薄荷さん
レビュアー:
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たまご料理といえば、何を思い浮かべますか?
オムレツ・卵焼き・目玉焼き・茶碗蒸し・卵かけごはん(TKG)・・・ちょっと考えただけでもいろいろ思いつきます。
といっても、私が考えているのと、他の人が思い浮かべる「たまご料理」はたぶん違うと思います。
例えば関東では「砂糖が入った甘い味」が定番ですが、関西は「だしが効いている塩味」が一般的。(ちなみに私は、どっちも大好き♡)
目玉焼きなんて固まり具合の選択で焼き方が何種もあるし、調味料に至っては(特に日本は)無限・・・もちろん、食べる本人が美味しけりゃ全てが正解ですよね。
そんなわけですから、37人の文筆家による様々な「たまご」料理のエッセイを集めたアンソロジーの本書に出てくる「たまご料理」も、どれ一つ同じものがありません。
こりゃすごい!と思ったのが、高橋克彦氏の「究極の玉子焼き」の「ウズラの玉子焼き」と「ウコッケイの玉子焼き」。
別名玉子魔人の高橋氏に、地元テレビ局が持ちかけた企画は「玉子焼きを極める」。
健康上の理由で大量の鶏卵が食せない魔人が出した答えは、質より量の永年の野望=ウズラとウコッケイの玉子焼き。どっちも個人の家庭でできる代物じゃない。
何故なら、ウズラは60個くらいの卵を割るところから始めなきゃいけない=地獄のような手間と時間の浪費。ウコッケイはちょっと小ぶりで(当時)1個¥500×10個=地獄のような原価。
結果的には普通の卵では絶対に出ない、鮮やかで美しい黄色の玉子焼きに仕上がり、ウズラは淡白で繊細な味、ウコッケイに至っては焼き上げたプリンのようにクリーミーな味だったとか。
まぁウコッケイは家計的に無理でも、ウズラ10個で小さい卵焼きならちょっといいかもしれません。
気になってしかたない!のが、林望先生の「甘い卵焼きのサンドウィッチ」。
中学生の林少年は、大阪からの転校生のお家で供された「美しく黄色い卵焼きがたっぷり挟んであるサンド」に衝撃を覚えるのである。
以来、りんぼう先生はこの卵焼きサンドを踏襲しているとか。それは間違いなく美味しそうと思ったんですが、後日この「甘い+塩味+酸味の三位一体」を餡子で作って美味しい!ってどうでしょ?餡子とマヨネーズ・・・バターなら納得いくんだが・・・。
ちょっと泣けた・・・!のが、土岐雄三氏の「小さなレストランの絶品オムレツ」。
土岐氏が会社員時代のランチに通いつめたのが、鎌倉にあった小さなレストラン。シェフは無口で不愛想なオヤジだが、作る料理はどれも滅法旨くて、ことにオムレツは絶品だったとか。
ランチにオムレツを頼まれるのが不服なオヤジが「コレは朝メシに喰うもんだ」と言った時、土岐氏は答えるのだ。
何このイケメンなセリフ!そりゃホレるわ!
このさり気ない心からの殺し文句に頑固無愛想オヤジは微笑み、それ以降仲良くなって、特別な料理を作ってくれたり、客船のチーフシェフだった頃の思い出を話してくれたり、オムレツの手ほどきを受けたりするようになる。
けれど会社員土岐氏は福岡に転勤することになり、別れのあいさつでさみしそうな顔をしたオヤジは、それからしばらくして廃業の案内を送ってきて・・・以降の消息は不明。
あの頃教えてくれたオムレツを作るたび、オヤジの微笑った顔が思い出される・・・。
赤の他人だからこそのご縁が、切なくて温かいお話です。
他にも、
門田光代さんの「卵料理全般」の日本と海外での扱いの温度差
石井好子さんの「玉子スフレ」の切ない・楽しい・イラつく(笑)思い出
池波志乃さんの「たまごごはん」(TKG)が夫婦間の食卓カルチャーショック第一号
村松友視氏の「卵かけごはん」に現れる歴史には記されない日本人の文化
村上春樹氏の「オムレツ」作りにいちばん適したシチュエーション
片岡義男氏の「オムライス」という被写体の魅力
・・・などなど、主に美味しくて面白いたまご料理の数々がお楽しみいただけます。
たまご料理が無限にあるように、この本から新しく読む本が無限に広がっていくと思います。お勧め文句の定番ではございますが、美味しいもの(特に卵料理)を読むのがお好きな方に、力いっぱいお勧めいたします。
といっても、私が考えているのと、他の人が思い浮かべる「たまご料理」はたぶん違うと思います。
例えば関東では「砂糖が入った甘い味」が定番ですが、関西は「だしが効いている塩味」が一般的。(ちなみに私は、どっちも大好き♡)
目玉焼きなんて固まり具合の選択で焼き方が何種もあるし、調味料に至っては(特に日本は)無限・・・もちろん、食べる本人が美味しけりゃ全てが正解ですよね。
