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たけぞう
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ノストラダムス。オウム真理教。コロナ。
これでもかというくらい、愚かな思考を読み続ける小説です。わたしには苦痛でした。でも、だからといって駄目な本とは思いません。考えれば考えるほどその結論に行きつきます。

自分の考えとの共通点は、思い当たるところがありません。まったく共感できなくて、あまりの愚かさに不快になりました。違う、自分はそうではないと叫びたいから嫌になったのでしょう。でも、立ち止まって考える必要があるかもしれません。そんなにも嫌な感情が出るということは、自分の中にも排他的で手前勝手の理屈があることを、本能的に感じ取っているのかもしれません。不快な読後感がありますが、文章はとても魅力的です。著者は理性では御しきれない人間の本能に興味があるのではと思いました。

人間社会の負の一面を、自然に切り取っています。著者の高い観察力が伝わってきます。説得力が高いのに、煽ってくる感じや圧迫的な決めつけは微塵もありません。これほど書ける作家さんは、あまりいないと思います。だから作品によってはがっつりはまるので、当たり外れは大きくても、つい読んでしまうのです。

ノストラダムスの大予言って覚えていますか? なんであんなものが広まったのか、昔から不思議でした。ちっとも信じられないのに、噂はとうとう地球滅亡の日まで消えませんでした。きっと人間の本能には、不安感というリスク回避の回路があって、完全に無視することはできないのかもしれません。

オウム真理教の事件では、幹部の中に超高学歴の人が何人も混ざっていたことが話題になりました。賢さとはなんだろうという気持ちにさせられました。しかし、賢さとリスク回避の本能は、本質的には独立して両立するのだろうと、この本を読んであらためて思いました。勉強ができることと、判断能力は本質的に別のものです。

最後に、コロナの時のワクチン騒動です。さすがに、気分の悪い時事ネタばかりで辟易してしまいました。たしかに、ノストラダムスも、オウム真理教も、コロナのワクチンも、思うところはあります。そして一部の人が、いまのSNSでバズるような突飛な理屈に食いついて、自己保身に走るのをわたしはいつも嫌な気持ちで見ていました。わたしは何の迷いもなくコロナのワクチンを受けました。でも、会社には3回目はパスとか、こんなデータがあるしとか、本気で言っている人が複数いたというのも事実です。

思い出すだけで不快な気持ちになる社会問題。3.11の地震の直後、突如ガソリンスタンドの前に出現した長蛇の車の列とか、一人で買い物かごいっぱいの、おそらく30個はあろうかという納豆の買い占めをしていた高齢者の顔を、わたしは何年もたったいまでもはっきりと思い出せます。そんな、人間の愚かさをえぐってくる作品です。
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たけぞう
たけぞう さん本が好き!免許皆伝(書評数:1471 件)

ふとしたことで始めた書評書き。読んだ感覚が違うことを知るのは、とても大事だと思うようになりました。本が好き! の場と、参加している皆さんのおかげです。
星の数は自分のお気に入り度で、趣味や主観に基づいています。たとえ自分の趣味に合わなくても、作品の特徴を書評で分かるようにしようと務めています。星が低くても作品がつまらないという意味ではありません。

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