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星落秋風五丈原
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内なる輝きを持つ女性達
 明治時代、お雇い外国人ウィル=バートンの洋妾となった浜村梅は、彼の帰国と自分の妊娠を同時に知る。それから18年の月日が流れ、今は一人となった梅の遺児・杏は進路を決める時期にあった。

 赤い髪と薄い瞳を持つ杏は、日本人でも、また西洋人でもない存在として、周囲から常に特異な視線で見つめ続けられ、差別されてきた。そんな彼女が、やがて自分の才能を生かす道を見つけ、鹿鳴館デビューを果たすまでを描くサクセスストーリー。母親・梅の生涯だけでも、一つの独立した作品になりそうで、全てを100ページで収めるには、もったいないような内容。内なる輝きで周囲を圧倒するヒロイン・杏が、その輝きと競おうとして近づいてくる火星をも跳ね返すアンチ・アレス(=反・火星)の名を持つさそり座の一等星に仮託されている。共同経営者の話を持ちかけた恩師の伯父が「スキャンダルになるのでは?」と問うと、「噂や醜聞や悪口なんてもの 私がどんなに怖れないか 教えてさしあげましょうか?」と輝く瞳で答える彼女は、『陽の末裔』で過去を暴かれて、「わたくしは、わたくしだわ!」と言い放った南部咲久子と、同じ強さとたくましさを持った女性。

 西洋と日本、どちらの社会も自分を受け入れないなら「同じ高さの相対する者」を選ぶと宣言する彼女が、二つの戦争を経て西洋にすり寄ってゆく日本の中でどう生きていくのか?先が読みたくなる。他に『黄昏と黎明』を収録。こちらもいきなり自分の出生を知らされて結婚した女性が、新婚一日目で夫を失い、義妹と義母と共に生活していく話。こちらも話を続ければ佐伯かよのさんの『緋の稜線』みたいになったのに。どちらも恋愛はあっさりと流していて、もう少し彼女達の未来が読みたいなぁと思える所で終わっていて、残念。

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星落秋風五丈原
星落秋風五丈原 さん本が好き!1級(書評数:2340 件)

2005年より書評業。外国人向け情報誌の編集&翻訳、論文添削をしています。生きていく上で大切なことを教えてくれた本、懐かしい思い出と共にある本、これからも様々な本と出会えればと思います。

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