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星落秋風五丈原
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氾濫体が示唆するものとは何か
 近未来。地上は氾濫体と呼ばれる謎の生物が支配しており、人々は地下都市に暮らしていた。そのうちの一人、テリンは、もはや人が住めなくなった地上へ行くことを切望していた。そのためには、派遣者に選ばれることが必須条件だ。地上の素晴らしい夕焼けの美しさや夜空を横切る星の輝きを教えてくれた師匠のイゼフのためにも頑張っていたタリンは試験の直前、不思議な幻聴を体験する。自分の体の中の何かが話しかけてきたのだ。

 自分の中に敵と見做すべき存在がいる。本来なら排除すべきだが、どうもそんな悪人に見えない。むしろ自分に対して優しい。それでも、社会全般の判断に倣って自分の中の他者を排除すべきか?

 これ、わかりやすく、自分と異なる他者に対する扱いなら瞬時に判断が下せたはずだ。排除する、近づかない。しかし、自分の中になぜか異分子が存在して、分離する方法はあるが、もし行ったら自分の一部を失うことになるのでは?という危惧を抱く。

 ということで、テーマはわかりやすく、異分子との接し方である。多文化共生と、世の中は謳ってはいるものの、一方で宗教や土地を巡り異質な存在を排除する動きも後を絶たない。キム・チョヨプは共生を選ぶ。そのために主人公は、しばしば悲劇に遭遇する。

 愛する人に殉じるキャラクターが登場するということで、何度も述べているが、やはりジェイムズ・ティプトリー・ジュニアみを感じる。

キム・チョヨプ作品
わたしたちが光の速さで進めないなら
地球の果ての温室で
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星落秋風五丈原
星落秋風五丈原 さん本が好き!1級(書評数:2327 件)

2005年より書評業。外国人向け情報誌の編集&翻訳、論文添削をしています。生きていく上で大切なことを教えてくれた本、懐かしい思い出と共にある本、これからも様々な本と出会えればと思います。

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