書評でつながる読書コミュニティ
  1. ページ目
詳細検索
タイトル
著者
出版社
ISBN
  • ログイン
無料会員登録

DBさん
DB
レビュアー:
ゲルマンの文化と歴史の本
ゲルマン民族といえば彼らの南下がローマ帝国の滅亡の一員になったと言われるが、ゲルマン民族の移動と今のドイツに落ち着くまでの歴史をゲルマン民族側から描いた本です。
紀元前113年、アルプスの向こう側で百万人もの人間の大集団が奪略し、歯向かうものを殺戮しながら移動しているとの噂がローマにまで届いた。
百万人というのは大げさにしても十万人くらいのキンブリー族の大集団は、デンマークのユトランド半島にある故郷が津波によって不毛の土地になったことから、新たな土地を目指して放浪してきたのだ。
これにローマは軍団をもってあたったが、策略を使って急襲したにもかかわらず金髪碧眼の巨人と恐れられた野蛮人に大敗を喫した。

ローマ軍を打ち破ったキンブリー族は、なぜかそのまま南下することなく北西に向かい、同じく故郷を捨てて放浪していたテウトニー族と合流してライン川を渡りガリアへ向かった。
ゲルマン人たちはローマに対し居住地をくれれば武器をとって彼らのために戦うと交渉するも、ローマが送った回答は軍隊だった。
ローマとゲルマンが激突したアラウシオの戦いはローマの大敗で、ゲルマン人は敵を殺戮しつくして彼らの神ヴォーダンの生贄とした。
これにローマは再度軍団を編集し、マリウスに率いられたローマ軍は分かれて行動していたテウトニー族をまず滅ぼし、そしてキンブリー族も計略により倒し殺戮したのだった。

ここで言語学的な考察からインドゲルマン人の発祥を新石器時代にまでさかのぼって見ていきます。
ヨーロッパの諸民族であるギリシア人、ラテン人、ケルト人、イリリア人、バルト人は、ヨーロッパ南東から中央アジアの強力な騎馬民族であるインドゲルマン人が西方に進出し、土着の先住民を支配し混血することで生まれたという結論が導き出されていた。

ゲルマン民族という呼称を与えたのは『ガリア戦記』を記したカエサルだったが、このカエサル率いるローマ軍団と東ガリアに侵入してきたスエービー族出身で他にも多くのゲルマン民族を従えたアリオヴィストの対決を詳しく見ていくことで、その当時のゲルマン人がどのようなものだったか知ることができる。
アリオヴィスト率いるゲルマン人との戦いに勝利したカエサルは、その後の戦闘でもゲルマン人たちを倒し女子供まで殺して捕虜を奴隷として売り払った。

ここで話題は考古学に移り、デンマークの沼沢地で発見されたトルント人やグラウバレの男、ヴィンデビィの少女の調査から、二千年前のゲルマン人の風貌や生贄の文化について語られます。
ゲルマン人は金髪というイメージですが、実際には黒髪の人もいたけれど戦闘時に敵と間違われないように髪を染めていたという話は興味深い。
歴史や考古学から浮かび上がってくるゲルマン人とローマ帝国の関係について語った本でした。
掲載日:
外部ブログURLが設定されていません
投票する
投票するには、ログインしてください。
DB
DB さん本が好き!1級(書評数:2049 件)

好きなジャンルは歴史、幻想、SF、科学です。あまり読まないのは恋愛物と流行り物。興味がないのはハウツー本と経済書。読んだ本を自分の好みというフィルターにかけて紹介していきますので、どうぞよろしくお願いします。

参考になる:25票
あなたの感想は?
投票するには、ログインしてください。

この書評へのコメント

  1. keena071511292025-06-28 13:30

    >ヴィンデビィの少女

    最近 忙しくて今さらなんですが 
    『ヴィンデビー・パズル』という本で 
    「少女じゃなくて少年だ」と書いてありました 

    この『ヴィンデビー・パズル』 
    無茶苦茶な本なんですが 
    (僕はあまり感心しなかった) 
    人によっては面白いのかも…

  2. DB2025-06-28 16:10

    1998年に邦訳が上梓された本なので、その頃はまだDNA鑑定されていなかったんでしょうね。『ウィンデビーパズル』もそのうち読んでみたいと思います(^^♪

  3. No Image

    コメントするには、ログインしてください。

書評一覧を取得中。。。
  • あなた
  • この書籍の平均
  • この書評

※ログインすると、あなたとこの書評の位置関係がわかります。

『ゲルマン民族・二つの魂: 最初のドイツ人生と闘いのミステリー (古代文明の謎を追え 4)』のカテゴリ

フォローする

話題の書評
最新の献本
ページトップへ