ソネアキラさん
レビュアー:
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自由と希望へのエクソダス
『ジェイムズ』パーシヴァル・エヴェレット著 木原善彦訳を読む。
子どもの頃、マーク・トウェインの『トム・ソーヤーの冒険』にわくわくした人は多いだろう。『ハックルベリー・フィンの冒険』を読んだかどうか、もはや記憶にないが。この本は『ハックルベリー・フィンの冒険』に出ていた奴隷のジェイムズ(以降表記ジム)をヒーローにしたもの。まあ、二次創作といえばそうなんだけど、著者は、児童文学じゃなくて相当にいかした今様の文学にメタモルフォーゼさせた。
飲んだくれの父親との生活に我慢できなくなったハック。トムとの冒険が忘れられない。しかも、大金まで手にしたのだから。お手製の筏で川に出る。辿りついた島で黒人ジムと遭遇する。ジムは主人の家から逃亡した奴隷だった。どうやら彼を捕まえた者には懸賞金がもらえると。
ジムには秘密があった。ふだんは「だんな様、おら、何も知らねえですだ」とか言っているが、実は読み書きができた。主人の家の蔵書をこっそり読んでいた。しかも、お硬い本を。でも、小説はあまり読んだことがないとか。ちびた鉛筆をくすめては文章を書く。詩のようなものも書く。
ふだんは、あえて黒人奴隷特有の話し方をしているが、いざというときには、白人と同じ喋り方をする。ハックに指摘されると「ヤバッ!」と口調を戻す。
アダルト・チルドレンのハックとおたずね者の逃亡奴隷ジムのバディ。なぜ逃げたのか、明確な理由があった。それは読んでのお楽しみ。
筏の旅ゆえ思うように進まない。昼間は目につくので夜間移動する。
旅で出会うのは、イカサマ野郎ばっかり。彼らのキャラが実に強烈。ジムはクールに対処して事態を乗り切ろうとする。執拗な追っ手からもなんとか逃げ切る。
黒人奴隷への人種差別というのか、人身売買、モノ的扱いを改めて知る。それが現在も色濃く残っている。
で、ジムは作詞も歌の才能もあったので、なりゆきで舞台にも出る。
ハックとは途中はぐれる。まさかとは思ったが、いつの間にやらそばにいる。ジムがハックに対して「私の息子だ」と言うとハックが「信じられねえですだ」などと答えたのには笑った。
そして南北戦争が起こる。「黒人奴隷制度の存続」の対立も一因だった内乱。彼の望みはかなうのだろうか。
ジムをシドニー・ポワチエやデンゼル・ワシントンあたりをイメージして読んでいた。
ジャック・ケルアックの『オン・ザ・ロード』の文体を思わせる。ジム・ジャームッシュ監督の『ダウン・バイ・ザ・リバー』の映像が、浮かんだ。
子どもの頃、マーク・トウェインの『トム・ソーヤーの冒険』にわくわくした人は多いだろう。『ハックルベリー・フィンの冒険』を読んだかどうか、もはや記憶にないが。この本は『ハックルベリー・フィンの冒険』に出ていた奴隷のジェイムズ(以降表記ジム)をヒーローにしたもの。まあ、二次創作といえばそうなんだけど、著者は、児童文学じゃなくて相当にいかした今様の文学にメタモルフォーゼさせた。
飲んだくれの父親との生活に我慢できなくなったハック。トムとの冒険が忘れられない。しかも、大金まで手にしたのだから。お手製の筏で川に出る。辿りついた島で黒人ジムと遭遇する。ジムは主人の家から逃亡した奴隷だった。どうやら彼を捕まえた者には懸賞金がもらえると。
ジムには秘密があった。ふだんは「だんな様、おら、何も知らねえですだ」とか言っているが、実は読み書きができた。主人の家の蔵書をこっそり読んでいた。しかも、お硬い本を。でも、小説はあまり読んだことがないとか。ちびた鉛筆をくすめては文章を書く。詩のようなものも書く。
ふだんは、あえて黒人奴隷特有の話し方をしているが、いざというときには、白人と同じ喋り方をする。ハックに指摘されると「ヤバッ!」と口調を戻す。
アダルト・チルドレンのハックとおたずね者の逃亡奴隷ジムのバディ。なぜ逃げたのか、明確な理由があった。それは読んでのお楽しみ。
筏の旅ゆえ思うように進まない。昼間は目につくので夜間移動する。
旅で出会うのは、イカサマ野郎ばっかり。彼らのキャラが実に強烈。ジムはクールに対処して事態を乗り切ろうとする。執拗な追っ手からもなんとか逃げ切る。
黒人奴隷への人種差別というのか、人身売買、モノ的扱いを改めて知る。それが現在も色濃く残っている。
で、ジムは作詞も歌の才能もあったので、なりゆきで舞台にも出る。
ハックとは途中はぐれる。まさかとは思ったが、いつの間にやらそばにいる。ジムがハックに対して「私の息子だ」と言うとハックが「信じられねえですだ」などと答えたのには笑った。
そして南北戦争が起こる。「黒人奴隷制度の存続」の対立も一因だった内乱。彼の望みはかなうのだろうか。
ジムをシドニー・ポワチエやデンゼル・ワシントンあたりをイメージして読んでいた。
ジャック・ケルアックの『オン・ザ・ロード』の文体を思わせる。ジム・ジャームッシュ監督の『ダウン・バイ・ザ・リバー』の映像が、浮かんだ。
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女子柔道選手ではありません。開店休業状態のフリーランスコピーライター。暴飲、暴食、暴読の非暴力主義者。東京ヤクルトスワローズファン。こちらでもささやかに囁いています。
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