休蔵さん
レビュアー:
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本書は京都芸術大学の教授と漫画家・イラストレイターの元教え子の手による仏像紹介の1冊。仏像は写真ではなくカラーとモノクロのイラストで紹介しつつ、各章の最後にマンガによって復習してくれて便利。
仏像の歴史を取り扱った書籍は数多くある。
分厚い専門書ということもあれば、写真を数多く散りばめたムック本もあり、観光案内に軽く触れることもあろう。
文化財を紹介するなかで、仏像の歴史に触れる1冊もある。
そんな数多くの書籍があるなか、本書はやや特異な仕上がりとなる。
それは京都芸術大学の教授が元教え子と一緒にまとめている点だろう。
しかも、教え子は専門家になっているわけではなく、漫画家・イラストレイターとして活躍中という異色の取り合わせ。
その歴史を紹介する過程で示す仏像はカラーとモノクロのイラストで、各章の最後にはマンガで復習をさせてくれる。
分かりやすく、かつ親しみやすい点が本書の特徴と言えよう。
さて、本書は序章+全8章からなる。
すなわち、
第1章 飛鳥時代前期
第2章 飛鳥時代後期
第3章 奈良時代前期
第4章 奈良時代後期
第5章 平安時代前期
第6章 平安時代後期
第7章 鎌倉時代
第8章 南北朝時代~江戸時代・近代
そこに各章で関わる技術などを解説するコラムが11添えられる。
第1章~第7章までは、各時期の仏像の特徴を挿絵とともに解説する。
仏像の正面観だけではなく、側面のイラストもあり、立体的な特徴を解説する
もちろん、仏像の特徴だけではなく、その背景となる歴史事象についても解説する。
解説には独自見解も含まれていて興味深い。
たとえば、鎌倉時代の仏像の事例として紹介する浄楽寺阿弥陀如来坐像について、「この像は武将が発願した仏像なので、武士の力強さが表情や体つきに反映されている」(171頁)という解説があることを示し、「発願した武将が、結果として作者である運慶が作りたいように作らせた」(171頁)と解釈する。
平安貴族と異なり、仏像に関する教養を身に着けることがなかった武士という階層という点からの解釈である。
さらに慶派が灰燼と帰した奈良において復興に力を注ぎ、平安の仏像ではなく、古都奈良の仏像への復古を追求した事情も説く。
仏像そのものを鑑賞するだけでは、それを観たことにはならないことを強く示してくれたと言えよう。
最終章は南北朝から近代まで。
これは頁が尽きたというわけではなく、ここからの仏像は鎌倉時代前期に確立した写実様式を踏襲することが基本という事情を鑑みてのことという。
定朝や運慶、快慶のような天才の作風が様式として確立するということはなく、システマチックに類似仏像を生産する体制が確立されたということのようだ。
もちろん、円空や木喰のような特異な存在はいるものの、例外的な仏像を生み出した存在としての取り扱いが妥当のように感じた。
本来、仏像は信仰の対象として生み出された礼拝の対象である
博物館や美術館で国宝や重要文化財として指定されたものを鑑賞するのは、仏像史のなかではごく新しい現象ということになる。
もちろん、仏像の歴史をきちんと押さえて美術鑑賞することが楽しみであることは疑いないが、寺院に安置されている仏像を観光の一環で拝観する際には、それなりの礼儀はきちんと押さえておくべきと思う。
このことは、観光公害が大きく取り沙汰されるようになった今だからこそ、しっかりと意識しておく必要があると思う。
分厚い専門書ということもあれば、写真を数多く散りばめたムック本もあり、観光案内に軽く触れることもあろう。
文化財を紹介するなかで、仏像の歴史に触れる1冊もある。
そんな数多くの書籍があるなか、本書はやや特異な仕上がりとなる。
それは京都芸術大学の教授が元教え子と一緒にまとめている点だろう。
しかも、教え子は専門家になっているわけではなく、漫画家・イラストレイターとして活躍中という異色の取り合わせ。
その歴史を紹介する過程で示す仏像はカラーとモノクロのイラストで、各章の最後にはマンガで復習をさせてくれる。
分かりやすく、かつ親しみやすい点が本書の特徴と言えよう。
さて、本書は序章+全8章からなる。
すなわち、
第1章 飛鳥時代前期
第2章 飛鳥時代後期
第3章 奈良時代前期
第4章 奈良時代後期
第5章 平安時代前期
第6章 平安時代後期
第7章 鎌倉時代
第8章 南北朝時代~江戸時代・近代
そこに各章で関わる技術などを解説するコラムが11添えられる。
第1章~第7章までは、各時期の仏像の特徴を挿絵とともに解説する。
仏像の正面観だけではなく、側面のイラストもあり、立体的な特徴を解説する
もちろん、仏像の特徴だけではなく、その背景となる歴史事象についても解説する。
解説には独自見解も含まれていて興味深い。
たとえば、鎌倉時代の仏像の事例として紹介する浄楽寺阿弥陀如来坐像について、「この像は武将が発願した仏像なので、武士の力強さが表情や体つきに反映されている」(171頁)という解説があることを示し、「発願した武将が、結果として作者である運慶が作りたいように作らせた」(171頁)と解釈する。
平安貴族と異なり、仏像に関する教養を身に着けることがなかった武士という階層という点からの解釈である。
さらに慶派が灰燼と帰した奈良において復興に力を注ぎ、平安の仏像ではなく、古都奈良の仏像への復古を追求した事情も説く。
仏像そのものを鑑賞するだけでは、それを観たことにはならないことを強く示してくれたと言えよう。
最終章は南北朝から近代まで。
これは頁が尽きたというわけではなく、ここからの仏像は鎌倉時代前期に確立した写実様式を踏襲することが基本という事情を鑑みてのことという。
定朝や運慶、快慶のような天才の作風が様式として確立するということはなく、システマチックに類似仏像を生産する体制が確立されたということのようだ。
もちろん、円空や木喰のような特異な存在はいるものの、例外的な仏像を生み出した存在としての取り扱いが妥当のように感じた。
本来、仏像は信仰の対象として生み出された礼拝の対象である
博物館や美術館で国宝や重要文化財として指定されたものを鑑賞するのは、仏像史のなかではごく新しい現象ということになる。
もちろん、仏像の歴史をきちんと押さえて美術鑑賞することが楽しみであることは疑いないが、寺院に安置されている仏像を観光の一環で拝観する際には、それなりの礼儀はきちんと押さえておくべきと思う。
このことは、観光公害が大きく取り沙汰されるようになった今だからこそ、しっかりと意識しておく必要があると思う。
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ここに参加するようになって、読書の幅が広がったように思います。
それでも、まだ偏り気味。
いろんな人の書評を参考に、もっと幅広い読書を楽しみたい!
この書評へのコメント

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- ISBN:B0F3CD9R4L
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