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ドロバチとダニの相利共生にはファーブル先生もびっくりな驚くべき真相があった。
ダニの本と聞くとまずユクスキュルの「生物から見た世界」を思い出す。ダニは中枢神経を持たない単純な動物の代表例のように思うが(何しろダニには視覚がない)、そのダニが進化の過程で手に入れた生存戦略の驚くべき例が本書の中に示されていて、読んでいて興奮した。
僕は若い頃は東北の山を登っていたので、ダニでまず連想するのは病気の元になるツツガムシやマダニだ。最近ではマダニがかなり危険らしい。だたしマダニはサイズが大きくて目に見えるが、ほとんどのダニ類は、ハウスダストの元になる家ダニなど肉眼では見えにくい大きさだ。実はダニはもともとは土の中で動植物の死骸などを食べる平和な生き物で、人の血を吸うのは例外的らしい。
この本で紹介されるダニ類は昆虫に寄生して生活するグループで、ダニの中ではなかり進化した種類のようだ。ところで、ダニとクモと昆虫は進化上で近い関係にあり、昆虫は6本脚で、体が頭、胸、胴の三つに分かれているのに対し、クモは8本脚で体が二つに分かれ、ダニは8本脚で体に分かれ目はない。ダニが一番古いタイプの感じがする。目もないし(目がないのは先祖が土の中で暮らしていたからなのかな)。
そのダニが昆虫のハチと共生関係をもつという話はかのファーブル先生が聞いてもビックリするような話だ。
本書の白眉は第三章の「ドロバチとダニの相利共生」の章だろう。狩りバチとして知られるドロバチはファーブル先生の本でも有名だ。そのドロバチは体の節と節の間に小さな窪み(アカリナリウム)を持っている。そしてこの窪みには小さなダニが多ければ数十匹も入っている。ドロバチのメスは体にこの窪みに入れるだけの数のダニを付けたまま巣作りをするが、なぜメスの蜂はダニを体につけているのか、この窪みはなぜできたのか謎は多い。
著者は長い時間と手間をかけて室内実験と野外観察で謎を解き明かしていくが、最後の最後までダニの役割が見つけられず、ドロバチの母親はしかたなくダニと共生しているのだと考えていたのだが、最後にあっと驚く大発見があって、ドロバチが自分の幼虫と一緒にダニを巣の中に入れておく本当の目的がはっきりする。
ドロバチにはその幼虫を巣の中で食べてしまう恐ろしい寄生バチがいるのだが、ダニはその寄生バチを攻撃してドロバチの幼虫を守っていたのだ。
巣の中のダニの頭数には最適値があって多くても少なくても具合が悪い。だからドロバチのメスは体表面に一定の大きさの窪みを作って、必要かつ十分な数のダニが巣に入るように進化してきたのだった。
この最終形態ではドロバチにもダニにも互いに利益がある共生関係ができているが、種の進化の過程では何が起こっていたのかも著者は考察している。最初は偶然にダニが蜂の巣に住み着いたのかもしれない。そこからどうやって相利共生が出来上がっていったのかを考えると自然界の神秘を感じる。
僕は若い頃は東北の山を登っていたので、ダニでまず連想するのは病気の元になるツツガムシやマダニだ。最近ではマダニがかなり危険らしい。だたしマダニはサイズが大きくて目に見えるが、ほとんどのダニ類は、ハウスダストの元になる家ダニなど肉眼では見えにくい大きさだ。実はダニはもともとは土の中で動植物の死骸などを食べる平和な生き物で、人の血を吸うのは例外的らしい。
この本で紹介されるダニ類は昆虫に寄生して生活するグループで、ダニの中ではなかり進化した種類のようだ。ところで、ダニとクモと昆虫は進化上で近い関係にあり、昆虫は6本脚で、体が頭、胸、胴の三つに分かれているのに対し、クモは8本脚で体が二つに分かれ、ダニは8本脚で体に分かれ目はない。ダニが一番古いタイプの感じがする。目もないし(目がないのは先祖が土の中で暮らしていたからなのかな)。
そのダニが昆虫のハチと共生関係をもつという話はかのファーブル先生が聞いてもビックリするような話だ。
本書の白眉は第三章の「ドロバチとダニの相利共生」の章だろう。狩りバチとして知られるドロバチはファーブル先生の本でも有名だ。そのドロバチは体の節と節の間に小さな窪み(アカリナリウム)を持っている。そしてこの窪みには小さなダニが多ければ数十匹も入っている。ドロバチのメスは体にこの窪みに入れるだけの数のダニを付けたまま巣作りをするが、なぜメスの蜂はダニを体につけているのか、この窪みはなぜできたのか謎は多い。
著者は長い時間と手間をかけて室内実験と野外観察で謎を解き明かしていくが、最後の最後までダニの役割が見つけられず、ドロバチの母親はしかたなくダニと共生しているのだと考えていたのだが、最後にあっと驚く大発見があって、ドロバチが自分の幼虫と一緒にダニを巣の中に入れておく本当の目的がはっきりする。
ドロバチにはその幼虫を巣の中で食べてしまう恐ろしい寄生バチがいるのだが、ダニはその寄生バチを攻撃してドロバチの幼虫を守っていたのだ。
巣の中のダニの頭数には最適値があって多くても少なくても具合が悪い。だからドロバチのメスは体表面に一定の大きさの窪みを作って、必要かつ十分な数のダニが巣に入るように進化してきたのだった。
この最終形態ではドロバチにもダニにも互いに利益がある共生関係ができているが、種の進化の過程では何が起こっていたのかも著者は考察している。最初は偶然にダニが蜂の巣に住み着いたのかもしれない。そこからどうやって相利共生が出来上がっていったのかを考えると自然界の神秘を感じる。
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1957年、仙台に生まれ、結婚後10年間世田谷に住み、その後20余年横浜に住み、現在は仙台在住。本を読んで、思ったことあれこれを書いていきます。
長年、化学メーカーの研究者でした。2019年から滋賀県で大学の教員になりましたが、2023年3月に退職し、10月からは故郷の仙台に戻りました。プロフィールの写真は還暦前に米国ピッツバーグの岡の上で撮ったものです。
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- 出版社:ミネルヴァ書房
- ページ数:0
- ISBN:9784623099597
- 発売日:2025年10月20日
- 価格:2200円
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