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はなとゆめ+猫の本棚
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92歳で末期癌の患者がいる。当人は認知症で、手術を受けるべきか判断ができない。家族は手術をして欲しいと要望。92歳は、今は十分生きたということにはならない。
 物語の舞台は世田谷にある総合病院、伍代記念病院。昨今は、認知症を抱えた老人患者が受診にやってくることが多い。老人だから、どこかに病気を抱えている。認知症だから、医者との意思疎通がなかなかはかれず、診察に手間取る。そこで伍代記念病院では、認知症で疾患を持っている患者専用の病棟「にんにん病棟」を作り、必要があるとき、病気の主治医が、「にんにん病棟」にでかけ、診察治療行為を行うようにしていた。

 その「にんにん病棟」の医長がパプアニューギニアでWHOのもとで医療に従事していたのが主人公の三杉。

 認知症は、不治の病である。そんな患者が別の病気で手術をせねばならなくなる。その場合は病気の主治医が患者当人及び家族に手術内容を説明して承諾を受けねばならない。

 しかし患者当人は医者が何を言っているのかわからない。さらに家族でも、手術をするか否かで意見が別れることがしばしば。

 この作品でも、92歳の母の肺炎が重傷になり、抗生物質もあまり効かず、重篤になる。。その時、娘さんが訴える。

「母は92歳ですよ。人生百年時代と言うじゃないですか。まだ8年もあるのに早すぎます。」
 すごい時代になったものだと思う。92歳で死ぬことが速すぎるとは・・・・。

 あるいは、84歳のガン患者。ものすごい患者に負担を強いる手術をしても、余命90歳が精一杯。緩和療法で85歳で亡くなってもあまり悔いはないと思うのだが、家族の一人が手術をするように主張する。もし成功した場合、多少の処置は残るが、それほど時をおかず、退院して自宅で介護をするようになる。

 一人娘が手術を主張するのだが、他の家族は、介護の大変さが身に染みているため、もう手術はしなくてもいいのではと言い、手術に難色をしめす。

 こんな状況を反映してタイトル「生かさず、殺さず」つけられる。

 この作品は、こんな認知症病棟の抱える日々の困難を描写しながら、一方で主人公三上が外科医だった時代に行った手術での失敗を小説にしようとする元同僚医師の作家の執拗な調査攻撃が別に描かれ、ミステリータッチの作品にもなっている。

 それが、認知症病棟で起こる出来事ともうひとつうまく融合していない。この作品と別の作品にしたほうが良かったのではと感じた。

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はなとゆめ+猫の本棚
はなとゆめ+猫の本棚 さん本が好き!1級(書評数:6252 件)

昔から活字中毒症。字さえあれば辞書でも見飽きないです。
年金暮らしになりましたので、毎日読書三昧です。一日2冊までを限度に読んでいます。
お金がないので、文庫、それも中古と情けない状態ですが、書評を掲載させて頂きます。よろしくお願いします。

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