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かもめ通信
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本が好き!がなかったら、 #棚マル フェアがなかったら、きっと手にすることがなかったであろうノンフィクション。この1冊でいったい何度、泣いたか!というほど泣かされたけれど、これは確かに読んで良かった!
小学生の頃、父に教えて貰って姉と遊んでいたから
将棋の駒にどんな種類のものがあって
「飛車」や「角」はどう動かせるかというぐらいのことは
なんとなく知っている。

けれども将棋界のこととなるとちんぷんかんぷんで
「米長」「中原」「谷川」「羽生」の名前ぐらいは知っているが
顔と名前が一致するのは「羽生善治」さんぐらいで、
ましてや「奨励会」の存在やプロ棋士になるにはどうしたらいいのかなど
考えたこともなく全く知らなかった。

この物語はこの秋(2016年)に松山ケンイチ主演で実写映画化される
ノンフィクションだというのだが、
恥ずかしながら松山ケンイチさんすら名前と顔が一致しなかった。

そんな私がなぜこの本を手にしたのかというと
他ならぬ“本が好き!#棚マルフェア”のせいだ。

といっても正直にいうと、
念願叶って訪れたフェア会場で
最初からこの本を買おう!と思っていたわけではない。
お目当てのあの本、この本が品切れで
それならば読んでみようかな……と軽い気持ちで
(実のところ積む気満々で)購入した本だった。

ところが積読棚に収納する前にちょっとだけ…と
めくったページで捕まってしまった。

難病に冒された少年が文字通り命を削りながらも努力を重ね
やがて将棋界の最高峰への階段を駆け上がるが、
あともう少しというところで、道半ばにして亡くなってしまう……
そうきけば、本人の苦労はもちろん
献身的に尽くす家族や周囲の「美談」も欠かせないと思うのだが
私がこの本に惹かれたのは
冒頭から語られる家族の“負い目”故だった。

わずか5歳でネフローゼという難病の腎疾患に冒された少年に
父も母も年端もいかない兄さえも
この子の病気は自分のせいだと思い詰める。
もちろん可愛い子どものためだ
不憫な気持ちもあるだろう
それでなくてもあれこれ尽くした違いないが
病気の子どもを抱える複雑な親の心情が
丁寧に描かれている様子をみて
この本には単なる美談や英雄譚ではないものがあるに違いないと思ったのだ。

生前の村山聖さんと親密な交流があったという著者が
描いた“怪童”像は、決してきれい事だけではない
(だいたい滅多に歯も磨かない、お風呂にもはいらないというのだから
綺麗どころの話ではない!!)にもかかわらず
おそらくこの本を読んだ者誰もが彼を愛さずにはいられず、
彼の死を惜しまずにはいられないことだろう。
それだけではない。
彼を愛した人々、とりわけ
夜中に合い鍵を使ってがさごそとやってくる弟子の頭を洗ってやり、
道端で会えば連れに紹介し、
「ほらぽっぺたをさわって貰え!」などと言う
惜しみないどころではない多くの愛情を注ぎ続けた師匠に対し
「彼を想ってくれてありがとう」と
感謝の念さえ起こさせるなんとも熱い本だった。

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かもめ通信
かもめ通信 さん本が好き!免許皆伝(書評数:2229 件)

本も食べ物も後味の悪くないものが好きです。気に入ると何度でも同じ本を読みますが、読まず嫌いも多いかも。2020.10.1からサイト献本書評以外は原則★なし(超絶お気に入り本のみ5つ★を表示)で投稿しています。

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この書評へのコメント

  1. 読書猫2016-10-26 07:12

    昨日のNHKの番組クローズアップ現代で村山聖さんを特集していました。もし彼が生きていたら今の将棋界はどうなっていただろう?最近の将棋界はITカンニンング等ダークな話題ばかりですから、彼が生きていたらこの現状をどう感じていたかと思うと・・・。プロの方、プロを目指す方に知ってほしいし感じて欲しいですね。

  2. かもめ通信2016-10-26 07:21

    まもなく映画も封切られるということで、この本、本当にタイムリーなんでしょうね。
    私はそういうことに本当にうといので、NHKの番組のことも全く知らずにいました…(汗)。

    けれども確かに~今だからこそ、村山さんの姿勢から、学べることは多いかもしれませんね。

  3. かもめ通信2016-10-26 07:32

    帯などでみかけると、泣ける本というのは宣伝文句としてはどうよ~と、いつも思いはするのだけど、レビューには使ってしまいがち……。

  4. タカラ~ム2016-10-26 09:09

    この本を読んで思うのは、村山聖という若者の太く短い人生もさることながら、彼を見守り、支え、ぶつかっていく師匠や友人、ライバルたちの存在の大きさですね。

    特に、師匠である森七段の弟子に対するぶつかり方と支え方。師匠と弟子という関係ではなく、同じ棋士としての同士のような、あるいは兄弟や親子のような関係が胸に迫るものがあります。

    大崎善生さんの将棋を題材にした本に「将棋の子」があります。そちらもオススメですよ。

  5. かもめ通信2016-10-26 09:12

    そうそう!師匠の森さん!!いいですよねえ~
    無知な私は思わずググって,ご尊顔を拝してしまいましたよww

  6. しげもり2016-10-26 09:27

    不謹慎とは思うのですが、品切れに感謝せずにはいられない・・・www
    手に取ってくださってほんとにほんとにありがとうございます!!
    読んでいただけて嬉しいです・・・推薦させてもらってよかった・・・☆
    ちなみに私も師匠の森さんをググりましたwww
    そしたら森さんの撮った写真があって、村山さんの写真もたくさん見れました。

  7. タカラ~ム2016-10-26 10:37

    森さん、いい感じの面立ちですよねww

  8. はにぃ2016-10-26 23:09

    私も大崎で購入しました!
    なるべく早く読みます!

  9. かもめ通信2016-10-27 05:45

    おっ!はにぃさんも買われたんですね!
    これはレビューが楽しみ♪

  10. しげもり2016-10-27 08:34

    うぉぉ~!!はにぃさんもご購入下さった!のですかー!!!
    嬉しすぎます!一人でも多くの方に読んで頂きたかったので感涙です!
    ありがとうございます!!レビュー、とても楽しみにしております♪
    すべてはかもめ通信さんの書評のおかげです~☆(感涙)ありがとうございます!

  11. かもめ通信2016-10-27 08:45

    いやいや,しげもりさん!
    はにぃさんが購入されたのは私と同じ日だと思うので
    購入の決め手があるとしたら,しげもりさんのPOPじゃない?
    その辺のところはきっとはにぃさんのレビューで明かされるでしょうw
    (と無責任に丸投げww)

  12. しげもり2016-10-27 09:09

    な、なんと!!そしたら、POPよりもきっと村山聖さんの力に違いない☆
    ああ…あの感動の人生を手にとってもらえて本当によかった・・・(感涙)
    棚マルフェアに大感謝です~。

  13. No Image

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