ぽんきちさん
レビュアー:
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知財×ラノベ、完結編
『それってパクリじゃないですか?』『それってパクリじゃないですか?2』『それってパクリじゃないですか?3』に続く完結編。
中堅飲料メーカー、月夜野ドリンクに勤める主人公・藤崎亜季。元は開発部に配属されていたが、新たに創設された知的財産(知財)部に異動となり、畑違いの職務に悪戦苦闘。とはいえ、親会社から出向している上司、北脇の厳しい指導で徐々に力をつけてきた。器用な方ではないが、前向きで真面目であり、粘り強く、仲間思いなのが亜季の長所。
一方、上司の北脇。クールで何事も卒なくこなしているように見えるのだが、陰では血のにじむような努力をしてきた。亜季のことも実は大切に思っているが、人間関係には不器用である。
このところ、月夜野ドリンクを揺るがせているのは、小さな食品メーカー、今宮食品からの訴えである。月夜野が今宮の特許を侵害しているというのだ。今宮のバックには総合発明企画なるパテント・トロール(特許の怪物:埋もれた特許を買いたたき、関係企業から高額の利益を得ようとする会社等)が付いているようだった。これが今宮に悪知恵を入れ、月夜野を陥れようとしているようなのである。総合発明企画で今宮の件を担当している瀬名は、亜季の学生時代の知人で、異常な自信家。かつて、自分にほのかな好意を見せていた亜季をこっぴどく振った因縁があった。
今宮は、名の通った企業である月夜野が、小さな会社である今宮の権利を蹂躙している、つまりは弱い者いじめをしていると主張し、特にSNSを通じて、世間の同情を集めることに成功していた。
事実はどうあれ、世間の評判は怖い。月夜野の企業イメージが落ちれば、全体の売り上げの低下に直結する。
ここで、今宮と和解して金を払ってしまえば、とりあえず、事態の早期解決が図れるかもしれない。だが、パテント・トロールには「カモ」と認識され、次々に金銭を要求される事態になりかねない。
一方、訴訟に持ち込めば、ずるずると長引くことになる。結果、敗訴すれば大きな痛手となる。ことは微妙で、裁判官・審査官により、判断は分かれるかもしれず、必ず月夜野が勝てる見込みがあるわけではない。
どうにか、自社に有利な材料が欲しいところ。亜季や北脇は思い切った作戦に出る。
そのためには、亜季にとって因縁の相手、瀬名と直接対決しなければならなかった。
果たしてその結果は。
全体に読み心地はよく、知財部がどんな仕事をするのかも窺えてなかなかおもしろい。
亜季や北脇に加え、知財部長の熊井や社長の増田、販売部・営業部・広報、アドバイザーである特許事務所の又坂も、ともにことに当たる。意見の対立はあるが、基本的にはみな、仲間思い・会社思いで、あまり悪人がいないのも(現実がどうであるかはさておき)読み心地のよさにつながっているところだろう。
その分、なのか、敵役の瀬名の性格の悪さが、若干、非現実的なほどではある。いや、こんな人いるかしら、と思うのだが、まぁそこは置いておくことにしよう。
本編で、事件は解決する。短い番外編が2編とエピローグが付く。エピローグで、読者をやきもきさせてきたプライベートの方も解決が匂わされる。ラノベ的には、エピローグも併せて完結、というところか。
中堅飲料メーカー、月夜野ドリンクに勤める主人公・藤崎亜季。元は開発部に配属されていたが、新たに創設された知的財産(知財)部に異動となり、畑違いの職務に悪戦苦闘。とはいえ、親会社から出向している上司、北脇の厳しい指導で徐々に力をつけてきた。器用な方ではないが、前向きで真面目であり、粘り強く、仲間思いなのが亜季の長所。
一方、上司の北脇。クールで何事も卒なくこなしているように見えるのだが、陰では血のにじむような努力をしてきた。亜季のことも実は大切に思っているが、人間関係には不器用である。
このところ、月夜野ドリンクを揺るがせているのは、小さな食品メーカー、今宮食品からの訴えである。月夜野が今宮の特許を侵害しているというのだ。今宮のバックには総合発明企画なるパテント・トロール(特許の怪物:埋もれた特許を買いたたき、関係企業から高額の利益を得ようとする会社等)が付いているようだった。これが今宮に悪知恵を入れ、月夜野を陥れようとしているようなのである。総合発明企画で今宮の件を担当している瀬名は、亜季の学生時代の知人で、異常な自信家。かつて、自分にほのかな好意を見せていた亜季をこっぴどく振った因縁があった。
今宮は、名の通った企業である月夜野が、小さな会社である今宮の権利を蹂躙している、つまりは弱い者いじめをしていると主張し、特にSNSを通じて、世間の同情を集めることに成功していた。
事実はどうあれ、世間の評判は怖い。月夜野の企業イメージが落ちれば、全体の売り上げの低下に直結する。
ここで、今宮と和解して金を払ってしまえば、とりあえず、事態の早期解決が図れるかもしれない。だが、パテント・トロールには「カモ」と認識され、次々に金銭を要求される事態になりかねない。
一方、訴訟に持ち込めば、ずるずると長引くことになる。結果、敗訴すれば大きな痛手となる。ことは微妙で、裁判官・審査官により、判断は分かれるかもしれず、必ず月夜野が勝てる見込みがあるわけではない。
どうにか、自社に有利な材料が欲しいところ。亜季や北脇は思い切った作戦に出る。
そのためには、亜季にとって因縁の相手、瀬名と直接対決しなければならなかった。
果たしてその結果は。
全体に読み心地はよく、知財部がどんな仕事をするのかも窺えてなかなかおもしろい。
亜季や北脇に加え、知財部長の熊井や社長の増田、販売部・営業部・広報、アドバイザーである特許事務所の又坂も、ともにことに当たる。意見の対立はあるが、基本的にはみな、仲間思い・会社思いで、あまり悪人がいないのも(現実がどうであるかはさておき)読み心地のよさにつながっているところだろう。
その分、なのか、敵役の瀬名の性格の悪さが、若干、非現実的なほどではある。いや、こんな人いるかしら、と思うのだが、まぁそこは置いておくことにしよう。
本編で、事件は解決する。短い番外編が2編とエピローグが付く。エピローグで、読者をやきもきさせてきたプライベートの方も解決が匂わされる。ラノベ的には、エピローグも併せて完結、というところか。
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分子生物学・生化学周辺の実務翻訳をしています。
本の大海を漂流中。
日々是好日。どんな本との出会いも素敵だ。
あちらこちらとつまみ食いの読書ですが、点が線に、線が面になっていくといいなと思っています。
「実感」を求めて読書しているように思います。
赤柴♀(もも)は3代目。
この夏、有精卵からヒヨコ4羽を孵化させました。そろそろ大雛かな。♂x2、♀x2。ニワトリは割と人に懐くものらしいですが、今のところ、懐く気配はありませんw
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- 出版社:集英社
- ページ数:0
- ISBN:9784086805674
- 発売日:2024年07月18日
- 価格:792円
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