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morimoriさん
morimori
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宿縁で繋がった8人の犬士が悪や妖異と戦う八犬伝の世界と、執筆中の馬琴が北斎に語る実の世界。
 八犬伝と言えば、8つの珠忠、孝、信、悌、仁、義、礼、智をそれぞれ持つ犬士たちが宿縁で繋がり、悪や妖異と戦いをくり広げる物語だが、この作品は、八犬伝の虚の世界と馬琴が作品について語り、北斎が絵を描く実の世界とで構成されている。つい先日「八犬伝」の映画を観たので、この本を手に取ったが、原作を読んでいると映画のシーンが思い出されるほど忠実に描かれていた。

 おもしろいのは、融通の利かない馬琴の性格と正反対の北斎しかし、馬琴は北斎を認めているし北斎も馬琴の指摘しながらも作品のおもしろさを認めている。馬琴は、嫡男の鎮五郎をどこかの大名のおかかえ医師にしたいと思いつつも、チャンスを逃してしまう。そんな馬琴を妻のお百ががみがみののしる描写は、映画を観ていても愉快だった。

 映画は上映時間が約2時間だが、八犬伝は10年以上の歳月をかけての作品らしい。虚の世界で緊張感あふれる描写にハラハラしていると、実の世界で北斎が馬琴にツッコミを入れつつ感想を話すのは、読み手に代わって北斎が代弁してくれているかのようだ。この時代まだ、日本には鉄砲はないでしょう?と思ったところに北斎のツッコミ。それに対して馬琴は、虚の世界だからかまわないという。虚の世界では、残酷なくらい人が殺されてしまうが、それも構成上仕方がないらしい。

 小説八犬伝はおもしろい。そして、馬琴と北斎の会話は同じくらいおもしろい。融通の利かない頑固な馬琴が八犬伝というファンタジーを作り上げるギャップが、また良い。映画では、8人の犬士が出会いそれぞれ珠や牡丹の痣を見つけるシーンがサラッと描かれていたが、小説では8人それぞれの物語が丁寧に描かれており人物の魅力がより伝わり説得力もある。

 これから読む下巻が楽しみだが、八犬伝完成後、馬琴と北斎はいくつになっているのだろう。小説では、北斎の娘むこの絵師柳川重信が八犬伝の挿絵を描いている。北斎は、挿絵を描くのか否かそれも気になるところだ。

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morimori
morimori さん本が好き!1級(書評数:951 件)

多くの人のレビューを拝見して、読書の幅が広がっていくのが楽しみです。感動した本、おもしろかった本をレビューを通して伝えることができればと思っています。

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