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ソネアキラ
レビュアー:
歩いた。見た。感じた。書いた
『なぜ書くのか  -パレスチナ、セネガル、南部を歩く-』タナハシ・コーツ著  池田年穂訳を読む。

ジャーナリストとして黒人として著者は自身のルーツであるセネガル、サウスカロライナ、そしてパレスチナを歩く。そこで体感した「不条理」、違和感、差別、分断などを書いたルポルタージュ。 


「植民地支配の影が今も横たわるセネガル」を歩く。

「アフリカは、私たち黒人の試練が始まった地理的な場所というだけではない。アフリカこそが、われわれの被った試練を正当化する考えや「認可状」が頼みの綱とするものなのだ。この制度を守るために南北戦争を起こした際に、は彼らは唇には「物語」を、手には認可状を携えていた」

アメリカ系黒人にとってのアフリカとは。

「奴隷制の記憶が残るサウスカロライナ」を歩く。

「州議会議事堂の敷地を歩いていた時だった。私は大人になり切っていない生徒がこの同じ場所を訪れたことにどんな意味があったのかについて考えた。クー・クラックス・クラン(KKK団)のメンバーだった者、奴隷を所有していた者、そして隔離政策を推進してきた者たちの像が、台座の上に建てられ巨人のごとく崇拝されているなかを歩いたら、当然何らかの意味を持ったのだろうと考えた」

ロシアでは、スターリン像が復活しているというが。

「分断の続くパレスチナ」を歩く。

パレスチナへの旅の最終日、「世界ホロコースト記念館」を訪れる。

展示パネルで「325万人のポーランドのユダヤ人のうち、300万人が殺された」ことを知る。

素朴な疑問。ホロコーストの被害者であるユダヤ人がなぜいまパレスチナ・ガザ地区でホロコーストの加害者になっているのか。ホロコーストではないとネタニヤフ首相は言うだろうが


「私の祖先がいかなる白人とも対等と見なされることのない国に生まれたのとまるで同じく、イスラエルは、どのパレスチナ人もいかなる場所でもいかなるユダヤ人とも対等でありえない国であるという正体を現していたからだ。―略―エルサレムでは、ユダヤ人のイスラエル人はイスラエル国家の市民であるのに対し、同じ街に住むパレスチナ人は「永住者」にすぎない。永住者は、権利や特権が大幅に制限された準市民扱いである」

イスラエルの分断政策は、いわば現代のジム・クロウ法だと。「ジム・クロウ法は、19世紀後半から20世紀初頭にかけてアメリカ南部に導入された州法および地方法であり、人種差別を正当化し人種隔離を強制するもの」。


ポール・ニザンの『アデン・アラビア』にもつながる読後感。そして当然、エドワード・サイードの『オリエンタリズム』にも。「パレスチナ系アメリカ人の文学研究家」サイードは、「オリエンタリズムとは、西洋人が一方的につくり上げた概念でそれにより自らの優越性を強調し、植民地支配を正当化してきた」と。
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ソネアキラ
ソネアキラ さん本が好き!1級(書評数:2171 件)

女子柔道選手ではありません。開店休業状態のフリーランスコピーライター。暴飲、暴食、暴読の非暴力主義者。東京ヤクルトスワローズファン。こちらでもささやかに囁いています。

twitter.com/sonenkofu

詩や小説らしきものはこちら。

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この書評へのコメント

  1. かもめ通信2025-09-15 14:46

    これは必ず読もう!と思っている本なのですが、
    私のことなので、いつになることやら…。

  2. ソネアキラ2025-09-15 16:04

    かもめ通信さん 得るものが多い本です、読むと人間のダメさを感じてつらくはなりますが

  3. No Image

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