かもめ通信さん
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ルシア・ベルリン作品集第3弾!今回もよかった。すごく良かった。
訳者あとがきによると、ルシア・ベルリン(1936-2004)は生涯の76の短篇を書いたのだという。
生前は無名に近かったが死後10年以上経った2015年、43篇を集めた作品集“A Manual for Cleaning Women”が出版されて、一躍世界に知られるようになったそうだ。
この“A Manual for Cleaning Women”は日本でも 『掃除婦のための手引書』(24篇を収録)と 『すべての月、すべての年』(19篇を収録)として訳出されていて、文句なしに★5つ、いずれもお気に入りの作品集だ。
いつ読んでもどれを読んでも納得の、すばらしい作品集ではあるのだが、もう新しい作品は読めないのだろうかと、残念に思っていたところの本書だ。
待望の翻訳作品集第3弾は、“A Manual for Cleaning Women”が世に出てから3年後に出版され、ルシア・ベルリンの評価を不動のものにしたと評される“Evening in Paradise”の全訳で22篇の短篇が収録されている。
これまでの作品集と同じく、一気に読むのがもったいなくて、行きつ戻りつしながら、じっくりとページをめくる。
テキサス、チリ、メキシコ、ニューヨーク…
子ども時代、思春期、何度目かの結婚生活…
アルコール、薬物、恋愛、仕事……
4人の息子たち…
痛々しいまでの苦悩とかすかな希望に深い絶望……
これまで読んできた作品にも登場してきた懐かしい面々が顔を出したり、憎みたくても憎みきれない男に翻弄されたり……。
寂しがりやでやさしくて、愛情深いがいつも愛に飢えていて、才能溢れて夢見がちで、どんなときでもユーモアがあって、それだけに人に誤解されもする。
汚物まみれで生々しいのに、どこか清らかで、熱情に翻弄されながらも、どこかクールで…。
作家の人生そのものを下敷きにした物語たち。
自分とは重なるところがまるでなく、なんの関係もないと思われる女性の人生に、どうしてこんなにも心惹かれ、胸の痛みを感じるのか。
会ったことのない人々や、見たことのない風景がどうしてこんなにも懐かしく、恋しくさえ思えるのか。
文字を追っているはずなのに、目の前に鮮やかな映像が浮かんでくる気がするのはなぜなのか。
いつまでも立ち去りがたく、読み終えたくない。
こんなにもせつなくやるせない気持ちにさせるのは、作家なのか訳者なのか、やはり両方なのだろうか。
ぜひとももう1冊、残りの作品を収録した作品集も出版して頂きたい。
生前は無名に近かったが死後10年以上経った2015年、43篇を集めた作品集“A Manual for Cleaning Women”が出版されて、一躍世界に知られるようになったそうだ。
この“A Manual for Cleaning Women”は日本でも 『掃除婦のための手引書』(24篇を収録)と 『すべての月、すべての年』(19篇を収録)として訳出されていて、文句なしに★5つ、いずれもお気に入りの作品集だ。
いつ読んでもどれを読んでも納得の、すばらしい作品集ではあるのだが、もう新しい作品は読めないのだろうかと、残念に思っていたところの本書だ。
待望の翻訳作品集第3弾は、“A Manual for Cleaning Women”が世に出てから3年後に出版され、ルシア・ベルリンの評価を不動のものにしたと評される“Evening in Paradise”の全訳で22篇の短篇が収録されている。
これまでの作品集と同じく、一気に読むのがもったいなくて、行きつ戻りつしながら、じっくりとページをめくる。
目を開けると、テキサスの澄んだ夜空があった。星。空はいちめん星でいっぱいで、あんまり数が多すぎるので縁からこぼれ落ちて、こっちに向かってころころ転がってくるみたいに見えた。
(「夏のどこかで」)
「タイニーが屋根の上にいる!タイニーが屋根の上にいる!」
下の連中が馬鹿の一つ覚えみたいにそう言っている。ああそうさ、あたしは屋根の上にいる。ついでにもひとつ教えてやると、もう二度と下りるつもりはない。
(「聖夜、テキサス 一九五六年」)
人は何年も経ってからその時のことを振り返って、あれがそもそもの始まりだった、とか、あのころは幸せだった、とか、昔は……だの、今は……だのと言う。あるいは、いついつになれば、これこれのことさえすれば、こうなりさえすれば幸せになる、などと思う。
(「楽園の夕べ」)
子供のころ、自分に眠りが訪れる瞬間をなんとかしてとらえようとした。
(「ルーブルで迷子」)
テキサス、チリ、メキシコ、ニューヨーク…
子ども時代、思春期、何度目かの結婚生活…
アルコール、薬物、恋愛、仕事……
4人の息子たち…
痛々しいまでの苦悩とかすかな希望に深い絶望……
これまで読んできた作品にも登場してきた懐かしい面々が顔を出したり、憎みたくても憎みきれない男に翻弄されたり……。
寂しがりやでやさしくて、愛情深いがいつも愛に飢えていて、才能溢れて夢見がちで、どんなときでもユーモアがあって、それだけに人に誤解されもする。
汚物まみれで生々しいのに、どこか清らかで、熱情に翻弄されながらも、どこかクールで…。
作家の人生そのものを下敷きにした物語たち。
自分とは重なるところがまるでなく、なんの関係もないと思われる女性の人生に、どうしてこんなにも心惹かれ、胸の痛みを感じるのか。
会ったことのない人々や、見たことのない風景がどうしてこんなにも懐かしく、恋しくさえ思えるのか。
文字を追っているはずなのに、目の前に鮮やかな映像が浮かんでくる気がするのはなぜなのか。
いつまでも立ち去りがたく、読み終えたくない。
こんなにもせつなくやるせない気持ちにさせるのは、作家なのか訳者なのか、やはり両方なのだろうか。
ぜひとももう1冊、残りの作品を収録した作品集も出版して頂きたい。
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本も食べ物も後味の悪くないものが好きです。気に入ると何度でも同じ本を読みますが、読まず嫌いも多いかも。2020.10.1からサイト献本書評以外は原則★なし(超絶お気に入り本のみ5つ★を表示)で投稿しています。
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- 出版社:講談社
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- ISBN:9784065332290
- 発売日:2024年09月26日
- 価格:2860円
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