そんなわけですから、37人の文筆家による様々な「たまご」料理のエッセイを集めたアンソロジーの本書に出てくる「たまご料理」も、どれ一つ同じものがありません。
こりゃすごい!と思ったのが、高橋克彦氏の「究極の玉子焼き」の「ウズラの玉子焼き」と「ウコッケイの玉子焼き」。
別名玉子魔人の高橋氏に、地元テレビ局が持ちかけた企画は「玉子焼きを極める」。
健康上の理由で大量の鶏卵が食せない魔人が出した答えは、質より量の永年の野望=ウズラとウコッケイの玉子焼き。どっちも個人の家庭でできる代物じゃない。
何故なら、ウズラは60個くらいの卵を割るところから始めなきゃいけない=地獄のような手間と時間の浪費。ウコッケイはちょっと小ぶりで(当時)1個¥500×10個=地獄のような原価。
結果的には普通の卵では絶対に出ない、鮮やかで美しい黄色の玉子焼きに仕上がり、ウズラは淡白で繊細な味、ウコッケイに至っては焼き上げたプリンのようにクリーミーな味だったとか。
まぁウコッケイは家計的に無理でも、ウズラ10個で小さい卵焼きならちょっといいかもしれません。
気になってしかたない!のが、林望先生の「甘い卵焼きのサンドウィッチ」。
中学生の林少年は、大阪からの転校生のお家で供された「美しく黄色い卵焼きがたっぷり挟んであるサンド」に衝撃を覚えるのである。
なぜなら、この卵焼きは、よくサンドウィッチに入っている塩味のオムレツでもスクランブルエッグでもなくて、それこそこってりと甘いお菓子のような卵焼きだったからだ。さらにそこに、またたっぷりとマヨネーズが塗ってある。
以来、りんぼう先生はこの卵焼きサンドを踏襲しているとか。それは間違いなく美味しそうと思ったんですが、後日この「甘い+塩味+酸味の三位一体」を餡子で作って美味しい!ってどうでしょ?餡子とマヨネーズ・・・バターなら納得いくんだが・・・。
ちょっと泣けた・・・!のが、土岐雄三氏の「小さなレストランの絶品オムレツ」。
土岐氏が会社員時代のランチに通いつめたのが、鎌倉にあった小さなレストラン。シェフは無口で不愛想なオヤジだが、作る料理はどれも滅法旨くて、ことにオムレツは絶品だったとか。
ランチにオムレツを頼まれるのが不服なオヤジが「コレは朝メシに喰うもんだ」と言った時、土岐氏は答えるのだ。
「だって、うまいンだから、仕様がないさ」
何このイケメンなセリフ!そりゃホレるわ!
このさり気ない心からの殺し文句に頑固無愛想オヤジは微笑み、それ以降仲良くなって、特別な料理を作ってくれたり、客船のチーフシェフだった頃の思い出を話してくれたり、オムレツの手ほどきを受けたりするようになる。
けれど会社員土岐氏は福岡に転勤することになり、別れのあいさつでさみしそうな顔をしたオヤジは、それからしばらくして廃業の案内を送ってきて・・・以降の消息は不明。
あの頃教えてくれたオムレツを作るたび、オヤジの微笑った顔が思い出される・・・。
赤の他人だからこそのご縁が、切なくて温かいお話です。
他にも、
門田光代さんの「卵料理全般」の日本と海外での扱いの温度差
石井好子さんの「玉子スフレ」の切ない・楽しい・イラつく(笑)思い出
池波志乃さんの「たまごごはん」(TKG)が夫婦間の食卓カルチャーショック第一号
村松友視氏の「卵かけごはん」に現れる歴史には記されない日本人の文化
村上春樹氏の「オムレツ」作りにいちばん適したシチュエーション
片岡義男氏の「オムライス」という被写体の魅力
・・・などなど、主に美味しくて面白いたまご料理の数々がお楽しみいただけます。
たまご料理が無限にあるように、この本から新しく読む本が無限に広がっていくと思います。お勧め文句の定番ではございますが、美味しいもの(特に卵料理)を読むのがお好きな方に、力いっぱいお勧めいたします。
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スマホを初めて買いました!その日に飛蚊症になりました(*´Д`)ついでにUSBメモリーが壊れて書きかけレビューが10個消えました・・・(T_T)
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- 出版社:主婦と生活社
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- ISBN:9784391163674
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