かもめ通信さん
レビュアー:
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映画も公開中という #角川文庫夏フェア2025 話題の作品。
※上下巻あわせたレビューです。
2020年3月、新型コロナウイルス感染症が世界的に流行したことに伴い、感染予防のため、小中高の学校は全国一斉休校の措置がとられた。
この休校で「3月」と「4月」がごそっと消え、茨城県立砂浦第三高校の二年生の亜紗(あさ)は、実感がわかないまま、いつの間にやら1年を終え、2年生に進級していた。
インターハイも合唱コンクールもと、次々と中止が決まり、亜紗が所属するも屋外での観測がメインとなる天文部も思うように活動が出来ない。
楽しみにしていた夏期合宿も実施は難しそうで、そんな中での新入部員の獲得にも頭を悩ませていた。
27人しかいない新入生のうち、唯一の男子であることにショックを受ける渋谷区立ひばり森中学の1年生真宙(まひろ)は、サッカー部もなくなった中学校などこのまま再開しなければいいのにと思っていた。
そんな彼が、同級生から理科部に誘われて…。
長崎県五島列島の旅館の娘、円華(まどか)は吹奏楽部に所属する高校3年生。
旅館に島外からの客が泊っていることを理由に、親しかった友人から距離を置かれ、やりきれない思いを抱えている。
そんなときクラスメイトに天文台に誘われる。
コロナ禍による休校や緊急事態宣言にともなう様々な活動規制。
これまで誰も経験したことのない事態の中で、複雑な思いを抱える中高生たち。
そんなそれぞれにままならない状況にある彼らをつないだのは、インターネットと星空だった。
2021年から2022年にかけて新聞に掲載された連載小説。
元々あった若い人を描く連載小説をという依頼に、いざ取り組もうという段になってのコロナ禍で、何をどう描くか著者も悩んだというが、新聞小説だけあって青春の群像劇にもコロナは避けて通れなかったのだろう。
中学生の真宙が、手作りの望遠鏡で星を観測する「スターキャッチコンテスト」について亜紗の所属する高校の天文部に問い合わせをしたことを機に、一同に会することが出来なくても、各地から参加する方法でコンテストを開催できないかとの模索がはじまり、リモートで打ち合わせを重ね、遠い地に住む同世代との交流を通してあれこれ学び成長していくという展開。
コロナ禍だからこその葛藤以外にも、友達や教師たちとの関係など、丁寧に描かれていて、胸を打つシーンも多い。
才能のあるなしとか、将来性とかは脇に置いて、好きなことに好きだという理由だけで取り組んでもいいのだという、普遍的なメッセージもあって、人生の折り返し地点を過ぎた世代をも励ましてくれもする。
最終盤、亜紗の高校の天文部顧問・名物教師の綿引先生が、部活や修学旅行などの活動制限について「失われた」「奪われた」と表現される風潮に対する憤りを語る場面がある。
子どもたちだけでなく、むしろ大人たちの方が取り乱し途方に暮れたあの頃をふりかえり、自分の周りに起きたあれこれをも思い出しながら、読み進める。
連載当時とは状況が変わった今だからこそ、持てる感想もあるだろう。
数年後、数十年後にこの本を読む人たちはどんな感想を持つのだろう、そのあたりも気になるところだ。
2020年3月、新型コロナウイルス感染症が世界的に流行したことに伴い、感染予防のため、小中高の学校は全国一斉休校の措置がとられた。
この休校で「3月」と「4月」がごそっと消え、茨城県立砂浦第三高校の二年生の亜紗(あさ)は、実感がわかないまま、いつの間にやら1年を終え、2年生に進級していた。
インターハイも合唱コンクールもと、次々と中止が決まり、亜紗が所属するも屋外での観測がメインとなる天文部も思うように活動が出来ない。
楽しみにしていた夏期合宿も実施は難しそうで、そんな中での新入部員の獲得にも頭を悩ませていた。
27人しかいない新入生のうち、唯一の男子であることにショックを受ける渋谷区立ひばり森中学の1年生真宙(まひろ)は、サッカー部もなくなった中学校などこのまま再開しなければいいのにと思っていた。
そんな彼が、同級生から理科部に誘われて…。
長崎県五島列島の旅館の娘、円華(まどか)は吹奏楽部に所属する高校3年生。
旅館に島外からの客が泊っていることを理由に、親しかった友人から距離を置かれ、やりきれない思いを抱えている。
そんなときクラスメイトに天文台に誘われる。
コロナ禍による休校や緊急事態宣言にともなう様々な活動規制。
これまで誰も経験したことのない事態の中で、複雑な思いを抱える中高生たち。
そんなそれぞれにままならない状況にある彼らをつないだのは、インターネットと星空だった。
2021年から2022年にかけて新聞に掲載された連載小説。
元々あった若い人を描く連載小説をという依頼に、いざ取り組もうという段になってのコロナ禍で、何をどう描くか著者も悩んだというが、新聞小説だけあって青春の群像劇にもコロナは避けて通れなかったのだろう。
中学生の真宙が、手作りの望遠鏡で星を観測する「スターキャッチコンテスト」について亜紗の所属する高校の天文部に問い合わせをしたことを機に、一同に会することが出来なくても、各地から参加する方法でコンテストを開催できないかとの模索がはじまり、リモートで打ち合わせを重ね、遠い地に住む同世代との交流を通してあれこれ学び成長していくという展開。
コロナ禍だからこその葛藤以外にも、友達や教師たちとの関係など、丁寧に描かれていて、胸を打つシーンも多い。
才能のあるなしとか、将来性とかは脇に置いて、好きなことに好きだという理由だけで取り組んでもいいのだという、普遍的なメッセージもあって、人生の折り返し地点を過ぎた世代をも励ましてくれもする。
最終盤、亜紗の高校の天文部顧問・名物教師の綿引先生が、部活や修学旅行などの活動制限について「失われた」「奪われた」と表現される風潮に対する憤りを語る場面がある。
実際に失われたものはあったろうし、奪われたものもある。それはわかる。だけど、彼らの時間がまるごと何もなかったかのように言われるのは心外です。子どもだって大人だって、この一年は一度しかない。きちんと、そこに時間も経験もありましたと、彼は言うのだ。
子どもたちだけでなく、むしろ大人たちの方が取り乱し途方に暮れたあの頃をふりかえり、自分の周りに起きたあれこれをも思い出しながら、読み進める。
連載当時とは状況が変わった今だからこそ、持てる感想もあるだろう。
数年後、数十年後にこの本を読む人たちはどんな感想を持つのだろう、そのあたりも気になるところだ。
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本も食べ物も後味の悪くないものが好きです。気に入ると何度でも同じ本を読みますが、読まず嫌いも多いかも。2020.10.1からサイト献本書評以外は原則★なし(超絶お気に入り本のみ5つ★を表示)で投稿しています。
この書評へのコメント
- かもめ通信2025-07-14 05:50祐太郎さん主催のコミュニティ 
 角川文庫夏フェア2025に挑戦!
 https://www.honzuki.jp/bookclub/theme/no448/index.html?latest=20
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- 出版社:KADOKAWA
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