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かもめ通信
レビュアー:
「6月」ときいて思い浮かべる作品は? #12か月の本
“ひと月”をテーマに古今東西の文学作品を集めた国書刊行会のアンソロジー“12か月の本”。
『5月の本』に続いて、『6月の本』も読んでみた。
12か月を通じて編者は作家で翻訳家の西崎憲氏。
国書刊行会らしい布張り箔押しで水や脂に強く耐久性のあるクロス装という高級感のある装丁も同様だ。

まずは収録作品を確認すべく、じっくり目次を眺めて

  どこかに美しい村はないか

「6月」ときけば、真っ先に思い浮かべる茨木のり子の詩が収録されていることにホッとする。

続いて気づいたのは、前回はタイトルに「5月」と入っている作品が多かったが、茨木のり子の「六月」と北原白秋の「六月の花」のみだということ。

堀辰雄の「雨後」は日記風。
私があの病気に取り憑かれたのは、何でも六月の初め木屋町に宿泊して、毎日のように飲食と夜更かしを続けて居た前後であった。谷崎潤一郎の「恐怖」はこれいろんな意味でかなりヤバい。
中野重治の「司書の死」のように重たいが読み応えのある短篇もあれば、中谷宇吉郎の「霧を消す話」などとってもらしい作品も。


翻訳ものは6作品。
ヴワディスワフ・レイモント(金子佳代訳)の「ポーランドの春」が描き出す情景には心惹かれるが、マーク・トウェイン(柴田元幸訳)の「ワシントン将軍の黒人従者」にはえらく戸惑った。
ユーモアを交えた皮肉なのだろうとは思いつつ、実際のジョージ・ワシントンが自分の入れ歯に所有する奴隷の歯を使ったいう話まであるくらいの人物であることを思い浮かべると、ユーモアどころかものすごく強烈な批判のようにも思われて鳥肌が立つほどゾクゾクする。これはちょっとマーク・トウェイン、その思想的背景も含めて一度ちゃんと読んでみないと。

安部公房、岡本かの子、ランボー、宮本百合子、遠藤周作等々全部で26作、
詩ありエッセイあり、小説あり、どこから読んでもいい1冊。

ただその中に、書かれた時代を考えるとあり得る設定だと解りはするが、今の時代に新しく編むアンソロジーにわざわざこれを入れる意図を図りかねた作品があったことはメモしておきたい。
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かもめ通信
かもめ通信 さん本が好き!免許皆伝(書評数:2238 件)

本も食べ物も後味の悪くないものが好きです。気に入ると何度でも同じ本を読みますが、読まず嫌いも多いかも。2020.10.1からサイト献本書評以外は原則★なし(超絶お気に入り本のみ5つ★を表示)で投稿しています。

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この書評へのコメント

  1. かもめ通信2025-06-23 05:25

    このシリーズ、装丁もきれいなので、読んだ後は誕生月の親族にプレゼントすることにしていて、5月は父方の叔母に、6月は母方の叔母の元に。
    ちなみに次は8月、義弟の元に送りつけられる予定ですw

  2. ef2025-06-23 05:33

    私は7月生まれですっ!

  3. かもめ通信2025-06-23 05:43

    じゃあefさん、お誕生日記念に7月のレビューお願いしますw

  4. ef2025-06-23 06:27

    (゚▽゚;)

  5. だまし売りNo2025-06-29 15:32

    私は6月といえば相沢沙呼『雨の降る日は学校に行かない』です。

  6. かもめ通信2025-06-29 16:29

    『雨の降る日は学校に行かない』このタイトル、すごく好きです!
    実を言うと、タイトルが好きすぎて、本はまだ読んでいないのですが(^^ゞ

  7. だまし売りNo2025-07-01 20:28

    「タイトルが好きすぎて、本はまだ読んでいない」は古典SFなどにもよくあります。

  8. かもめ通信2025-07-01 20:43

    好きなタイトルを紹介し合うコミュニティなんかも面白そうですが、
    お互いの積読が増えるだけかしら?(^^ゞ

  9. No Image

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