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DBさん
DB
レビュアー:
這い出してきた恐怖の話
「角川文庫夏フェア2025」参加書評です。

冲方丁は王朝時代のあわい世界を描いた『はなとゆめ』を読んだことがある。
なのでホラーと言っても、タイトルからボーンチャイナを連想したこともありファンタジー寄りのホラーかと思っていたら、なかなかド・ストレートなホラーでした。

主人公の松永は大手デベロッパーで働く松永は、SNSで不穏な投稿があったことから自社が社運をかけて建築中の渋谷駅再開発案件の調査のために、東棟と呼ばれる場所の基礎工事現場を見に行っていた。
ひとりで地下の基礎工事部分へと階段を下りていく松永の鼻は、なぜか異常に乾燥した空気と人骨を焼くかのような臭いを感じ取っている。
その臭いに亡き父の葬儀の時を思い出しながらも、目の前の仕事に集中しようとする心理が克明に描かれていきます。

特に問題もなく地下の調査を終えようとしたとき、図面にのっていない扉があってさらに地下へと続く階段があることに気づく。
確認のために階段を降りると、そこには大きな穴と神棚があり、穴の底には路上生活者らしい男が鎖でつながれていたのだった。
男を連れて地上へ向かう途中で火が出て、その混乱の中で男を見失ってしまう。

その出来事があってから、松永が妊娠中の妻と小学生の娘と三人で暮らすマンションに異臭を感じるようになる。
本を読んでいると焼き場の独特の臭いが鼻についてくるかのような恐怖があります。
図面になかった場所を管理する工務店に会社が大きい金額の費用を払っていることを知り、工務店に話を聞きに行くと、そこは祭祀場として管理しているという説明だった。
他の場所でも同じように地鎮の祭壇を作って管理しているという現場を案内されるも、非現実的な世界に理解が追い付かない松永だったが。

家族の体調不良や家の異臭が続き、さらに亡き父が姿を現してとホラーはどんどん度合いを増していく。
工務店の社員に逃げ出してしまった穴の底にいた男を見つけるようにと言われるが、松永は自分の言動がどんどん常軌を逸していくことに気づかない。
得体のしれないモノに出会うのもなかなか恐怖だが、それが自宅に入り込んでくるという恐怖はそれを上回る。
ラストで地鎮式のような儀式でどうにか「モノ」を封じ込めるのですが、その手法もまた一種のホラーだった。
息苦しくなるような恐怖に追い立てられるかのように最後まで一気読みしてしまった本でした。
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DB
DB さん本が好き!1級(書評数:2010 件)

好きなジャンルは歴史、幻想、SF、科学です。あまり読まないのは恋愛物と流行り物。興味がないのはハウツー本と経済書。読んだ本を自分の好みというフィルターにかけて紹介していきますので、どうぞよろしくお願いします。

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