はるほんさん
レビュアー:
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Welcome to this crazy Time このイカレた時代へようこそ
平安時代 それは
雅ときらびやかさ、イケメンとな美女が
歌ってオジャって涙する、インド映画のような世界──
というイメージを粉砕する本である。
以前から平安時代ちょいブームをくすぶらせている。
この優雅なイメージと裏腹に、存外
おどろおどろしかったり陰鬱だったりするギャップが気になっているのだ。
故にこのクズだらけの(笑)平安時代解説は
個人的にチョー面白かった。
元ネタは藤原実資(さねすけ)の「小右記」という日記である。
時代としては、光源氏のモデルの1人である藤原道長の頃に書かれている。
まさに平安時代の雅イメージそのものである「源氏物語」、
このストーリーを念頭に本書を読むと面白い。
例えば藤原道綱。
「なげきつつ…」の母親の百人一首が有名だが、
彼が道長と賀茂祭見物に出かけ、牛車に投石された話が出ている。
右大臣の行列の前を横切ったため、従者たちが怒って攻撃したらしい。
思わず浮かぶのが、源氏物語の中で
光源氏の妻の行列に追いやられた六条御息所の牛車のくだりだ。
御息所が生霊化する生々しいエピソードだが、
これらは平安時代に当たり前に起こったことらしい。
とにかく、この時代の貴族たちはメンドクサイ。
身分の高い人の門を車に乗ったまま通ったとか、
また逆に車もなしに歩かされたとか
烏帽子をとられて髻(=まげ)が人前に晒されたとか
そんなことで簡単にプライドがズタズタになってしまう。
従者たちと言っても、雇われた身分の低い者だ。
彼らは主人に「箔」があってこそ輝く訳だから、
主人の顔に泥を塗られれば、すぐさまやり返す。
ちょっとヤンキーの闘争っぽい。(笑)
またその貴族たちも、それが当たり前だと思っている。
栄華の絶頂にあった藤原家は、とんとん拍子に出世していく。
道長自身も若干22歳で権中納言となった。
言い換えれば、まだ新入社員くらいの年で部長クラスに成り上がった。
そんなボスに、礼節ある部下を育てるなんて土台無理なのだ。
つまりケンカの火種があちこちに転がっていた時代だったのだ。
歴史書ではないので詳細不明なこともあるのだが、
平安時代が結構にイカれた時代であったことは、個人的に納得だ。
そんな中で書き上げられた「源氏物語」。
歌って踊れるイケメンで、美女も醜女も見捨てない光源氏は
綿菓子と女性の夢で出来た男だと思っていたが、違うのやもしれない。
リンチにレイプ、そしてそれらを揉み消すような自己中貴族社会、
メンドクサいプライドを振りかざす男たちの中に在って、
気高く美しい振る舞いを忘れなかった光源氏は、
本当の意味で女たちには「光」だったのかもしれない。
紫式部が描きたかったのは、そこだったのだろうか。
ケンシロウとはまた違うが、
光源氏もまた世紀末の救世主であったのか。
そう思うと今までネタ扱いだった彼が、カッコよく見えて来た。
光源氏「お前はもう──ホレている。アチョウウウツツ!!!」
ごめん、やっぱネタだわ。
雅ときらびやかさ、イケメンとな美女が
歌ってオジャって涙する、インド映画のような世界──
というイメージを粉砕する本である。
以前から平安時代ちょいブームをくすぶらせている。
この優雅なイメージと裏腹に、存外
おどろおどろしかったり陰鬱だったりするギャップが気になっているのだ。
故にこのクズだらけの(笑)平安時代解説は
個人的にチョー面白かった。
元ネタは藤原実資(さねすけ)の「小右記」という日記である。
時代としては、光源氏のモデルの1人である藤原道長の頃に書かれている。
まさに平安時代の雅イメージそのものである「源氏物語」、
このストーリーを念頭に本書を読むと面白い。
例えば藤原道綱。
「なげきつつ…」の母親の百人一首が有名だが、
彼が道長と賀茂祭見物に出かけ、牛車に投石された話が出ている。
右大臣の行列の前を横切ったため、従者たちが怒って攻撃したらしい。
思わず浮かぶのが、源氏物語の中で
光源氏の妻の行列に追いやられた六条御息所の牛車のくだりだ。
御息所が生霊化する生々しいエピソードだが、
これらは平安時代に当たり前に起こったことらしい。
とにかく、この時代の貴族たちはメンドクサイ。
身分の高い人の門を車に乗ったまま通ったとか、
また逆に車もなしに歩かされたとか
烏帽子をとられて髻(=まげ)が人前に晒されたとか
そんなことで簡単にプライドがズタズタになってしまう。
従者たちと言っても、雇われた身分の低い者だ。
彼らは主人に「箔」があってこそ輝く訳だから、
主人の顔に泥を塗られれば、すぐさまやり返す。
ちょっとヤンキーの闘争っぽい。(笑)
またその貴族たちも、それが当たり前だと思っている。
栄華の絶頂にあった藤原家は、とんとん拍子に出世していく。
道長自身も若干22歳で権中納言となった。
言い換えれば、まだ新入社員くらいの年で部長クラスに成り上がった。
そんなボスに、礼節ある部下を育てるなんて土台無理なのだ。
つまりケンカの火種があちこちに転がっていた時代だったのだ。
歴史書ではないので詳細不明なこともあるのだが、
平安時代が結構にイカれた時代であったことは、個人的に納得だ。
そんな中で書き上げられた「源氏物語」。
歌って踊れるイケメンで、美女も醜女も見捨てない光源氏は
綿菓子と女性の夢で出来た男だと思っていたが、違うのやもしれない。
リンチにレイプ、そしてそれらを揉み消すような自己中貴族社会、
メンドクサいプライドを振りかざす男たちの中に在って、
気高く美しい振る舞いを忘れなかった光源氏は、
本当の意味で女たちには「光」だったのかもしれない。
紫式部が描きたかったのは、そこだったのだろうか。
ケンシロウとはまた違うが、
光源氏もまた世紀末の救世主であったのか。
そう思うと今までネタ扱いだった彼が、カッコよく見えて来た。
光源氏「お前はもう──ホレている。アチョウウウツツ!!!」
ごめん、やっぱネタだわ。
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歴史・時代物・文学に傾きがちな読書層。
読んだ本を掘り下げている内に妙な場所に着地する評が多いですが
おおむね本人は真面目に書いてマス。
年中歴史・文豪・宗教ブーム。滋賀偏愛。
現在クマー、谷崎、怨霊、老人もブーム中
徳川家茂・平安時代・暗号・辞書編纂物語・電車旅行記等の本も探し中。
秋口に無職になる予定で、就活中。
なかなかこちらに来る時間が取れないっす…。
2018.8.21
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- 出版社:柏書房
- ページ数:229
- ISBN:9784760127894
- 発売日:2005年09月01日
- 価格:2310円
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