hackerさん
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「わしのお祖父ちゃんは大変なひねくれ者だったと言ったよな。彼がありきたりの幽霊になると思うかね?」 確かに、ならなかったのです。(本書収録『ハンク・ガーヴィーの白昼幽霊』より)
ロバート・アーサー(1909-1969)によるミステリー短篇を収録した自選傑作集『ガラスの橋』に続く、怪奇・ファンタジー系の作品を集めた1963年刊の自選傑作集です。ロバート・アーサーというと、個人的にはミステリー作家というイメージが強かったのですが、本書を読むと、こちらもなかなかのものです。10作品が収録されていますが、特に印象的なものを紹介します。()内は初出年です。
●『見えない足跡』(1940年)
タイムズ・スクウェアの新聞売店で売り子をしているジョーマンは、足音を聞いただけで、どのお客なのか分かる特技がありました。ある雨の夜、近くのホテルに長期滞在している考古学者の足音を識別したところ、頼みたいことがあるというので、ホテルまで同行します。実は、考古学者は執拗に後をつける「何か」からもう長い間逃げ回っていたのでした。
ジョーマンの設定、そして正体不明の「何か」、物語が終わっていないことを告げるエンディング、収録作のなかでは珍しく(?)、読者を怖がらせようとした作品です。
●『バラ色水晶のベル』(1954年)
鳴らすと、近くにいる死者が息を吹き返すというベルの話です。ただし、その代償として、別の人間が命を失うことになります。W・W・ジェイコブの傑作『猿の手』(1902年)のヴァリエーションです。
●『頑固なオーティス伯父さん』(1941年)
「私の伯父のオーティスのオーティスはヴァーモンント州随一の頑固者だ(中略)ヴァーモント州の人間がどんなものをかしっているならば、要するに伯父は世界一の頑固者だということになる。オーティス伯父があまりにも頑固なので、水素爆弾よりも危険だと言ったって、厳然たる事実を述べたに過ぎない」
この伯父さん、気に入らない物や人に対して「そんなものは存在しないのだ!」とか「そんな奴は初めからいないのだ!」と罵るのが口癖だったのですが、ある日、落雷にあってから、その罵りが実際にその通りになるようになりました。広場の銅像が消え失せるぐらいは、まだ罪がなかったのですが、現職大統領のことが大嫌いとなると、これは「水素爆弾より危険」なのです。周囲は、なんとか余計なことを言わせないように必死の努力を続けるのですが、解決策(?)は思わぬ形でやってきました。
●『デクスター氏のドラゴン』(1942年)
デクスター氏は、とある古道具屋で、その価値が分かっていない店主から、錠付の古本を買ってきます。自宅で、錠を外してみると、それは魔術や呪文に関する本でした。そして、とあるページには、痩せこけたドラゴンと13人分の積みあがった人骨が描かれていました。
一種の絵画怪談だというと、ネタバレになってしまいますが、巧みな展開が印象的です。
●『ハンク・ガーヴィーの白昼幽霊』(1962年)
「わしのお祖父ちゃんは大変なひねくれ者だったと言ったよな。彼がありきたりの幽霊になると思うかね?わしのお祖父ちゃんは違う!お祖父ちゃんの幽霊は生きていた時と同じようにひねくれ者なんだ」
こう語るハンク・ガーヴィーには、ひねくれ者のお祖父ちゃんの幽霊が憑ついていたのです。それが、どんな風にひねくれていたかと言うと...。
さて、拙文からお分かりかもしれませんが、すごく怖い話はありません。語り口がユーモラスなこともありますし、前述したように、作者は読者をあまり怖がらせようとしていないようです。基本的にエンタテイナーである作者の特徴がよく出た怪奇・ファンタジー小説集と言えそうです。
●『見えない足跡』(1940年)
タイムズ・スクウェアの新聞売店で売り子をしているジョーマンは、足音を聞いただけで、どのお客なのか分かる特技がありました。ある雨の夜、近くのホテルに長期滞在している考古学者の足音を識別したところ、頼みたいことがあるというので、ホテルまで同行します。実は、考古学者は執拗に後をつける「何か」からもう長い間逃げ回っていたのでした。
ジョーマンの設定、そして正体不明の「何か」、物語が終わっていないことを告げるエンディング、収録作のなかでは珍しく(?)、読者を怖がらせようとした作品です。
●『バラ色水晶のベル』(1954年)
鳴らすと、近くにいる死者が息を吹き返すというベルの話です。ただし、その代償として、別の人間が命を失うことになります。W・W・ジェイコブの傑作『猿の手』(1902年)のヴァリエーションです。
●『頑固なオーティス伯父さん』(1941年)
「私の伯父のオーティスのオーティスはヴァーモンント州随一の頑固者だ(中略)ヴァーモント州の人間がどんなものをかしっているならば、要するに伯父は世界一の頑固者だということになる。オーティス伯父があまりにも頑固なので、水素爆弾よりも危険だと言ったって、厳然たる事実を述べたに過ぎない」
この伯父さん、気に入らない物や人に対して「そんなものは存在しないのだ!」とか「そんな奴は初めからいないのだ!」と罵るのが口癖だったのですが、ある日、落雷にあってから、その罵りが実際にその通りになるようになりました。広場の銅像が消え失せるぐらいは、まだ罪がなかったのですが、現職大統領のことが大嫌いとなると、これは「水素爆弾より危険」なのです。周囲は、なんとか余計なことを言わせないように必死の努力を続けるのですが、解決策(?)は思わぬ形でやってきました。
●『デクスター氏のドラゴン』(1942年)
デクスター氏は、とある古道具屋で、その価値が分かっていない店主から、錠付の古本を買ってきます。自宅で、錠を外してみると、それは魔術や呪文に関する本でした。そして、とあるページには、痩せこけたドラゴンと13人分の積みあがった人骨が描かれていました。
一種の絵画怪談だというと、ネタバレになってしまいますが、巧みな展開が印象的です。
●『ハンク・ガーヴィーの白昼幽霊』(1962年)
「わしのお祖父ちゃんは大変なひねくれ者だったと言ったよな。彼がありきたりの幽霊になると思うかね?わしのお祖父ちゃんは違う!お祖父ちゃんの幽霊は生きていた時と同じようにひねくれ者なんだ」
こう語るハンク・ガーヴィーには、ひねくれ者のお祖父ちゃんの幽霊が憑ついていたのです。それが、どんな風にひねくれていたかと言うと...。
さて、拙文からお分かりかもしれませんが、すごく怖い話はありません。語り口がユーモラスなこともありますし、前述したように、作者は読者をあまり怖がらせようとしていないようです。基本的にエンタテイナーである作者の特徴がよく出た怪奇・ファンタジー小説集と言えそうです。
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「本職」は、本というより映画です。
本を読んでいても、映画好きの視点から、内容を見ていることが多いようです。
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- 出版社:扶桑社
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- ISBN:9784594097257
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