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DBさん
DB
レビュアー:
孤独の中で存在を問う話
ニューヨーク三部作のひとつである本書では、ブルックリン橋の近くにあるアパートが舞台となっています。
主人公のブルーは探偵で、師匠であるブラウン氏が引退してようやく独り立ちしたところ。
そこへホワイトと名乗る男が、ブラックという名の男を見張るようにと依頼してきた。
明らかに変装している風体のホワイト氏だが、何を探ってほしいというわけではなくただブラックの行動を監視して報告してほしいという。

ホワイトがブラックを見張りたい理由がわからないままに監視を始めたブルーだが、ブラックはというと毎日デスクで書き物をするばかり。
時折出かけても食料品や日用品を買いに行くか、散歩をするくらいで人との交流はなかった。
唯一の例外がブルックリン橋を越えてマンハッタンの中央部まで足を延ばし、レストランで女性と昼食を共にした日だった。
だがキスと笑顔で始まったランチは途中から涙に変わり、別々のタクシーに乗って走り去っていく。

別れの場面だろうが、ブルーの方でもこの仕事が始まる前に付き合っていた「未来のミセス・ブルー」とは疎遠になっている。
なにせたった一人で監視をし続けるのだ。
いくら監視対象が自宅で物を書くか本を読むかというだけの人間だとしても、自由になる時間などまったくない。
それが何日も、何週間も、そして何カ月にもわたって続いていく。
固定電話しかない時代だけに「未来のミセス・ブルー」からしてみれば、彼氏は秘密の仕事でしばらく会えないという言葉を最後に失踪してしまったようなものだった。
できることといえば片目で窓の向こうのブラックを見つつ、想像を巡らせるだけだった。
子供の頃に殉職した警官の父親、師匠であるブラウン氏と一緒に仕事をしていた時に出合った男のこと、新聞に載っていたひとつの事件を追い続けている検死官の話などがブルーの頭を巡っていく。

世間と隔絶しているかのようなブラック、そして同じくらい孤独な生活を強いられているブルー。
浮浪者に変装してブラックと会話をしたのをきっかけに、ブルーは監視することから一歩踏みこんでブラックとかかわっていくようになる。
そしてホワイトの正体を探ろうと動き始める。
「幽霊たち」というタイトルの意味は後半になってブルーとブラックの会話に出てきますが、ニューヨークの街に相応しい。
この二人の結末がどうなるのか、最後まで緊張感が漂う話だった。
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DB
DB さん本が好き!1級(書評数:2026 件)

好きなジャンルは歴史、幻想、SF、科学です。あまり読まないのは恋愛物と流行り物。興味がないのはハウツー本と経済書。読んだ本を自分の好みというフィルターにかけて紹介していきますので、どうぞよろしくお願いします。

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