書評でつながる読書コミュニティ
  1. ページ目
詳細検索
タイトル
著者
出版社
ISBN
  • ログイン
無料会員登録

三太郎さん
三太郎
レビュアー:
最新の考古学の成果から縄文人の暮らしぶりが伺えるようだ。
岩波ジュニア新書として昨年出た本です。縄文時代の考古学の最近の成果が読めると思い図書館で借りてきました。読者として中学生くらいを想定しているようで専門知識なしで読めます。

4名の著者の合作で、阿部さんが土器による塩作りと土偶について、米田さんが縄文人の食生活について、樋泉さんが貝塚について、佐々木さんが縄文人の植物の利用について分担しています。

土器は食料の煮炊きに使われましたが、普通の鍋程度のサイズの縄目模様が見事な精製土器と、一斗缶くらいの容積がありそうな粗製土器の違いがあります。粗製土器は博物館ではあまり見ませんが表面の模様も殆どありません。これは何かを大量に煮炊きするのに使ったのでしょうね。

実は土器は縄文時代が始まる前の旧石器時代からわずかながら作られていたとか。土器からは魚など動物性の油脂が検出されました。どんぐりなどの植物質の煮炊きは縄文時代に入ってからの特徴らしいです。この土器の表面にこびり付いたオコゲの化学分析が進み、縄文人がどんな物を煮炊きしていたか判ってきたとか。海の近くの遺跡では海産物が多く、山の中の遺跡では植物が多く煮炊きされたようです。

縄文人の人骨の同位体分析からも食べ物が推測されますが、北海道では海の動物や魚が中心で、本州とは異なった特徴があるとか。

本州では植物質が多く食べられましたが、東日本では栗が、西日本ではカシの仲間のどんぐりが主に食べられたとか。食生活でも縄文時代から東西の違いはあったようです。なおクルミは東西どちらでも好んで食べられており、日本人のクルミ好きは縄文時代からのものかも。

縄文時代から藻塩を焼いて塩を作っていたことも遺跡の灰の分析から明らかになってきました。和歌の世界と縄文の世界にはつながりがあったようです。

遺跡からは植物で編んだ遺物が見つかりますが、今に伝わる様々な編み方が縄文時代には既にあったとか。

この本の著者らは考古学が専門なので、最新のDNAの分析結果など自然人類学の成果は残念ながら反映されていませんが、縄文人の暮らしぶりがよく解る内容となっています。
お気に入り度:本の評価ポイント本の評価ポイント本の評価ポイント
掲載日:
外部ブログURLが設定されていません
投票する
投票するには、ログインしてください。
三太郎
三太郎 さん本が好き!1級(書評数:829 件)

1957年、仙台に生まれ、結婚後10年間世田谷に住み、その後20余年横浜に住み、現在は仙台在住。本を読んで、思ったことあれこれを書いていきます。

長年、化学メーカーの研究者でした。2019年から滋賀県で大学の教員になりましたが、2023年3月に退職し、10月からは故郷の仙台に戻りました。プロフィールの写真は還暦前に米国ピッツバーグの岡の上で撮ったものです。

参考になる:32票
あなたの感想は?
投票するには、ログインしてください。

この書評へのコメント

  1. かもめ通信2025-03-31 05:24

    図書新聞掲載おめでとうございます。
    実はこのレビュー読み逃していて、図書新聞のHPをみて飛んできましたw

  2. 三太郎2025-03-31 10:35

    かもめさんに教えてもらってびっくりしました。掲載されても何の連絡もないのですね。大昔に紙媒体の図書新聞に一度載ったことがありましたが、その時は事前に連絡をもらったのですが。

  3. かもめ通信2025-03-31 12:13

    掲載紙は送られて来ると思いますよ。

  4. 三太郎2025-04-04 13:33

    図書新聞が届きました。選評を読んで口があんぐり。新書くらい図書館で借りずに買ってほしいというものでした。

    もっともな意見かも知れませんが、中高生向けの岩波ジュニア新書が新刊の棚に載っているタイミングで僕が書店に行けるかどうかですね。出たばかりの新書はもちろん本屋さんで購入しますが、一年近く前に出た本の場合は図書館のYA向けの書架で出会ったのが幸運だったという気がします。たまにしか町の書店には行けないし。

  5. かもめ通信2025-04-04 15:02

    それはびっくり!HPでは選評が読めなかったので(*゚Д゚)

  6. No Image

    コメントするには、ログインしてください。

書評一覧を取得中。。。
  • あなた
  • この書籍の平均
  • この書評

※ログインすると、あなたとこの書評の位置関係がわかります。

『縄文時代を解き明かす──考古学の新たな挑戦105』のカテゴリ

登録されているカテゴリはありません。

フォローする

話題の書評
最新の献本
ページトップへ