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DBさん
DB
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地中海に興亡した文明の本
地中海を舞台に繁栄した古代ギリシアのポリスとローマ帝国についてまとめた本です。
国は滅びても変わらないのはその地形であり気候だ。
夏は高温の乾季で冬は気温が高めの雨季、石材は豊富だが木材は乏しい自然条件が地中海世界を作り上げた。
ギリシア人はポリスを形成して自主独立した自由な精神を持ち文化を育んでいたが、マケドニア王国の支配に伴い弱体化し、ローマの支配下に統合されることになる。

クレタ文明やミケーネ文明を含むエーゲ文明は、エジプトや小アジア、ヒッタイトと衝突したり交流があって大きな一つの文化圏を形成していた。
イリリア人とトラキア人の東方進出、ドーリス人の南下、海の民の活動でエーゲ文明は崩壊し、ヒッタイト帝国の滅亡とトロイア落城がこの時期だ。
そして四百年の暗黒時代を経てようやくポリスが生まれます。

ポリスは農地を守るために編み出された重装歩兵の密集方陣という戦術のために貴族層が結束する必要から形成されたという。
そのためには経済的条件を確保する必要があり、ポリスは交換経済の場となる市場を提供した。
ポリスで活発化した商業活動が貨幣を産み富裕層が生まれるとともに、没落した貴族や土地を失った農民が外に出ることで植民地が生まれていく。
アテネのような民主制をとるポリスと、ドーリス人による征服国家として生まれたスパルタの国政の違いを見ていきながらペルシアという脅威に立ち向かうためのデロス同盟、そしてペロポネソス戦争へと移っていく。

戦争で衰退したポリスはヘレニズムの大きな波にのまれ、そしてローマが支配を拡大していく。
貴族制ポリスに近い形で始まったローマ王国は、周辺国と戦い併合して領土を増やしていく中で、支配者層を固定する寡頭制をとっていた。
だがローマ市民が重装歩兵として主戦力となることもあり、平民の政治的権利が上昇して独自の政治体制を形成していく。

ローマ帝国は基本的に他民族を融合して拡大していったが、政治的な危機や戦争を乗り越える中でその政治体制も変化させていった。
融合と変化こそが帝国の強みだったように思うが、最後の変化で融合を拒絶した帝国は滅びの道を突き進んでいく。
ポリス社会とローマ帝国という二千年に及ぶ歴史を俯瞰できる本だった。
個人的にはクレタ文明と海の民をさらに掘り下げてみたい。
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DB
DB さん本が好き!1級(書評数:2034 件)

好きなジャンルは歴史、幻想、SF、科学です。あまり読まないのは恋愛物と流行り物。興味がないのはハウツー本と経済書。読んだ本を自分の好みというフィルターにかけて紹介していきますので、どうぞよろしくお願いします。

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