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ぱせりさん
ぱせり
レビュアー:
『せむしのこうま』というタイトルのほうが有名かもしれない、詩物語
岩波少年文庫100冊マラソン18冊目


「いくつもいくつも 山をこえ
 いくつもいくつも 森をこえ」
と始まるこの物語は、もともと韻文で綴られた詩物語。訳も七五調でリズミカルだ。
『せむしのこうま』というタイトルのほうが有名かもしれない。


三人兄弟の末っ子の、愚かで怠け者のイワンが、不思議な力を持った賢い小馬の力を借りて、小狡い兄たちや横暴な王様に課せられた無理難題に挑み、冒険のたびごとに、ちょっとずつ偉くなっていく。最後はついに王様になり、美しいお姫様をお妃に迎える大団円が待っている。


イワンの数々の冒険の一部をあげるなら
「しゅびよく 火の鳥 とらえたはなし
 ひめさま さらってきたはなし
 ゆびわさがしの たびのこと
 お空のくにに つかわされたこと
 お日さま村で クジラのゆるしをこうたこと
 また かずある 手がらの なかでも
 三十そうの船を すくったはなし……」
などなど、どれも、小馬の知恵のもと、謎の荷物の準備から始まり、その方法や顛末にわくわくする。
訳者はあとがきのなかで、イワンと小馬の関係を、のびたとドラえもんに喩えていて、笑ってしまった。その通りではないか、と思って。イワンは泣いてばかり、小馬に助けを乞うばかり。小馬の冒険といったほうがいいほどだ。


三兄弟(姉妹)の末っ子が活躍する民話は、たくさんあるけれど、たいてい末っ子が一番の人格者であったりするではないか(それがために上の二人に邪険にされる)
だけど、『イワンのばか』(トルストイ)にしても、この物語『イワンとふしぎなこうま』にしても、末っ子(そろって名はイワン)はほんとうに愚か者。ことにこの物語のイワンはひどい。
そういえば、小馬も末っ子だ。上の兄たち二頭は見目うるわしき名馬であるが、末の小馬は玩具みたいに小さくて、背中に二つも瘤がある。
他所からはあまりその価値を認められない、末っ子同志の冒険なのだ。認められなくても、小馬の素晴らしさをイワンはよく知っている。小馬も、わたしなどにはわからないイワンを理解しているのだろう。……たぶん。

 
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ぱせり
ぱせり さん本が好き!免許皆伝(書評数:1742 件)

いつまでも読み切れない沢山の本が手の届くところにありますように。
ただたのしみのために本を読める日々でありますように。

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