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紅い芥子粒
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語られるのは「平家物語」四の巻から七の巻まで。以仁王の乱、源氏の旗揚げ、清盛の死、そして平家公達の都落ち…… 琵琶を奏で、語りの文体で。
古川日出男訳「平家物語2」で語られるのは、平家物語「四の巻」から「七の巻」まで。

「四の巻」でわずか三才の新帝誕生、以仁王の乱、源氏の旗揚げ。
「五の巻」で福原遷都、奈良炎上、福原の都は一年ももたずに京都に都帰り。
「六の巻」で清盛が死ぬ。専制君主を失って平家は無力な赤子のようになり、
「七の巻」では源氏に追われ、平家の公達ことごとく都を落ち果て。

年代で記せば、治承四年正月一日から寿永二年七月二十五日まで。
西暦で数えれば、1180年から1183年まで、激動の三年間でした。

要所要所で、琵琶を奏で、語り口調の文体で綴られて行きます。

治承五年二月二十七日。清盛の死にざまは、壮絶なものでした。
急な発病。熱病なんですが、畳の上で死ねてよかったね、なんてものではない。
身体の内側から焼かれるような高熱。まわり四五間まで熱くてたまらなくするほどの熱。冷水を浴槽に張り、身体ごとざぶんとつけると、たちまちグラグラと湧きたつほどの熱。
最後は水を注いだ板の上で悶絶死。
権勢を奮った平清盛ですが、愛宕の山で焼かれて、煙となって京の空に上っていきました。

清盛の死後には、あの人、善いこともしたよね、と少しばかりの善行も語られます。
ほんとの父親は白河天皇なんだよ、という真偽不明のうわさも。

清盛死んで、治承は養和と改元。
養和元年七月には、大赦が行われ、治承三年の政変で配流になった人々が償還されました。
藤原師長や源資賢も、もちろん。
師長は、さっそく後白河法皇のもとに参られ、琵琶で秘曲・秋風楽を奏でる。
資賢は、法皇に請われて今様を歌う。

後白河法皇は、芸能が大好き。
今様の研究者であり、演者でもありました。

訳者の「後白河抄・二」が、巻末にあります。
後白河法皇は、保元の乱の翌年、まだ天皇だった三十一歳のとき、美濃青墓の傀儡、乙前を招き、彼女に弟子入りしたといいます。乙前は七十歳を過ぎていました。
卑賎の老女を師と仰ぎ、後白河天皇は、今様の修行に励み、声を鍛え上げたといいます。
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紅い芥子粒
紅い芥子粒 さん本が好き!1級(書評数:563 件)

読書は、登山のようなものだと思っています。読み終わるまでが上り、考えて感想や書評を書き終えるまでが下り。頂上からどんな景色が見られるか、ワクワクしながら読書という登山を楽しんでいます。

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