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ぷるーと
レビュアー:
自分のおくびょうさを痛感している名闘牛士の息子の葛藤。
岩波少年文庫100冊マラソン54冊目。

マノロの父親は、スペインのアルカンヘルの町の伝説となった名闘牛士だった。ジプシーの予言通り12才で闘牛士となり、どんな牛をも怖れず、巧みに牛を操り、町の人々を熱狂させた。

そんな父親を、マノロは実際にはよく覚えてはいなかった。何しろ、父親は22才のとき、牛に刺されて死んでしまったからだ。そのとき、マノロはまだ3才だった。

マノロは、伝説的な闘牛士の息子として、ずっと人々に注目されていた。父親が亡くなってからというもの町には人々を熱狂させるような闘牛士は現れなかったため、闘牛ファンの期待はいやでもマノロにかかってきた。マノロは、まだ幼い頃から、父親と同じように名闘牛士となるもの、と決めつけられていた。

だが、マノロは、自分が臆病で勇気がないことを知っていた。それでも、自分に期待してくれる人たちを裏切りたくはなかった。闘牛の練習をしているうちに、もしかしたら闘牛士としてやっていけるかもと淡い期待を抱き、また、全然ダメだと絶望的になったりした。

そんなある日、闘牛を見学していたマノロは牛に突かれて怪我をした闘牛士の手当をする老医者を手伝うことになった。手伝いながら、マノロは、自分が闘牛士になると決められていなかったら医者になりたい、と思った。

自分の悩みを打ち明けようと思っても、母親も祖母も、彼が何を考えているかなど聞いてもくれない。まして他の人々は、である。マノロは、自分の気持ちを誰にも打ち明けられずにいた。
そんなマノロと対照的なのが、マノロの友人の兄フアンだった。フアンには才能もあり、自分が闘牛士になることしか考えていなかった。

自分がやりたいことがはっきりしていてそれに向かって努力している者と、自分が何をしたらいいか分からずにいる者。本人は分からないで苦しんでいるのに、こうなるべきと決めつけられて。

マノロは、自分は闘牛士にはむいていないとはっきり打ち明けることができた。そんなマノロを受け止めてくれる大人がいた。
だが、そうではない、そうできない子どもがあまりにも多いのだ。悲しいことに。
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ぷるーと
ぷるーと さん本が好き!1級(書評数:2943 件)

 ホラー以外は、何でも読みます。みなさんの書評を読むのも楽しみです。
 よろしくお願いします。
 

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