efさん
レビュアー:
▼
傭兵辞めてカフェ開いちゃうからね~
 ヴィヴはオークの傭兵でした。ノームやらエルフやら、ファンタジー世界の登場人物たちと仲間を組み、依頼された仕事をこなす生傷の絶えない日々。
まあ、オークですからね。腕っぷしは強いのです。
でも、ある日、思い立ち、傭兵稼業から足を洗うことを決意します。
私はカフェを開く!
どうも傭兵時代に飲んだコーヒーの味が忘れられず、自分でもコーヒーを出す店をやりたいと思うようになったんですね。
この世界ではどうもまだまだコーヒーは広くは知られていないようなのです。
でも、これまでに貯めた金を元手にして、ヴィヴは店を開くことに決めちゃいました。
店の立地に関しては……。
どうやらこの世界には奇力というものがあるようで、何でしょうね、魔力の脈流?
とにかく、そういう流れの良い場所を魔術棒を使って探し回りました。
そうして見つけたのがテューネという町にある、廃墟のような貸馬屋でした。
もう営業はしていないようなので、早速酒場で飲んだくれていた持ち主を探し出し、即金で買い取ったのです。
さて、次は店の設えだ。
港に行き、腕の良さそうなフリーの船大工を探します。これだ! と目を付けたのがカルでした。ヴィヴはカルと話をつけ、店をリフォームしてもらうことにしたのです。
ヴィヴにはある頼りにしている物がありました。
それは最後の仕事で手に入れたスカルヴァートの石というお宝です。
まあ、伝説というか噂レベルの話で、本当かどうか定かではないのですが、この石を持っていると幸運の輪を引き寄せると言われているのです。
コーヒー自体ろくに知られてもいないような世界で素人がカフェを開いたってそりゃ上手くいくとも思えないのですが、ヴィヴはスカルヴァートの石には噂通りの力があると信じ、その力を頼りにカフェを開くことに決めたのです。
スカルヴァートの石は、店の敷石の下にこっそり隠しました。
さて、次は従業員が必要だ。
ということで、町の掲示板に従業員募集の張り紙を出します。
これに応じてやって来たのはサキュバスのタンドリ。
え゛~、サキュバスなの~。ヤバくね?
なんですが、まあ、贅沢も言っていられないので即採用!(後に、彼女は非常に有能だと分かるんですが)。
注文していたコーヒーマシン(ノームが作ったんだそうです)も届き、いよいよオープン! 店の名前はカルが命名した『伝説とカフェラテ』に決まりました。
……客、来ません。
そりゃそうだろうねえ。みんなコーヒーなんて知らないんだもの。
タンドリも知らなかったんですが、ヴィヴが淹れてやったコーヒーを飲んで、これは良いものだ! とすっかり気に入ってはいるので、飲んでくれさえすれば客はつくと思うのですが……。
宣伝が必要よ! まずはみんなにコーヒーの味を知ってもらわなきゃ。
というタンドリのアドバイスもあり、タンドリが描いた看板を立て、開店記念コーヒー無料サービス企画をぶち上げます。
物珍しさに引かれて店にやって来る客もちらほら出始めます。
そうやって、開店記念無料企画を終えた後も店に来てくれる客もつき始めるのです。
その中に、いつもうっとりとした顔でコーヒーを飲んでいるシンブルというラットキン(小鼠人)が目に留まります。このシンブルが良いのよ~。私のイチ推しです!(表紙にも描かれているネズミみたいな奴です)。
もしかしたら……と思ったヴィヴは、シンブルに声をかけてみます。
君って、もしかしたらパンなんかに詳しかったりしない?
それはラットキンが得意とするところでした。
翌日、シンブルは手製のシナモンロールを店に持って来たのです。
なんだこりゃ~!! シンブルのシナモンロールは絶品でした。
うちでパン職人として働かない? やってくれる? はい、即採用!
