔明、関羽、張飛、趙雲の蜀組。
「自分は三国志をよく知らない」と嘯きながら実は通暁しているに違いない酒見賢一は、司馬遼太郎の手法に似た自らの解釈を自由自在に語りつくすという形式で、「陋巷に在り」の作者と思えないほどのはっちゃけぶりを見せ、漫談かと思うほどツッコミを入れまくり、三国志で知られた面々を茶化し尽くし、主人公の諸葛亮孔明を奇人変人に仕立て上げています。なんせ「史実四割、嘘誇張六割」と呼ばれる奇書、ツッコミどころは満載、それも酒見だけに妙に説得力がある(笑。
とは言うものの昔読んだときは「陋巷に在り」とのあまりの語り口の違いに戸惑いましたが、今回「童貞」「語り手の事情」「ピュタゴラスの旅」を読み(ついでにそのあとがきも読み)、酒見自身が結構な奇人変人であることを十分認識できましたので、もう迷うことなく酒見流三国志ワールドへ入り込むことができました。
第一巻の白眉は後半のほとんどを占める所謂「三顧の礼」。あれは忠実に三国志を読み込めば、巷間伝えられるような劉備玄徳が礼を尽くし、孔明がようやく重い腰を上げる、というようなきれいごとでは全くない!というのが酒見流解釈。
この時点ではいくら漢の末裔と自称しようが、劉備玄徳はチンパンジーの如き様相の
ということになります。実は二回の不在は何かと孔明の世話を焼く、孔明の姉の嫁ぎ先の不良老害偏屈隠遁老人の策略だったのですが、もちろん孔明はお見通し、で、書き置きを読んだ感想は
というのですからやはりお互いいい勝負、平たく言えばどっちもどっち。で三回目にやっと在宅した時も立ち尽くす劉備の前で3時間も寝たまま。で、やっと会談に入ると人払いをします。その一時間で事は決まるわけですが、人払いしていて二人とも終了後何も語らないわけですから、その内容は知りようがないはず。
それを「三國志」の陳寿も「三國志演義」の羅漢中も事細かく書いています。
となるわけです。二匹のシュレディンガーの猫以外の当事者は誰も知らないが、読者はみんな知っているという
まあそれはともかく第一巻で一際異彩を放っているのは二人の女性。
一人は孔明の妻となる黄氏。名門の子女でありながら嫁の貰い手がなく行き遅れて父を悩ませています。その理由は
陳寿は遠慮して「黄頭黒色」としか記していませんが、実際相当の醜女だったらしい。しかし、中身は凄い。一切そういう噂を気にせず、天文地理兵法機械技術に精通しており、相思相愛となった孔明に嫁ぎ、臥竜岡の居宅に自動製麺機をはじめとするオートマシーンを組み立て孔明を感心させます。後の孔明の策略に用いられる様々なロボット兵器は黄氏から学んだものと思われます。ちなみに後日劉備軍団でも飛びぬけた好男子が秘かに思いを寄せることになろうとは、この段階で誰も予想しなかったでしょう。どうする腐女子!?(^^;)
もう一人は、孔明の前に劉備軍の参謀となり功績をあげた徐庶の猛老母。魏軍の策略で誘拐され、スパークする戦さバカ、戦争ジャンキーの曹操孟徳の前に引き出されて甘言を弄された際
と吐き捨て、三国志一番の大物を辟易させる。
そして策略と分かっていながらやってきた息子徐庶を見て烈火のごとく怒り、家の外で顔面蹴り上げ、ストンピング、馬乗りでパウンド、鉄拳の雨嵐。そして家の中に入り。。。無惨なる哉、徐庶元直!
三顧の礼まででこれだけ面白いのですから、ここから盛り上がらないわけがない!と言うわけでこの新釈Romance of the Three Kingdoms、スリーピング・ドラゴン・コン・ミンが加わったリュー・ベイ・ブラザーズはファッキン・ウォー・ジャンキー・ツァオ・ツァオにどう立ち向かっていくのでしょうか!?
