文庫に先駆けて1997年に発売されています。
現在でもそうですが、プラモデルメーカーの殆どは静岡県に集中しています。
プラスチックは戦後日本に大量に入ってきましたが、元々は1907年にアメリカのベークランド博士が発明した、ホルムアルデヒドをベースにした合成樹脂です。
それまでの有機天然素材で出来たプラスチックから大きく進歩し、完全な合成樹脂となった。
此処に書かれて居るように、プラモデル以前の模型は桧や朴などの木材を使用したもので、凄く大雑把なものでした。
実際僕が小学生だった頃にも、プラモデルに対して端材から削り出して、スケールモデルを作る方が結構居られ、実際その貴重な模型を一つ頂いた記憶もある。
その頃は、自ら図面を元にして木を削り作りあげるソリッドモデラーは、神のごとき存在であり、プラモデルは所詮子どものおもちゃでした。
タミヤの前身田宮商事も戦後木製模型の仕事を手掛けるようになる。
しかし、アメリカから入ってきたプラモデルの精密さに度肝をぬかれ、
業界は木製モデルからプラモデルへと転向していく。
当時軍艦が主流だった田宮は得意の戦艦大和(本書では武蔵となっているが、その後の検証で大和だったことが判明した……といっても同型艦なのでどっちでも良いような気もするが、其処に拘るのがオタクなのだww)だったが、ライバルのニチモが同じ大和を70%近く安く先行発売した為に、金型などの費用で大赤字に陥り、また木製模型屋へと戻ってしまったのだ。
プラモ部門はベビーレーサーというアメリカの玩具のコピー生産で辛うじて食いつないだのだ。
しかし田宮は戦車に目をつけ、しかも箱絵を小松崎茂に書いて貰うという起死回生の一発で逆転に成功する。
この頃のモーターライズされた戦車には、結構お世話になっている。
それにしても著者は今のオタクの元祖の様な人物だ。
小学生の頃のF4Uコルセア目撃の話も笑えるが、兎に角懲り始めるときりがない。
金型というプラモの命ともいえる部分を自社で作れるようにしたり、スロットレーサーにショックアブソーバーを付けたりときりがない。
アメリカにアバディーンという戦車の博物館が有れば、行って写真を撮りまくり、
イギリスにボービントンという戦車の博物館が有れば、駆けつけて戦車の下に潜り、
ソ連の戦車の情報を求めてソ連大使館に押し掛けそして断られ、更に警備の警官に怪しまれ、
イスラエルまで出掛けてT34を実測し……
いや、本当に此処まで凝らなくたってと思うほど徹底的だ。
その拘りこそが、世界のタミヤを作り上げたのだが、端からみるとコメディーともいえるエピソードが並ぶ。
著者自身も書いているが、ポルシェ934ターボの模型を作るために、ベースとなる実車を自ら購入し、社員を呼んで「さぁ バラバラにしろ!」というエピソードは有名だ。(社員は超嬉しかっただろうなぁ……模型屋冥利に尽きる話だ)
ケッテンクラートの話(後にスイスの農家でトラクター代わりに使われて居たものを、模型製作の為に購入しようしたが、足元を見られてとんでもない値段を吹っ掛けられ、泣く泣く諦めたというエピソードがある。)
実際タミヤを一度でも手にした者なら、その精密さだけでなく、作りやすさ、説明書の解りやすさなど、他のメーカーとは一線を画している事が良く解るだろう。
いや、元プラモマニアの男の子にとっては、とても面白い本だった。
正直いうと半日かからずに読了です。(^o^)v
- 小松崎茂の箱絵によるSUー100突撃砲 当時はジューコフと呼ばれていた。
- ティレルの6輪車 これは作りました。けっこう大きくて置場所に困りました。
- これがケッテンクラート 映画「プライベートライアン」にも出ていましたね。




最近歳のせいか読書スピードが落ちているにもかかわらず、本好きが昂じて積読本が溜まっております。
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この書評へのコメント
- oldman2019-11-04 20:13
薄荷さん。
狸穴のソ連大使館まで押し掛けたらしいです。(笑)当然すげなく断られ、帰ろうとして出てきたら、警備(おそらく公安)の警察官に相当つきまとわられたらしいです。
その後6日間戦争後のイスラエルに捕獲戦車が有ると聞き、今度はわざわざテルアビブまで出張してT34/85の撮影をしています。
そう言えば、後年ティーゲルIの1/16のラジコンを出したとき、エンジン音の為にフランスのソミュールにある戦車博物館の、世界で唯一のエンジン稼働なケーニヒッスティーゲル(エンジンはどちらもマイバッハ)のバッテーリー駆動とクランク駆動を録音して搭載するという凝り性ぶりをみせています(爆)<お値段は10万円……でも欲しいなぁ(^-^;>クリックすると、GOOD!と言っているユーザーの一覧を表示します。 - oldman2019-11-06 23:01
マーブルさん 近所に大きなオモチャ屋が数件の店を持っていて、うち1件が大きな模型屋になっています。地上2階地下1階ですが半分くらいはプラモ以外ですね。それでもそれなりにお客さんは来ているみたいですね。
でもあの最盛期に比べれば減っているんだとおもいます。
作りかけは僕も持ってます。タミヤのフェアリー・ソードフィッシュは殆ど手付かずだし、バイクはグンゼ(そう グンゼがてを出していた事があるんです)のメグロがこれまた殆ど手付かずで残っています。
木製帆船に至っては船体を途中まで作りかけた「トルネード」というのが丸々2隻分屋根裏に眠っています(これはもう40年近く寝かしていますww)
いや 改めて書くと凄まじい状態ですね。反省しきりです。。(〃_ _)σ∥クリックすると、GOOD!と言っているユーザーの一覧を表示します。 - oldman2019-11-10 16:11
マーブルさん
あるにはあるのですが……1/16シリーズでタミヤがラインアップしてはいますが、お値段が半端ない(>_<) プロポ込みとはいえ、10万以下はシャーマン位です。(*・ω・)つhttps://www.tamiya.com/japan/products/list.html?genre_item=202010 宝くじでも当たらないと無理だろうなぁ(つд⊂)クリックすると、GOOD!と言っているユーザーの一覧を表示します。 
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