hackerさん
レビュアー:
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ボワロー&ナルスジャックの作品はそんなに読んでいるわけではないのですが、今まですごく良かったという印象を受けたものはありませんでした。ですが、本作は面白い!
そうきゅうどうさんの書評で、本書を読んでみようと思いました。感謝いたします。
二人の作家の共作ペンネームであるボワロー&ナルスジャックは、1950年代から90年代の間に、各人の単独執筆のものまで含めると、約90冊の本を出版しています。ルパンやメグレのパスティーシュやジュブナイルや評論集も出していますが、活躍の中心となったジャンルは50年代から60年代にかけてフランスで盛んだったサスペンス小説でしょう。
もっとも、私は彼らの作品をそんなに読んでいるわけではなく、H.G.クルーゾー監督の映画『悪魔のような女』(1955年)の同題の原作(1952年)、アルフレッド・ヒッチコックの傑作『めまい』(1958年)の原作『死者の中から』(1954年)、そして死刑囚の遺体の部分部分を別々の患者に移植するというSF風の設定の『私のすべては一人の男』(1965年)、そして評論『推理小説論 恐怖と理性の弁証法』(1964年)ぐらいです。ただ、この中で特に感心したという作品はありませんでした。日本での人気も、80年代の作品からは翻訳も出ていないようですし、下火になったと言っていいでしょう。ただ、二人の共作ということもあるのかもしれませんが、妙に記憶に残っている作家でしたので、このサイトで紹介された本書を読んでみました。
物語は、パリの出版会社で編集者をしているピエール・ブリュランの一人称で語られます。始まりで、彼がマヌーという女性に首ったけであることが分かります。そして、現在の彼はアフガニスタンの山中のダムム建設現場にいて、ルネ・ジャリュというダム建設の専門家の秘書を務めていました。なぜ、そんなことをしているかというと、マヌーが原因だったのです。マヌーはピエールの会社に自作の原稿を送り、それに興味を抱いたピエールは彼女と会い、すっかり魅せられます。初稿の手直しという名目で何度も会っているうちに、二人は肉体関係を持つようになります。ところがマヌーは結婚していました。ピエールは彼女に離婚を迫りますが、彼女はなかなか承知しません。夫を「消す」ことなど論外だというわけです。ピエールは、それならばマヌーを「消す」ことを提案します。つまり、死体が出てこない事故死に見せかけ、マヌーは一時的に姿をくらまし、少し経ってから、誰も知人のいない外国で二人で落ちあって新しい人生を始めるというものでした。それでもマヌーは賛成しませんでした。そして、マヌーの夫というのが、ルネ・ジャリュだったのです。
そして、ピエールは、新しい書き物を書くという口実で長期休暇をもらい、ジャリュの秘書として働くことになり、カブールへ出発します。ジャリュは、単身そこで働いていたのですが、妻を呼び寄せることになっていました。ピエールはマヌーがアフガニスタンに来てくれれば、彼女を「消す」機会が訪れるかもしれないということで、それが彼女の愛情を確かめることにもなると考えていました。しかし、不思議なことに、ジャリュは妻のことをクレールと呼んでいました。ジャリュに頼まれて、カブール空港にマヌーを迎えに行きます。ところが空港で「クレールです」と名乗って現れた女性は、マヌーとはまったくの別人だったのです。
さて、察しの良い方はお分かりになるでしょうが、本書は『死者の中から』のヴァリエーションと言っていいでしょう。しかし、出来は『死者の中から』より、はるかに上だと思います。このように少ない登場人物で、不可思議な謎を中心にサスペンスを盛り上げていくのは、この時期のフランス・ミステリーの特徴ですが、そのジャンルの代表作の一つだと思います。なお、題名の意味、なぜ複数形かは最後に分かります。
二人の作家の共作ペンネームであるボワロー&ナルスジャックは、1950年代から90年代の間に、各人の単独執筆のものまで含めると、約90冊の本を出版しています。ルパンやメグレのパスティーシュやジュブナイルや評論集も出していますが、活躍の中心となったジャンルは50年代から60年代にかけてフランスで盛んだったサスペンス小説でしょう。
もっとも、私は彼らの作品をそんなに読んでいるわけではなく、H.G.クルーゾー監督の映画『悪魔のような女』(1955年)の同題の原作(1952年)、アルフレッド・ヒッチコックの傑作『めまい』(1958年)の原作『死者の中から』(1954年)、そして死刑囚の遺体の部分部分を別々の患者に移植するというSF風の設定の『私のすべては一人の男』(1965年)、そして評論『推理小説論 恐怖と理性の弁証法』(1964年)ぐらいです。ただ、この中で特に感心したという作品はありませんでした。日本での人気も、80年代の作品からは翻訳も出ていないようですし、下火になったと言っていいでしょう。ただ、二人の共作ということもあるのかもしれませんが、妙に記憶に残っている作家でしたので、このサイトで紹介された本書を読んでみました。
物語は、パリの出版会社で編集者をしているピエール・ブリュランの一人称で語られます。始まりで、彼がマヌーという女性に首ったけであることが分かります。そして、現在の彼はアフガニスタンの山中のダムム建設現場にいて、ルネ・ジャリュというダム建設の専門家の秘書を務めていました。なぜ、そんなことをしているかというと、マヌーが原因だったのです。マヌーはピエールの会社に自作の原稿を送り、それに興味を抱いたピエールは彼女と会い、すっかり魅せられます。初稿の手直しという名目で何度も会っているうちに、二人は肉体関係を持つようになります。ところがマヌーは結婚していました。ピエールは彼女に離婚を迫りますが、彼女はなかなか承知しません。夫を「消す」ことなど論外だというわけです。ピエールは、それならばマヌーを「消す」ことを提案します。つまり、死体が出てこない事故死に見せかけ、マヌーは一時的に姿をくらまし、少し経ってから、誰も知人のいない外国で二人で落ちあって新しい人生を始めるというものでした。それでもマヌーは賛成しませんでした。そして、マヌーの夫というのが、ルネ・ジャリュだったのです。
そして、ピエールは、新しい書き物を書くという口実で長期休暇をもらい、ジャリュの秘書として働くことになり、カブールへ出発します。ジャリュは、単身そこで働いていたのですが、妻を呼び寄せることになっていました。ピエールはマヌーがアフガニスタンに来てくれれば、彼女を「消す」機会が訪れるかもしれないということで、それが彼女の愛情を確かめることにもなると考えていました。しかし、不思議なことに、ジャリュは妻のことをクレールと呼んでいました。ジャリュに頼まれて、カブール空港にマヌーを迎えに行きます。ところが空港で「クレールです」と名乗って現れた女性は、マヌーとはまったくの別人だったのです。
さて、察しの良い方はお分かりになるでしょうが、本書は『死者の中から』のヴァリエーションと言っていいでしょう。しかし、出来は『死者の中から』より、はるかに上だと思います。このように少ない登場人物で、不可思議な謎を中心にサスペンスを盛り上げていくのは、この時期のフランス・ミステリーの特徴ですが、そのジャンルの代表作の一つだと思います。なお、題名の意味、なぜ複数形かは最後に分かります。
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「本職」は、本というより映画です。
本を読んでいても、映画好きの視点から、内容を見ていることが多いようです。
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- 出版社:東京創元社
- ページ数:0
- ISBN:9784488141066
- 発売日:1995年11月01日
- 価格:1000円
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