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星落秋風五丈原
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田沼時代 平賀源内と秋田の小藩のつながりとは?
 平賀源内は、日本のレオナルド・ダ・ヴィンチと称される天才だ。本草学とオランダ語、医学、油絵などを学び、文系も理系も両方いける。土用の丑のコピーを作ったり、エレキテルを作ったり、物産展を開いたりと大活躍。時の老中田沼意次とも顔パスだったようだ。ところがこれだけの活躍をした人にていは、晩年がいただけない。いや、晩年と言ってしまっていいのか。彼は52歳で亡くなる。破傷風による病死だが、獄死である。大工二人を殺傷した罪で、罪人となった。これだけクレバーな人が、人を殺すなどという、割に合わない、いや、愚かな事をやってのけるはずがない。ボケるには早い。江戸時代の謎の一つでもある。

 史実では、安永2年(1773年)に出羽秋田藩の佐竹義敦に招かれて鉱山開発の指導を行い、秋田藩士小田野直武に蘭画の技法を伝えている。本書はこの件を膨らませ、かつ源内の死とミステリを帯びた小説に仕上げている。

 実際に直武が突然の遠慮謹慎を申し渡され角館へ帰ったのは源内の人情事件の前後である。後であれば、関わり合いを恐れた藩の対応とも納得できるが、前であった場合は、本編のような推理も成り立つ。また彼は享年31歳で急死している。急死という言葉の響きが、何とも怪しい。死の直前に着ていた着物には血がついていたという。病死するような年齢ではない。だとすれば暗殺か。

 昔は賄賂を貰う腐敗した男の代名詞だった田沼意次だが、年貢による経済から金による経済に舵を切った、時代の改革期を担ったという高評価も出てきて復権しつつある。本編では従来のイメージに戻り、佐竹藩の弱みを握りながら、凋落に向かう自身を繋ぎとめようとする強かさを見せる。源内は才人として活躍していた時期から、怯えながらも必死に生きようとする姿を見せ、直武は巨大な権力に翻弄される悲劇の人物として描かれる。

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星落秋風五丈原
星落秋風五丈原 さん本が好き!1級(書評数:2320 件)

2005年より書評業。外国人向け情報誌の編集&翻訳、論文添削をしています。生きていく上で大切なことを教えてくれた本、懐かしい思い出と共にある本、これからも様々な本と出会えればと思います。

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