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三太郎さん
三太郎
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哲学書のような小説。あるいは小説のような哲学書かな。
哲学に関する本だとか。しかし翻訳者は柴田元幸さんだから、やはり小説ではないかと思い、古書店で購入しました。1991年に出されているから古い本ではあります。古書の通販サイトで検索すると1000円以上の値がついていますが、僕は300円で買えました。

この本はフランスの哲学者マンソンジュ氏の唯一の著書の性行為に関する考察を紹介するという体裁をとっています。マンソンジュ氏はブルガリアからパリにやってきた哲学者だということですが、名前からして実在が疑わしい。なにしろマンソンジュとはフランス語では嘘を意味するのですから。

で、この本の作者はイギリスの大学教授で小説家なので、こちらは実在の人物らしい。

内容はというと、残念ながら僕にはよくわからないのだけれど、戦後のフランスの読書会で大流行した構造主義とその後のポスト構造主義を批評する、というか真面目なふりをして読者をおちょくっているような本でした。

構造主義についてはレヴィ=ストロースは別にして、ロラン・バルトやジャック・デリダなどという名前が出てくると僕では歯が立ちません。ところがマンソンジュはそのバルトらに先立って構造主義とポスト構造主義を同時に提示したというのです。

マンソンジュの主張を、断片だけですが、読んでいると、構造主義というより言語の限界について語ったヴィトゲンシュタインに似ているような気がします。ただし不真面目で冗談好きのヴィトゲンシュタインかな。

この本にはパリ大学の教授による後書き(たぶん著者の創作)がついていて、それによるとこの本は真面目な話題の後にかならず無関係な食べ物の話題を差しはさむのが特徴ですが、これは食べ物が排せつ行為を連想させることから、かつてミハエル・バフーチンが「フランソワ・ラブレー」で書いたように下半身ネタを利用した社会批評なのだということです。それならマンソンジュが性行為について書いたのも同じ趣旨だということになります。もしかしたらこの本はバルトやデリダとは何の関係もないのかもしれませんね。

最後に「ガルガンチュア物語」の作者であるラブレーの名前が出てきたのは嬉しかったです。先日読んだばかりでしたから。ミハエル・バフーチンの「フランソワ・ラブレー」も実は積読本の山にあるので、そのうち読もうと思います。
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三太郎
三太郎 さん本が好き!1級(書評数:829 件)

1957年、仙台に生まれ、結婚後10年間世田谷に住み、その後20余年横浜に住み、現在は仙台在住。本を読んで、思ったことあれこれを書いていきます。

長年、化学メーカーの研究者でした。2019年から滋賀県で大学の教員になりましたが、2023年3月に退職し、10月からは故郷の仙台に戻りました。プロフィールの写真は還暦前に米国ピッツバーグの岡の上で撮ったものです。

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