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三太郎さん
三太郎
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親族に続々と認知症の患者が出てきて、認知症について調べてみたくなった。そうしたら以前購入した新書が引っ越しの荷物から現れました!
1992年刊行ですからもう30年以上前の本です。認知症という言葉はなくて、まだ痴呆とかボケとか呼ばれている時代です。でもアルツハイマー型認知症については原因究明の機運が高まっていて、既に認知症と脳内へのアミロイドβ(この本ではβアミロイドと記載)やタウというたんぱく質の蓄積との関係が知られていました。

アミロイドβは分子量の小さなタンパク質で、元になる分子量の大きいタンパク質が分解されるときに発生することが知られていましたが、これが本当にアルツハイマー型認知症の原因だとはこの本でも断言していませんし、現在でも疑問はあるようです。

認知症は脳の特定部位のニューロン細胞が無くなることで発症しますが、ニューロン死滅の原因もあまり明らかではありません。

ニューロンが死ぬのはシナプスから出てくるある物質(神経成長因子、抑制因子)の減少が関係していると思われました。

実はニューロン細胞の数は誕生から20歳の間に急激に減少し、その後はほぼ一定の比率で緩やかに減少するので、ニューロンの減少だけで認知症を説明することは困難です。

人間の脳は生まれる時に過剰な数のニューロン細胞を作っておき、成長とともに必要なニューロンネットワークを残して余分なニューロンを分解してしまうらしい。認知症の場合は必要以上にニューロンが分解されたといういうことなのかも。

本書で当時明らかになってきた認知症と水道水中のアルミニウム濃度との関係が指摘されています。何らかの関係が疑われていますが、今でも水溶性のアルミニウム化合物がアルツハイマーとどう関係するのかは明らかでないようです。

原因究明が困難な理由として慢性毒性に関する研究の困難が指摘されています。慢性毒性は病状の発現までに長い時間がかかるので、実験で証明するのが難しいためです。あの水俣病でさえ原因物質の特定は長い時間がかかりました(この場合は学術的な困難さ以外に、原因と目された企業の妨害?もあったかもしれませんが)。


以下は読んだ感想です。

最近、アルツハイマー型認知症の治療薬が保険適用になったというニュースがありましたが、その効果はそれほどでもないという意見もあり、この本から30年経ってもアルツハイマーへの決定的な治療法はまだないようです。

読み終わって不思議に思うのは、100歳になっても認知症に縁がない人たちがいることです。僕の義理の叔母さんは100歳近いのに毎朝新聞を読んでいるといい、会話も明晰です。一方、もっと若い僕の母親は既に認知症がかなり進んでおり、僕が誰だか思い出せないようです。

認知症に糖尿病はいけないという話もあるし、僕はとりあえず血糖値を下げる努力を続けますか。
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三太郎
三太郎 さん本が好き!1級(書評数:828 件)

1957年、仙台に生まれ、結婚後10年間世田谷に住み、その後20余年横浜に住み、現在は仙台在住。本を読んで、思ったことあれこれを書いていきます。

長年、化学メーカーの研究者でした。2019年から滋賀県で大学の教員になりましたが、2023年3月に退職し、10月からは故郷の仙台に戻りました。プロフィールの写真は還暦前に米国ピッツバーグの岡の上で撮ったものです。

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