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ウロボロス
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この童話は、あの『ゲド戦記』の作者でアメリカSF界の女王としてリスペクトされるアーシュラ・K・ル=グウィンの作品でシリーズ化されており、そのはじまりの第一作のようです。
ジェーン・タビー母さんから生まれた4匹の子猫たち(セルマ、ロジャー、ジェームス、ハリエット)には生まれつき羽が生えていました。最初その理由がタビー母さんにもわかりませんでした。
まわりの野良猫たちからは、一家の主(タビー母さんの夫であり、子猫たちの父親)が「家を空けて遊びまわり飛びまわっているからだよ」とからかわれていました。しかしある夢を見たことがきっかけだったと気づきます。

仲よし4兄弟は、これから成長していくためにお母さんからの教えを学んでいきます。しかしゆくてには厳しい現実が待ちかまえています。他の生き物たちとの共存と時には競争もしなければならないからです。ネズミくんや小鳥のミソサザイたちもでてきます。そんななかで一番気をつけなければならないのがニンゲンの「手」であると教えられます。

その手には「良い手」もあれば、「悪い手」もあるからです。良い手のニンゲンは、頭や喉のあたりを撫でてくれたり餌も恵んでくれるからです。
そして彼らは森でハンクとスーザンの心やさしい兄妹に出会うのですが………。村上春樹さんによって時にはユーモアをちりばめた美しい日本語に翻訳された素敵な童話です。

《表紙を一目見たときから、僕はこの本を翻訳しようと決心しました。だって木の枝にとまった四匹の猫に翼がはえているのだから、これはどうしたってやらないわけにはいかないですよね 》
───訳者あとがきより

human beans と humn beingの訳をインゲンとニンゲンと訳するあたりの秘話も紹介されていて翻訳の苦労話も、とても面白かったです。

猫に翼が生えるという異質で過剰なモノとしての付加にまわりの動物たちも驚きの目をむける。
まず鳥たちが反応する。翼は俺たちだけのものなのになんであいつ等にもあるんだ?ずるいと!
異質なものを排除するのではなく、それらと共存共栄し、持続可能な社会を達成するための真のダイバーシティへの問題提起でもある。

動物の比喩で思いだしたのが、マルクスの貨幣の喩えである。貨幣の出現の奇妙さをマルクスはこう言った。「草原に様々な動物たちがいる中に、突然、貨幣という名の動物が現れたようなものである」と。貨幣によってあらゆるものを手にすることが可能となった。そこで次は『所有せざる人々』かな?
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ウロボロス
ウロボロス さん本が好き!1級(書評数:275 件)

これまで読んできた作家。村上春樹、丸山健二、中上健次、笠井潔、桐山襲、五木寛之、大江健三郎、松本清張、伊坂幸太郎
堀江敏幸、多和田葉子、中原清一郎、等々...です。
音楽は、洋楽、邦楽問わず70年代、80年代を中心に聴いてます。初めて行ったLive Concertが1979年のエリック・クラプトンです。好きなアーティストはボブ・ディランです。
格闘技(UFC)とソフトバンク・ホークス(野球)の大ファンです。

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