ふ~、さすが三国志、600P以上ある第一巻一冊レビューするだけでこのしんどさ、この調子であと四つもレビューできるのか!?今年中に終わればいいくらいの感じでやっていきますので、よろしければ気長にお付き合いのほどお願いします。
三國志、三国志演義、いずれも中国史屈指の超有名な史書・物語であり、日本では吉川英治の小説、横山光輝の漫画で人口に膾炙し、そして現在では歴史RPGゲームの王道です。ついでに言うと、今や腐女子の格好のターゲットになっています。
その一番人気はやはり、魏呉蜀のうちの、劉備玄徳、諸葛亮孔明、関羽、張飛、趙雲の蜀組。
「自分は三国志をよく知らない」と嘯きながら実は通暁しているに違いない酒見賢一は、司馬遼太郎の手法に似た自らの解釈を自由自在に語りつくすという形式で、「陋巷に在り」の作者と思えないほどのはっちゃけぶりを見せ、漫談かと思うほどツッコミを入れまくり、三国志で知られた面々を茶化し尽くし、主人公の諸葛亮孔明を奇人変人に仕立て上げています。なんせ「史実四割、嘘誇張六割」と呼ばれる奇書、ツッコミどころは満載、それも酒見だけに妙に説得力がある(笑。
とは言うものの昔読んだときは「陋巷に在り」とのあまりの語り口の違いに戸惑いましたが、今回「童貞」「語り手の事情」「ピュタゴラスの旅」を読み(ついでにそのあとがきも読み)、酒見自身が結構な奇人変人であることを十分認識できましたので、もう迷うことなく酒見流三国志ワールドへ入り込むことができました。
第一巻の白眉は後半のほとんどを占める所謂「三顧の礼」。あれは忠実に三国志を読み込めば、巷間伝えられるような劉備玄徳が礼を尽くし、孔明がようやく重い腰を上げる、というようなきれいごとでは全くない!というのが酒見流解釈。
この時点ではいくら漢の末裔と自称しようが、劉備玄徳はチンパンジーの如き様相の
先のビジョンのまったくない行き当たりばったりの男、関羽、張飛という凶暴極まりない大政・小政を引き連れた任侠集団の親分に過ぎず、孔明が二回も訪問時不在であったことに怒り心頭。二回目に書き残した劉備の慇懃な書き置きも酒見流に翻訳すれば
「このわしが訪ねてきたのに、どうも何か企みやがって、二回も無駄骨を折らせるとは不届き千万、貴様のツラに鉄拳をお見舞いできなかったのは残念でならぬ。」
「お前、太公望と張良を束にしたような凄い天才らしいという、もっぱらの評判じゃないか、出来るようならやって見せろよ、嘘だったらただで済むと思うなよ、どうなるか分かっているだろうな・・・・・」
ということになります。実は二回の不在は何かと孔明の世話を焼く、孔明の姉の嫁ぎ先の不良老害偏屈隠遁老人の策略だったのですが、もちろん孔明はお見通し、で、書き置きを読んだ感想は
タテマエだけのつまらない文章、もっとハダカの気持ちを書いてくれなきゃダメ
というのですからやはりお互いいい勝負、平たく言えばどっちもどっち。で三回目にやっと在宅した時も立ち尽くす劉備の前で3時間も寝たまま。で、やっと会談に入ると人払いをします。その一時間で事は決まるわけですが、人払いしていて二人とも終了後何も語らないわけですから、その内容は知りようがないはず。
それを「三國志」の陳寿も「三國志演義」の羅漢中も事細かく書いています。
何故あんたがそこまで詳しく知っているんだ?
となるわけです。二匹のシュレディンガーの猫以外の当事者は誰も知らないが、読者はみんな知っているという
量子論的ブレの物語!
まあそれはともかく第一巻で一際異彩を放っているのは二人の女性。
一人は孔明の妻となる黄氏。名門の子女でありながら嫁の貰い手がなく行き遅れて父を悩ませています。その理由は
『三国志』中でもモストなドブスとされているその底知れない醜さ
陳寿は遠慮して「黄頭黒色」としか記していませんが、実際相当の醜女だったらしい。しかし、中身は凄い。一切そういう噂を気にせず、天文地理兵法機械技術に精通しており、相思相愛となった孔明に嫁ぎ、臥竜岡の居宅に自動製麺機をはじめとするオートマシーンを組み立て孔明を感心させます。後の孔明の策略に用いられる様々なロボット兵器は黄氏から学んだものと思われます。ちなみに後日劉備軍団でも飛びぬけた好男子が秘かに思いを寄せることになろうとは、この段階で誰も予想しなかったでしょう。どうする腐女子!?(^^;)
もう一人は、孔明の前に劉備軍の参謀となり功績をあげた徐庶の猛老母。魏軍の策略で誘拐され、スパークする戦さバカ、戦争ジャンキーの曹操孟徳の前に引き出されて甘言を弄された際
かかかか、よくもいうわ、おのれこそちんぽ切られた腐れ者のせがれのせがれであろうが
と吐き捨て、三国志一番の大物を辟易させる。
そして策略と分かっていながらやってきた息子徐庶を見て烈火のごとく怒り、家の外で顔面蹴り上げ、ストンピング、馬乗りでパウンド、鉄拳の雨嵐。そして家の中に入り。。。無惨なる哉、徐庶元直!
三顧の礼まででこれだけ面白いのですから、ここから盛り上がらないわけがない!と言うわけでこの新釈Romance of the Three Kingdoms、スリーピング・ドラゴン・コン・ミンが加わったリュー・ベイ・ブラザーズはファッキン・ウォー・ジャンキー・ツァオ・ツァオにどう立ち向かっていくのでしょうか!?
ふ~、さすが三国志、600P以上ある第一巻一冊レビューするだけでこのしんどさ、この調子であと四つもレビューできるのか!?今年中に終わればいいくらいの感じでやっていきますので、よろしければ気長にお付き合いのほどお願いします。
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馬鹿馬鹿しくなったので退会しました。2021/10/8
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- 出版社:文藝春秋
- ページ数:646
- ISBN:9784167773083
- 発売日:2009年10月09日
- 価格:980円
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