こうして陣容は充実し、シンブルが作るパンも大好評。
店は軌道に乗り、繁盛していくのです。
これもスカルヴァートの石の力かもしれない……。
しかし、困ったことも起き始めます。
まあ、お約束なんですが、この町を牛耳っている奴がいて、みかじめ料を要求してくるのです。
そんなおかしな金は払わない! ヴィヴはそう思っているのですが、あちらも手慣れたもので、まあ、お前さんは腕っぷしは強いだろうが、この店が火事になったり、従業員が怪我をしたり、店にはいろんなことが起きるもんだと脅されてしまいます。
どうしたら良いんだ……。
はたまた、かつての仲間だったエルフ(いけすかない奴なんです)が、ヴィヴの店が繁盛していると聞きつけてやって来ます。どうやらこいつ、スカルヴァートの石の事を知っているようなんです。
分け前は十分にやったはずじゃないか。
確かにそうなんですが、こいつはそんなことでは引き下がりません。腕づくでスカルヴァートの石を奪うつもりなんです。
とまあ、こんな感じの物語で、ヴィヴは『伝説とカフェラテ』の店を守り切ることができるのか? というお話になっていきます。
いやあ、面白かった~。
キャラも立っていますし、すごく良い感じの話で私はとても気に入りました。
本書には、ヴィヴがコーヒーに目覚めることになる、傭兵時代の話を綴った短編も併録されています。
ファンタジー設定を基盤にして、コージータイプの話にしているのですが、安心して読めますし、後味もとてもよろしいです。
 
なお、巻末の訳者あとがきではヴィヴを女性と書いているのですが、そうなの?
私は読み終えても男性だとばかり思っていましたよ。
読んだ印象としては間違いなく男性キャラだとばかり思っていたんですけどね~(どうやら何かを読み落としたらしい)。
とにかく、個人的には非常に気に入った作品で一気読みしてしまいました。お勧め!
読了時間メーター
□□ 楽勝(1日はかからない、概ね数時間でOK)/396ページ:2024/08/22
まあ、オークですからね。腕っぷしは強いのです。
でも、ある日、思い立ち、傭兵稼業から足を洗うことを決意します。
私はカフェを開く!
どうも傭兵時代に飲んだコーヒーの味が忘れられず、自分でもコーヒーを出す店をやりたいと思うようになったんですね。
この世界ではどうもまだまだコーヒーは広くは知られていないようなのです。
でも、これまでに貯めた金を元手にして、ヴィヴは店を開くことに決めちゃいました。
店の立地に関しては……。
どうやらこの世界には奇力というものがあるようで、何でしょうね、魔力の脈流?
とにかく、そういう流れの良い場所を魔術棒を使って探し回りました。
そうして見つけたのがテューネという町にある、廃墟のような貸馬屋でした。
もう営業はしていないようなので、早速酒場で飲んだくれていた持ち主を探し出し、即金で買い取ったのです。
さて、次は店の設えだ。
港に行き、腕の良さそうなフリーの船大工を探します。これだ! と目を付けたのがカルでした。ヴィヴはカルと話をつけ、店をリフォームしてもらうことにしたのです。
ヴィヴにはある頼りにしている物がありました。
それは最後の仕事で手に入れたスカルヴァートの石というお宝です。
まあ、伝説というか噂レベルの話で、本当かどうか定かではないのですが、この石を持っていると幸運の輪を引き寄せると言われているのです。
コーヒー自体ろくに知られてもいないような世界で素人がカフェを開いたってそりゃ上手くいくとも思えないのですが、ヴィヴはスカルヴァートの石には噂通りの力があると信じ、その力を頼りにカフェを開くことに決めたのです。
スカルヴァートの石は、店の敷石の下にこっそり隠しました。
さて、次は従業員が必要だ。
ということで、町の掲示板に従業員募集の張り紙を出します。
これに応じてやって来たのはサキュバスのタンドリ。
え゛~、サキュバスなの~。ヤバくね?
