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ゆうちゃん
レビュアー:
樹木の世界がわかる本。図版多数。
DBさんの書評を拝読して手にした本。良い本のご紹介ありがとうございました。

高校時代、授業がつまらなく、従って生物学もつまらない学科だと思っていたが、読書をするようになって進化論と地球科学を切り口に様々な生物系の本を読んで来た。ところが、これはと思う本は、殆ど動物か細胞の進化を論じたもので、自分の読んだ本の中で植物を論じたものは驚くほど少ない(2冊くらい)。本書を手にしたのはそんな理由からでもある。
本書は見開き一章で左側の頁に説明が、右側の頁に図版がある(左側の頁の下部にも図版がある場合もある)。樹木に関する26章、60頁もない短い本ではあるが、内容はコンパクトに充実している。

まず、樹木の定義から始まり、光合成作用の説明、食物連鎖、樹木の種の数などの概論が導入部にある。続いて、構造の話に入り、最も大切な葉の構造や紅葉の仕組み、形成層や成長点、樹皮や幹、根、水の循環などの章が続く。その後は、樹木の感覚に関する章が続く。ここでは光合成以外の成分である窒素やミネラルの取込み方、重力に対する感覚、痛覚に相当する化学物質の放出と植物の防御態勢、冬季の休眠作用の化学的な説明などがされる。最後は樹木と周辺との相互作用の話があり、樹木が形成する微気象、土壌との関係、エネルギーの貯蔵の説明がある。独特なのが木を楽器製造に使う話(「音楽の木」の章)でる。最後は人類が引き起こす急激な気候変動の悪影響を回避しなければならない、という話となっている。

最も面白いのは樹木の感覚について扱った章で、樹木は重力を感じるのだがそれは「細胞内のデンプンが重力方向に沈み、細胞膜を刺戟することにより生じる」とあった。自分にしてみれば「へぇ」な話である。害虫や植物食の動物などが樹木を食べると、樹木は捕食者が嫌う化学物質を放出する。また、仲間にもそれを化学物質で伝達し、葉っぱなど食べられそうな箇所の化学組成を変えて嫌な味にする。この辺はいわば植物の「会話」に相当する部分で、とっても興味がある。以前、NHK特集の「超・進化論」でも取り上げられた項目でもあり、テレビで見ても本で読んでも、何度説明されても面白い。植物の成長開始や休眠に関するフィトクロムと言う物質の作用も初めて知ったが、いわばスイッチのような物質でこの話もとても面白かった。

本書は短く、図版も多数ではあるが、内容はかなり専門的である。光の色(波長)のところでnm(ナノメートル)と言う単位が登場するし、「受容体」などの語も説明なく使用される。フィトクロムやアルギニンなどの化学物質名も頻出している。巻末に用語解説があるので、不親切とは言えないが、ある程度の科学用語の素養がないと読みこなせないかもしれない。
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ゆうちゃん
ゆうちゃん さん本が好き!1級(書評数:1696 件)

神奈川県に住むサラリーマン(技術者)でしたが24年2月に会社を退職して今は無職です。
読書歴は大学の頃に遡ります。粗筋や感想をメモするようになりましたのはここ10年程ですので、若い頃に読んだ作品を再読した投稿が多いです。元々海外純文学と推理小説、そして海外の歴史小説が自分の好きな分野でした。しかし、最近は、文明論、科学ノンフィクション、音楽などにも興味が広がってきました。投稿するからには評価出来ない作品もきっちりと読もうと心掛けています。どうかよろしくお願い致します。

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