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DBさん
DB
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本の世界に入り込む話
「角川文庫夏フェア2025」参加書評です。

読長町という町は、絵本専門店やブックカフェ、書店に古書店、小説家の書斎のような喫茶店が軒を連ねて本好きで賑わう本の町だった。
中でもその中心にあるのが「御倉館」、大正時代に御倉嘉市という町の名士が建てた本のための家だった。
かつては図書館のような役割をしていた御倉館だったが、嘉市の娘のたまきが本の盗難に激怒して御倉館を閉鎖してからは、本の管理と修理がたまきの子供たちの仕事になっていた。
たまきは盗難対策として御倉館を閉鎖しただけでなく、所蔵の本に呪いをかけたと噂される。
それがタイトルにもなっている「この本を盗む者は」ではじまるカースなのですが、呪いが発動すると不思議な世界が展開していきます。

たまきの孫にあたる女子高生の深冬は、本好きの一族の末裔に生まれてしまった反動からか本嫌いだった。
なので御倉館に行くのも避けていたのだが、父親のあゆむが怪我で入院したためやむなく御倉館へ足を運ぶことになる。
そこで深冬は本が盗まれたことで発動した呪いに巻き込まれ、物語の世界へ入り込んでしまった。

最初に入り込んだ世界はまるで童話のような話だったが、その世界で本を盗んだ人間を捕まえないと元の世界に帰れない。
しかも時間がたつごとになぜか狐に変身していくため時間制限付きという不思議なルールが存在した。
登場人物たちは読長町の住人たちだったが、知人たちは皆物語の世界の役どころになり切ってしまっていて深冬のことは異邦人だと思われてしまう。
犬に変身する真白という深冬と同じくらいの年齢の少女と手を取り合って、物語の世界を走り回ります。

次に本の呪いが発動した時に入り込んだのは、銃撃戦があったり探偵が活躍するようなハードボイルドの世界だ。
本が禁制の世界で本泥棒を追いかけていきます。
他にもジョージ・オーウェルかファイナルファンタジーを思わせるような世界もあり、本の中に入り込んでみたいという願望を形にしたかのような設定だ。

もし入り込めるとしたらどの世界に行くかは自分の役割次第だとも思うが悩みどころ。
ただ本泥棒を探してかなりドタバタした雰囲気で進んでいくが、話そのものは単純なのでテンポについていけない感覚があったかな。
同じ本がらみのファンタジーだったら『本にだって雄と雌があります』のほうが好みだった。
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DB
DB さん本が好き!1級(書評数:2033 件)

好きなジャンルは歴史、幻想、SF、科学です。あまり読まないのは恋愛物と流行り物。興味がないのはハウツー本と経済書。読んだ本を自分の好みというフィルターにかけて紹介していきますので、どうぞよろしくお願いします。

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