DBさん
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土佐から始まる白鯨の話
上下巻通しての書評です。
『白鯨』のタイトルですが、話は新聞記者がジョン万次郎の家を訪れたシーンで始まります。
幕末から明治維新という激動の時代にアメリカと日本の橋渡しとして働き、教育者としても知られる万次郎から維新を彩った人々の話を聞きたいと新聞記者は願っていたが、万次郎は「鯨」の話を聞かせようという。
そして自分がなぜ鯨を追うことになったのかを知ってもらうために、その生い立ちから話始めます。
土佐で漁師の次男として生まれた万次郎は、幼いころから海で遊び釣りをして毎日を過ごしていた。
ある日海で鰹鯨と呼ばれるニタリクジラを目にしてから、万次郎はクジラに憑りつかれてしまう。
鯨漁は山を越えた窪津でしていると知り、家を抜け出して一人山を越えて窪津へとたどり着く。
そこで出会ったのが、半九郎という名前のかつて羽刺と呼ばれる鯨漁で銛をうつ役目をしていた老人だ。
窪津に通うにつれて鯨漁の話や、かつて出会った巨大な白いマッコウクジラの話を半九郎に聞かされます。
父親が亡くなってから働くようになっていた万次郎は、乗り込んでいた漁船が難破して伊豆諸島の無人島へたどり着く。
そこで仲間と共に助けを待って暮らしていたが、箱が流れてきたのを見に行って離岸流に長され漂流する。
広大な海原から万次郎を拾い上げてくれたのが捕鯨船ピークオッド号だった。
タイトルから航海途中に白鯨と出会ったというような話かと思っていたが、まさか本当にピークオッド号に乗り込んでしまうとは思わなかった。
片足が義足のエイハブ船長、作家を目指すイシュメール、食人族の銛打ちクイークェグ、拝火教徒の銛打ちフェダラーなどなどメルヴィルの『白鯨』そのままの世界だ。
だがなぜかスターバックだけは姿を見せず、その名前が時折語られるのみだった。
万次郎の目を通してモービィ・ディックを追いかけ、海の咢へ捕らえられていくピークオッド号が生き生きと描かれていきます。
「壮大な二次創作だよね」と思いながらも、物語に引き込まれて一気に読み通してしまった。
もちろん途中でガブリエルがピークオッド号に乗り込んできて、エイハブ船長が妄執と共に白鯨を追う姿はそのままだ。
白鯨との戦いを見届けた万次郎は再び漂流し、今度はジョン・ハウランド号に拾われます。
物語の大きな輪が見事につながった。
エピローグで後年勝海舟の通訳としてサンフランシスコに滞在していた万次郎をメルヴィルが訪ねていたという話には思わずニヤリとさせられた。
カツオのたたきで一杯やりながら読み通すことをお勧めしたい小説でした。
『白鯨』のタイトルですが、話は新聞記者がジョン万次郎の家を訪れたシーンで始まります。
幕末から明治維新という激動の時代にアメリカと日本の橋渡しとして働き、教育者としても知られる万次郎から維新を彩った人々の話を聞きたいと新聞記者は願っていたが、万次郎は「鯨」の話を聞かせようという。
そして自分がなぜ鯨を追うことになったのかを知ってもらうために、その生い立ちから話始めます。
土佐で漁師の次男として生まれた万次郎は、幼いころから海で遊び釣りをして毎日を過ごしていた。
ある日海で鰹鯨と呼ばれるニタリクジラを目にしてから、万次郎はクジラに憑りつかれてしまう。
鯨漁は山を越えた窪津でしていると知り、家を抜け出して一人山を越えて窪津へとたどり着く。
そこで出会ったのが、半九郎という名前のかつて羽刺と呼ばれる鯨漁で銛をうつ役目をしていた老人だ。
窪津に通うにつれて鯨漁の話や、かつて出会った巨大な白いマッコウクジラの話を半九郎に聞かされます。
父親が亡くなってから働くようになっていた万次郎は、乗り込んでいた漁船が難破して伊豆諸島の無人島へたどり着く。
そこで仲間と共に助けを待って暮らしていたが、箱が流れてきたのを見に行って離岸流に長され漂流する。
広大な海原から万次郎を拾い上げてくれたのが捕鯨船ピークオッド号だった。
タイトルから航海途中に白鯨と出会ったというような話かと思っていたが、まさか本当にピークオッド号に乗り込んでしまうとは思わなかった。
片足が義足のエイハブ船長、作家を目指すイシュメール、食人族の銛打ちクイークェグ、拝火教徒の銛打ちフェダラーなどなどメルヴィルの『白鯨』そのままの世界だ。
だがなぜかスターバックだけは姿を見せず、その名前が時折語られるのみだった。
万次郎の目を通してモービィ・ディックを追いかけ、海の咢へ捕らえられていくピークオッド号が生き生きと描かれていきます。
「壮大な二次創作だよね」と思いながらも、物語に引き込まれて一気に読み通してしまった。
もちろん途中でガブリエルがピークオッド号に乗り込んできて、エイハブ船長が妄執と共に白鯨を追う姿はそのままだ。
白鯨との戦いを見届けた万次郎は再び漂流し、今度はジョン・ハウランド号に拾われます。
物語の大きな輪が見事につながった。
エピローグで後年勝海舟の通訳としてサンフランシスコに滞在していた万次郎をメルヴィルが訪ねていたという話には思わずニヤリとさせられた。
カツオのたたきで一杯やりながら読み通すことをお勧めしたい小説でした。
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好きなジャンルは歴史、幻想、SF、科学です。あまり読まないのは恋愛物と流行り物。興味がないのはハウツー本と経済書。読んだ本を自分の好みというフィルターにかけて紹介していきますので、どうぞよろしくお願いします。
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- 出版社:KADOKAWA
- ページ数:0
- ISBN:9784041146330
- 発売日:2024年03月22日
- 価格:1144円
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