くにたちきちさん
レビュアー:
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「古き良きアメリカ」を取り戻すべく、さまざまなマイノリティを描いた絵本が、保守派の人々によって、禁書され続けているのだそうです。年間4千冊が図書館から消されているというのは、どの分野のどんな本なのか?
この本の内容は次の通りです。それは、禁書の対象になっている分野です。( )内は主な項目です。
第一章 黒人(1619 Project:奴隷とされたアフリカ人がアメリカに到着した年、黒人の髪や肌の絵本)
第二章 LGBTQ(ママ、もしくはパパが二人、動物が主人公、トランスジェンダーの絵本、まるはだかの本)
第三章 女性(職場で戦う女性たち、ガールパワー、アフガニスタンの女の子)
第四章 障害(バリアフリーを勝ちとった脳性麻痺の少女、障害との向き合い方を伝える絵本)
第五章 ラティーノ/ヒスパニック(人口の19%、ラテン・アメリカ諸国出身者/スペイン語話者とその子孫:移民の子供たち、バイリンガル絵本)
第六章 アジア系(7.5%、正しく呼ばれない名前、アジア系の美しい目、複合的なマイノリティ、日系人強制収容所)
第七章 イスラム教徒(1%、出自は中東、北アフリカ、南アジア:イスラム難民、アラビア語・ヒジャブ・ラマダン)
第八章 アメリカ先住民(2%、アメリカ・インディアンとアラスカ先住民:石油パイプラインに汚される土地、子どもを番号で呼ぶ学校、政府に左右されてきた居住地)
このような禁書を推進するグループは「親の権利」というフレーズを多用するそうです。自分の子どもが何を学ぶかは政府や学校ではなく、親に決定権があるとする主張で、コロナ禍にマスク着用および学校閉鎖への反対派が使い始めたものだったようであり、学校でどのような教材が使われているかに関心を持つようになったと言われています。
同じ時期に、第1章冒頭の2019年に発表した「1619年プロジェクト」が議論を巻き起こしていました、これは、奴隷制から始まるアメリカ黒人史を、高校のカリキュラムに取り入れたことに対して、保守派が猛烈に反発し、こうした流れから、禁書推進グループは黒人史をテーマとする本をターゲットにしたそうです。
その後、LGBTQを取り上げた本などが対象となり、この運動が親だけでなく、アメリカの保守化を目指す共和党の政治家によって急激に推進されているのが現状なのだそうです。この本では、敢えて絵本にフォーカスして、詳しく検証したと筆者は「はじめに」で述べています。
第6章に「日系人強制収容所」に暮らした日系アメリカ人を主人公とした物語「Love in the Library(図書館の愛)」(2023年)のエピソードを紹介しています。それは、この本を全米の学校への配布を行っている大手出版社がライセンスを得ようとした際に、「あとがき」の変更を求めてきたそうです。
「あとがき」には「強制収容所は人種差別であり、それはトランプ政権下で行われた、米国南部国境での難民の子どもたちの「檻」への収容(中略)アメリカ先住民を居留区に押し込めたことと同じものである」などと訴えていたのですが、著者は変更を拒否したため、この企画は中止されたそうです。このことは、「自粛」の一つのかたちではないかと、筆者は指摘しています。考えさせられる事柄です。
第一章 黒人(1619 Project:奴隷とされたアフリカ人がアメリカに到着した年、黒人の髪や肌の絵本)
第二章 LGBTQ(ママ、もしくはパパが二人、動物が主人公、トランスジェンダーの絵本、まるはだかの本)
第三章 女性(職場で戦う女性たち、ガールパワー、アフガニスタンの女の子)
第四章 障害(バリアフリーを勝ちとった脳性麻痺の少女、障害との向き合い方を伝える絵本)
第五章 ラティーノ/ヒスパニック(人口の19%、ラテン・アメリカ諸国出身者/スペイン語話者とその子孫:移民の子供たち、バイリンガル絵本)
第六章 アジア系(7.5%、正しく呼ばれない名前、アジア系の美しい目、複合的なマイノリティ、日系人強制収容所)
第七章 イスラム教徒(1%、出自は中東、北アフリカ、南アジア:イスラム難民、アラビア語・ヒジャブ・ラマダン)
第八章 アメリカ先住民(2%、アメリカ・インディアンとアラスカ先住民:石油パイプラインに汚される土地、子どもを番号で呼ぶ学校、政府に左右されてきた居住地)
このような禁書を推進するグループは「親の権利」というフレーズを多用するそうです。自分の子どもが何を学ぶかは政府や学校ではなく、親に決定権があるとする主張で、コロナ禍にマスク着用および学校閉鎖への反対派が使い始めたものだったようであり、学校でどのような教材が使われているかに関心を持つようになったと言われています。
同じ時期に、第1章冒頭の2019年に発表した「1619年プロジェクト」が議論を巻き起こしていました、これは、奴隷制から始まるアメリカ黒人史を、高校のカリキュラムに取り入れたことに対して、保守派が猛烈に反発し、こうした流れから、禁書推進グループは黒人史をテーマとする本をターゲットにしたそうです。
その後、LGBTQを取り上げた本などが対象となり、この運動が親だけでなく、アメリカの保守化を目指す共和党の政治家によって急激に推進されているのが現状なのだそうです。この本では、敢えて絵本にフォーカスして、詳しく検証したと筆者は「はじめに」で述べています。
第6章に「日系人強制収容所」に暮らした日系アメリカ人を主人公とした物語「Love in the Library(図書館の愛)」(2023年)のエピソードを紹介しています。それは、この本を全米の学校への配布を行っている大手出版社がライセンスを得ようとした際に、「あとがき」の変更を求めてきたそうです。
「あとがき」には「強制収容所は人種差別であり、それはトランプ政権下で行われた、米国南部国境での難民の子どもたちの「檻」への収容(中略)アメリカ先住民を居留区に押し込めたことと同じものである」などと訴えていたのですが、著者は変更を拒否したため、この企画は中止されたそうです。このことは、「自粛」の一つのかたちではないかと、筆者は指摘しています。考えさせられる事柄です。
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後期高齢者の立場から読んだ本を取り上げます。主な興味は、保健・医療・介護の分野ですが、他の分野も少しは読みます。でも、寄る年波には勝てず、スローペースです。画像は、誕生月の花「紫陽花」で、「七変化」ともいいます。ようやく、700冊を達成しました。
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- 出版社:太田出版
- ページ数:0
- ISBN:9784778340117
- 発売日:2025年01月28日
- 価格:2970円
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