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三太郎さん
三太郎
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最新の重力波測定のお話。
今年の6月に出たばかりの本です。ブルーバックスなので、専門知識がなくても超長波長の重力波と宇宙誕生の秘密との関係を知ることができるように書かれています。

著者の浅田氏は三体問題 天才たちを悩ませた400年の未解決問題の作者で、重力の専門家のようです。

我々の宇宙はビッグバンにより始まったという説は1945年にガモフにより提唱されましたが、その証拠が見つかったのは1964年のことで、それが「宇宙マイクロ波背景輻射」の発見でした。マイクロ波は電波の一種で、この本では電波天文学が大活躍します。

ところでビッグバン理論には幾つかの矛盾点があって、それを解決しそうなのが「インフレーション理論」です。ビッグバンの前にインフレーションがあります。このインフレーション期では最初は小さかった宇宙が急激な膨張により一旦事象の地平線を越えてしまいますが、インフレーションの後期には事象の地平線が拡大してビッグバン前の宇宙は事象の地平線の内側に収まるという筋書きです。この理論により宇宙の急激な膨張によっても宇宙全体が均一であることが説明されます。

このインフレーション期に発生した重力波(宇宙の密度の急激な減少により発生)が現在までの膨張により引き延ばされて振動数が10億分の1ヘルツ(振動周期が30年)という超低周波の重力の波(ナノヘルツ重力波)となって宇宙を高速で走り抜けています。その超低周波の弱い重力波を検出しようというお話です。

実はナノヘルツ重力波の発生源はインフレーションだけではなくて、巨大なブラックホールの連星によっても発生します。本書ではブラックホールが提案され発見された経緯も見ていきます。

本書の構成はよく考えられていて、重力理論の解説、重力望遠鏡の原理、連星パルサー、インフレーション理論、巨大ブラックホールの謎、ナノヘルツ重力波の検出方法となっていて、重力波に関連する物理学の概要を順繰りに解説してくれています。

現状はまだインフレーション期に発生した重力波の検出には至っていないものの、その準備は国際協力による検出網の構築により段々と整ってきているとのこと。

最新の天文学の話題に興味のある方にはお勧めしたい本です。

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三太郎
三太郎 さん本が好き!1級(書評数:825 件)

1957年、仙台に生まれ、結婚後10年間世田谷に住み、その後20余年横浜に住み、現在は仙台在住。本を読んで、思ったことあれこれを書いていきます。

長年、化学メーカーの研究者でした。2019年から滋賀県で大学の教員になりましたが、2023年3月に退職し、10月からは故郷の仙台に戻りました。プロフィールの写真は還暦前に米国ピッツバーグの岡の上で撮ったものです。

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