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DBさん
DB
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深海の環境と生物の本
国土は狭い日本ですが、海に囲まれた島国ゆえにEEZ面積は大きい。
そしてその中に千島・カムチャツカ海溝、日本海溝、伊豆・小笠原海溝、そしてマリアナ海溝と南西諸島海溝を抱える深海大国だ。
本書では深海の謎を解くべく、深海探査にチャレンジした歴史から紹介しています。
世界最深のチャレンジャー淵へ潜ったのはわずか13人、月面着陸した人間の数にわずか1名上回るだけだ。

その中で2019年にリミティング・ファクター号で五大洋全ての最深部へ潜航するという快挙を成し遂げた探検家ヴェスコーボの挑戦について詳しく追っていきます。
リミティング・ファクター号の潜航ではあらかじめランダーという無人機を先に投下し、有人のフルデプス潜水艦を下ろすことで超深海の観測と試料採取を可能にしたそうだ。
大西洋のプエルトリコ海溝、南極海の南サンドウィッチ海溝、インド洋のスンダ海溝、北極海のモロイ海溝、そして最も深いチャレンジャー海淵だ。

海の表層部は太陽熱や月の引力による拡販が行われているが、深海でも海水の流れが存在する。
海水の密度の違いによる深層水の動きである熱塩循環により、全海洋を二千年で一巡するコンベアーベルトが形成されているそうだ。
海底温泉が果たす役割や、温暖化による熱塩循環への影響についてわかりやすく説明してあった。

海溝底にはマリンスノーという形で有機物質が降ってきて、そこに住む深海生物の生命を支えている。
海溝には周囲からマリンスノーが集まってくることで他の場所よりも生命活動が活発なのではないかという説があるそうで、実際に海溝の底の酸素消費量は他の場所よりも大きいという観測結果があるそうだ。
高い水圧、太陽光の欠如、乏しい食糧という厳しい環境の中で生き抜いている深海生物についても紹介しています。
深海生物は独特の姿形をしているが、浅海にも仲間がいて深海固有の門に属する生物はいないそうだ。
チャレンジャー海淵ではカイコウオオソコエビが採取され、ナマコの仲間が観察されている。

深海生物は大きな口で獲物を逃さないようにしている生物がいる一方、ハオリムシやシロウリガイ、ゴエモンコシオリエビのように共生体である微生物が作り出した栄養を摂取することで生命活動を維持する生命がいる。
そんな彼らの生活の場となる熱水噴出孔や鯨骨について、そして深海生物の出会いの場が少ないが故の生殖方法についても語られていた。

まだわからないことの方が多い深海だが、そんな深海でさえも温暖化やマイクロプラスチック、熱水鉱床の採掘により環境破壊が起きている。
海を守るために何ができるか考えさせる本でもあった。
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DB さん本が好き!1級(書評数:2034 件)

好きなジャンルは歴史、幻想、SF、科学です。あまり読まないのは恋愛物と流行り物。興味がないのはハウツー本と経済書。読んだ本を自分の好みというフィルターにかけて紹介していきますので、どうぞよろしくお願いします。

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