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たけぞう
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2024年発行の新訳。底本もいいみたい。
子どもの頃の読書は偏っていて、わたしはホームズなどの冒険的な小説を好んで読んでいました。当時は男の子向けと女の子向けという区分があちこちにあったのです。服の色が青かピンクかに始まり、TV番組やマンガなど、趣味的なものを中心に多岐にわたっていました。学校教育でも、技術と家庭科で分かれていた時代です。もちろん、男女の特性に合わせた区分けは現代でもゆるやかに残っていますが、当時はそれこそ自分の性別向きじゃない方に興味を示すこと自体、恥ずかしいことみたいな雰囲気がありました。いま考えると、なんと愚かで、日本的な古くさい価値観だったことが分かります。

そんなわけで、わたしには読み逃している名作がたくさんあるのです。若草物語のその一つです。読み終えて、なんともったいないことをしていたのだと思いました。素晴らしい作品です。もし共感していただけましたら、どうぞお読み下さい。児童文学ですが、読むのに遅すぎるなんてことはありませんでした。それこそ名作たるゆえんだと思います。

原題は、Little Womenです。四人姉妹が仲よく助け合いながら、時には喧嘩をしつつ、毎日を過ごしていくお話です。長女が十七才なので、まさしくLittle Womenたちです。お父さんが戦争に志願し、家にはお母さんと家政婦、それに四姉妹で暮らしています。

主人公はジョー。ジョゼフィーンの愛称ですが、男の子でも使われるものと同じですから、とても活発で、実際に男の子に生まれたかったなんて思っている人なのです。レディなんてまっぴらごめん、走ったり馬に乗ったりが好きなのです。でも、本も大好きなんですね。ひょっとしたら、本という知的な探求は、当時は男の子向けだったのかもしれません。本好きが高じて短篇小説を書いたりもします。つまり、そう、ジョーは著者の経験が色濃く反映されているのですね。

本著は、半自叙伝的小説と評されます。Webで調べると、実際の四姉妹が本作品のエピソードとつながっている感じがしました。だから、なんてことのない日常の小説とも言えるし、人間的な温かみを肌で感じられる作品とも言えるのです。

最も魅力的な点は、四人姉妹の住むマーチ家が、当時では革新的な考えをする人たちだということでしょう。アメリカの南北戦争の時代です。著者の父母はともに革新的思想を持ち、黒人奴隷の開放や女性の地位向上に向けて活動していたそうです。その影響が色濃く現れています。

もちろん、魅力はそれだけではありません。わたしは、第八章の「ジョー、破壊王アポリオンに出会う」と、第九章の「メグ、虚栄の市に行く」が特に印象的でした。物語の根底に、素晴らしい人間とはどんな人なのかという価値観があり、自分がいかに足りていないかを意識させられる章でした。

百年以上も読み継がれているには理由がありました。貧乏の中にある温かさは、日本で言えば人情物語ですが、舞台がアメリカとなるといろいろと雰囲気が違って面白いです。温かい気持ちになれる一冊です。
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たけぞう
たけぞう さん本が好き!免許皆伝(書評数:1468 件)

ふとしたことで始めた書評書き。読んだ感覚が違うことを知るのは、とても大事だと思うようになりました。本が好き! の場と、参加している皆さんのおかげです。
星の数は自分のお気に入り度で、趣味や主観に基づいています。たとえ自分の趣味に合わなくても、作品の特徴を書評で分かるようにしようと務めています。星が低くても作品がつまらないという意味ではありません。

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