三太郎さん
レビュアー:
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動物の排泄物が自然界の物質循環に一役かっているという話。
著者は米国の海洋生態学者。クジラなどの大型の哺乳類が自然環境を作る仕組みを研究しているらしい。今年の8月に出たばかりの本です。
先ずは数十年前にできたばかりのアイスランド沖の火山島に生態系ができていく話。火山島は最初は生き物が住める環境ではない。溶岩には植物が生育するのに必要なリンはあるが窒素が全くない。だからほとんどの植物は種が飛んできても成長できない。植物がないから昆虫も住めない。
そこに海鳥がやってきて子育てをする。海鳥は海で小魚を摂って島で糞をする。この糞にはリンと窒素分が含まれ、そのおかげで裸の島にも次第に植物が育つようになる。
ここでの海鳥は、海の中のリンや窒素分などの栄養を糞の形で溶岩の島に運ぶ役割を担っている。生態学ではプランクトン→小魚→海鳥といったボトムアップのシステムが注目されがちだが、動物の排泄物や死骸が、生き物のいない環境を生物の豊かな環境に変える役割を担っていて、地球環境の変化にも影響した可能性があると著者は主張している。
著者はクジラが大好きらしいのだが、欧米の捕鯨禁止の動きに反対して日本が主張している、クジラの捕食による魚の減少に反論したいらしい。いわく、クジラは深海で捕食し海面で糞や尿を出すことで生物の増殖に必要な栄養分を深海から海面へ移動させ、プランクトンを増殖させ、その結果魚も増えるのだと。(よく解らないのだが深海で捕食するマッコウクジラなどを念頭に置いてるのかな。)
だたしこの説は学者仲間からは疑問視されている。クジラの糞尿が自然界の物質循環に影響するほどの規模なのか疑問だからだ。
もっと限定的な規模ならデータがある。アフリカのサバンナでは大型草食動物であるカバがクジラの代わりをしている。カバは川に住んでいるが昼間は近所の草原で草を食んでいる。そして川に帰って糞尿をする。すると川の中の窒素分が大幅に増えてプランクトンが増えることが分かっている。
人も含め動物は一日に全体重の1%の糞尿を出す。つまり100日で体重相当の糞尿を、一年では体重の3倍以上の糞尿を作り出す。これを肥料に活用する研究が米国で行われている。人の尿を集めて窒素肥料にする研究だ。(日本では戦後の高度成長期以前には農村で普通に行われていたことを著者は知らないのかも。)
人間や家畜の糞尿を肥料化して使用することで、ハーバー・ボッシュ法による窒素肥料の一部を代替し化石燃料の消費を減らすことができるという。
大型哺乳類が地球環境に与える影響は大きく、氷河期が始まったのも人類がマンモスなどの大型哺乳類を絶滅させたことが一因だという。草食動物は草を消化する際に温室効果ガスであるメタンを放出する。マンモスが居なくなるとメタンが減って地球の気温が低下したのだという。(でもこれだと何故氷河期が終わったのか説明できないような気がしますが。)
ラッコはかつて毛皮のために乱獲されわずかな地域にかろうじて生息するまでになっていたが、米国の水爆実験場付近のラッコを保護するために、ラッコがいなくなった地域に移住させたのだとか。移住先の海ではウニの大繁殖により海藻が食い尽くされ生態系が貧困になっていたのが、ラッコの移住によって海藻が復活し豊かな海が戻ってきたという。
世界中で野生動物の生息域を復活させ、人類誕生以前の豊かな生態系を復活させるのが著者の夢であるらしい。
先ずは数十年前にできたばかりのアイスランド沖の火山島に生態系ができていく話。火山島は最初は生き物が住める環境ではない。溶岩には植物が生育するのに必要なリンはあるが窒素が全くない。だからほとんどの植物は種が飛んできても成長できない。植物がないから昆虫も住めない。
そこに海鳥がやってきて子育てをする。海鳥は海で小魚を摂って島で糞をする。この糞にはリンと窒素分が含まれ、そのおかげで裸の島にも次第に植物が育つようになる。
ここでの海鳥は、海の中のリンや窒素分などの栄養を糞の形で溶岩の島に運ぶ役割を担っている。生態学ではプランクトン→小魚→海鳥といったボトムアップのシステムが注目されがちだが、動物の排泄物や死骸が、生き物のいない環境を生物の豊かな環境に変える役割を担っていて、地球環境の変化にも影響した可能性があると著者は主張している。
著者はクジラが大好きらしいのだが、欧米の捕鯨禁止の動きに反対して日本が主張している、クジラの捕食による魚の減少に反論したいらしい。いわく、クジラは深海で捕食し海面で糞や尿を出すことで生物の増殖に必要な栄養分を深海から海面へ移動させ、プランクトンを増殖させ、その結果魚も増えるのだと。(よく解らないのだが深海で捕食するマッコウクジラなどを念頭に置いてるのかな。)
だたしこの説は学者仲間からは疑問視されている。クジラの糞尿が自然界の物質循環に影響するほどの規模なのか疑問だからだ。
もっと限定的な規模ならデータがある。アフリカのサバンナでは大型草食動物であるカバがクジラの代わりをしている。カバは川に住んでいるが昼間は近所の草原で草を食んでいる。そして川に帰って糞尿をする。すると川の中の窒素分が大幅に増えてプランクトンが増えることが分かっている。
人も含め動物は一日に全体重の1%の糞尿を出す。つまり100日で体重相当の糞尿を、一年では体重の3倍以上の糞尿を作り出す。これを肥料に活用する研究が米国で行われている。人の尿を集めて窒素肥料にする研究だ。(日本では戦後の高度成長期以前には農村で普通に行われていたことを著者は知らないのかも。)
人間や家畜の糞尿を肥料化して使用することで、ハーバー・ボッシュ法による窒素肥料の一部を代替し化石燃料の消費を減らすことができるという。
大型哺乳類が地球環境に与える影響は大きく、氷河期が始まったのも人類がマンモスなどの大型哺乳類を絶滅させたことが一因だという。草食動物は草を消化する際に温室効果ガスであるメタンを放出する。マンモスが居なくなるとメタンが減って地球の気温が低下したのだという。(でもこれだと何故氷河期が終わったのか説明できないような気がしますが。)
ラッコはかつて毛皮のために乱獲されわずかな地域にかろうじて生息するまでになっていたが、米国の水爆実験場付近のラッコを保護するために、ラッコがいなくなった地域に移住させたのだとか。移住先の海ではウニの大繁殖により海藻が食い尽くされ生態系が貧困になっていたのが、ラッコの移住によって海藻が復活し豊かな海が戻ってきたという。
世界中で野生動物の生息域を復活させ、人類誕生以前の豊かな生態系を復活させるのが著者の夢であるらしい。
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1957年、仙台に生まれ、結婚後10年間世田谷に住み、その後20余年横浜に住み、現在は仙台在住。本を読んで、思ったことあれこれを書いていきます。
長年、化学メーカーの研究者でした。2019年から滋賀県で大学の教員になりましたが、2023年3月に退職し、10月からは故郷の仙台に戻りました。プロフィールの写真は還暦前に米国ピッツバーグの岡の上で撮ったものです。
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- 出版社:河出書房新社
- ページ数:0
- ISBN:9784309254883
- 発売日:2025年08月22日
- 価格:2970円
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