DBさん
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ドルイドの真実に迫る本
ケルトの話に必ず出てくるのがドルイドですが、そのイメージは古典の中に登場するドルイドと、近世以降に創作されたドルイドとが重なって作られたものだ。
実際にドルイドとはどのような存在だったのか、宗教学、図像学、そして民族誌の三つの視点からドルイドについて解き明かしていく本です。
ドルイドについて知ることができるのは、同時代のローマ人が書き残した資料を通してのみである。
そのためローマ人というフィルターを通してしかドルイドを見ることはできないそうだ。
ローマ人はドルイドのことを「神官」ととらえていたが、ローマ人にとって神官は宗教儀式の儀礼を執り行う人だった。
そのためローマでは貴族の公職のひとつとして神官職があり、神と人という隔たった世界を仲介する役割を果たしていた。
だがドルイドの儀礼を見ていくと、神と人の「仲介」ではなく、自然の奥に隠された存在を「開示」するために儀式を行う。
最も重要な儀式は神聖視していた樫の木に寄生した宿り木を周期的に切り取るというものであり、切り取られた宿り木には人間や雌の動物を孕ませる力があるとされていた。
自然の中に備わる神秘的で人間を超越した力を引き出すのがドルイドであり、彼らの持つ知恵は口伝により代々伝えられていった。
ドルイドの行う人身供犠の儀礼もローマ人には理解できないもので徹底的に廃止させたが、剣闘士や猛獣に人を殺させて楽しむ人間が宗教的な殺人は許せないというのも興味深い。
人身供犠の方法は短剣で心臓を一突きにする、弓矢で射殺する、神域で串刺しにする、藁や木、細枝で編んだ巨像の中に人間を詰め込んで焼く、水を満たした釜に突っ込んで窒息させるなど様々だった。
この時にドルイドはその火の燃え方や血の流れ方、倒れる方向を見て未来を予言したという。
ケルトの中では父と母と子という三位一体があり、キリスト教の中では父と子と聖霊という三位一体によく似ているが根源的には全く違うものであるという話も出てきます。
またストーンヘンジが「ボウディッカの墓」であるという説や、ドルイドの神殿であると考えられていた時代もあったそうです。
近世に入って文学の中に登場するドルイドによってそのイメージが変遷していく様子は、ゲーテ、ハイネ、マイヤーといったドイツ・スイス文学、スタンダール、ルナン、ネルヴァル、リラダン、ランボーといったフランス文学、そしてイングランドのブレイク、アーノルド、ハーディーやスコットランドのバーンズとマクラウド、アイルランドのハーン、グレゴリー夫人、ワイルド、イェイツ、シング、ジョイスといった文学者の作品を通してみていきます。
神秘の森の奥深くに隠されたドルイドの姿を垣間見るような本だった。
実際にドルイドとはどのような存在だったのか、宗教学、図像学、そして民族誌の三つの視点からドルイドについて解き明かしていく本です。
ドルイドについて知ることができるのは、同時代のローマ人が書き残した資料を通してのみである。
そのためローマ人というフィルターを通してしかドルイドを見ることはできないそうだ。
ローマ人はドルイドのことを「神官」ととらえていたが、ローマ人にとって神官は宗教儀式の儀礼を執り行う人だった。
そのためローマでは貴族の公職のひとつとして神官職があり、神と人という隔たった世界を仲介する役割を果たしていた。
だがドルイドの儀礼を見ていくと、神と人の「仲介」ではなく、自然の奥に隠された存在を「開示」するために儀式を行う。
最も重要な儀式は神聖視していた樫の木に寄生した宿り木を周期的に切り取るというものであり、切り取られた宿り木には人間や雌の動物を孕ませる力があるとされていた。
自然の中に備わる神秘的で人間を超越した力を引き出すのがドルイドであり、彼らの持つ知恵は口伝により代々伝えられていった。
ドルイドの行う人身供犠の儀礼もローマ人には理解できないもので徹底的に廃止させたが、剣闘士や猛獣に人を殺させて楽しむ人間が宗教的な殺人は許せないというのも興味深い。
人身供犠の方法は短剣で心臓を一突きにする、弓矢で射殺する、神域で串刺しにする、藁や木、細枝で編んだ巨像の中に人間を詰め込んで焼く、水を満たした釜に突っ込んで窒息させるなど様々だった。
この時にドルイドはその火の燃え方や血の流れ方、倒れる方向を見て未来を予言したという。
ケルトの中では父と母と子という三位一体があり、キリスト教の中では父と子と聖霊という三位一体によく似ているが根源的には全く違うものであるという話も出てきます。
またストーンヘンジが「ボウディッカの墓」であるという説や、ドルイドの神殿であると考えられていた時代もあったそうです。
近世に入って文学の中に登場するドルイドによってそのイメージが変遷していく様子は、ゲーテ、ハイネ、マイヤーといったドイツ・スイス文学、スタンダール、ルナン、ネルヴァル、リラダン、ランボーといったフランス文学、そしてイングランドのブレイク、アーノルド、ハーディーやスコットランドのバーンズとマクラウド、アイルランドのハーン、グレゴリー夫人、ワイルド、イェイツ、シング、ジョイスといった文学者の作品を通してみていきます。
神秘の森の奥深くに隠されたドルイドの姿を垣間見るような本だった。
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好きなジャンルは歴史、幻想、SF、科学です。あまり読まないのは恋愛物と流行り物。興味がないのはハウツー本と経済書。読んだ本を自分の好みというフィルターにかけて紹介していきますので、どうぞよろしくお願いします。
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- 出版社:岩波書店
- ページ数:0
- ISBN:9784000006453
- 発売日:1997年12月19日
- 価格:299円
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