なんですが、まあ、贅沢も言っていられないので即採用!(後に、彼女は非常に有能だと分かるんですが)。
注文していたコーヒーマシン(ノームが作ったんだそうです)も届き、いよいよオープン! 店の名前はカルが命名した『伝説とカフェラテ』に決まりました。
……客、来ません。
そりゃそうだろうねえ。みんなコーヒーなんて知らないんだもの。
タンドリも知らなかったんですが、ヴィヴが淹れてやったコーヒーを飲んで、これは良いものだ! とすっかり気に入ってはいるので、飲んでくれさえすれば客はつくと思うのですが……。
宣伝が必要よ! まずはみんなにコーヒーの味を知ってもらわなきゃ。
というタンドリのアドバイスもあり、タンドリが描いた看板を立て、開店記念コーヒー無料サービス企画をぶち上げます。
物珍しさに引かれて店にやって来る客もちらほら出始めます。
そうやって、開店記念無料企画を終えた後も店に来てくれる客もつき始めるのです。
その中に、いつもうっとりとした顔でコーヒーを飲んでいるシンブルというラットキン(小鼠人)が目に留まります。このシンブルが良いのよ~。私のイチ推しです!(表紙にも描かれているネズミみたいな奴です)。
もしかしたら……と思ったヴィヴは、シンブルに声をかけてみます。
君って、もしかしたらパンなんかに詳しかったりしない?
それはラットキンが得意とするところでした。
翌日、シンブルは手製のシナモンロールを店に持って来たのです。
なんだこりゃ~!! シンブルのシナモンロールは絶品でした。
うちでパン職人として働かない? やってくれる? はい、即採用!
こうして陣容は充実し、シンブルが作るパンも大好評。
店は軌道に乗り、繁盛していくのです。
これもスカルヴァートの石の力かもしれない……。
しかし、困ったことも起き始めます。
まあ、お約束なんですが、この町を牛耳っている奴がいて、みかじめ料を要求してくるのです。
そんなおかしな金は払わない! ヴィヴはそう思っているのですが、あちらも手慣れたもので、まあ、お前さんは腕っぷしは強いだろうが、この店が火事になったり、従業員が怪我をしたり、店にはいろんなことが起きるもんだと脅されてしまいます。
どうしたら良いんだ……。
はたまた、かつての仲間だったエルフ(いけすかない奴なんです)が、ヴィヴの店が繁盛していると聞きつけてやって来ます。どうやらこいつ、スカルヴァートの石の事を知っているようなんです。
分け前は十分にやったはずじゃないか。
確かにそうなんですが、こいつはそんなことでは引き下がりません。腕づくでスカルヴァートの石を奪うつもりなんです。
とまあ、こんな感じの物語で、ヴィヴは『伝説とカフェラテ』の店を守り切ることができるのか? というお話になっていきます。
いやあ、面白かった~。
キャラも立っていますし、すごく良い感じの話で私はとても気に入りました。
本書には、ヴィヴがコーヒーに目覚めることになる、傭兵時代の話を綴った短編も併録されています。
ファンタジー設定を基盤にして、コージータイプの話にしているのですが、安心して読めますし、後味もとてもよろしいです。
なお、巻末の訳者あとがきではヴィヴを女性と書いているのですが、そうなの?
私は読み終えても男性だとばかり思っていましたよ。
読んだ印象としては間違いなく男性キャラだとばかり思っていたんですけどね~(どうやら何かを読み落としたらしい)。
とにかく、個人的には非常に気に入った作品で一気読みしてしまいました。お勧め!
読了時間メーター
□□ 楽勝(1日はかからない、概ね数時間でOK)/396ページ:2024/08/22
お気に入り度:









掲載日:
外部ブログURLが設定されていません
投票する
投票するには、ログインしてください。
幻想文学、SF、ミステリ、アート系などの怪しいモノ大好きです。ご紹介レビューが基本ですが、私のレビューで読んでみようかなと思って頂けたらうれしいです。世界中にはまだ読んでいない沢山の良い本がある!
この書評へのコメント
 - コメントするには、ログインしてください。 
書評一覧を取得中。。。
- 出版社:東京創元社
- ページ数:0
- ISBN:9784488559052
- 発売日:2024年05月20日
- 価格:1320円
- Amazonで買う
- カーリルで図書館の蔵書を調べる
- あなた
- この書籍の平均
- この書評
※ログインすると、あなたとこの書評の位置関係がわかります。






















