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morimoriさん
morimori
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著名な絵師、作家を売り出した蔦屋重三郎とは、いったい何者?
 2025年の大河ドラマは、横浜流星演じる蔦屋重三郎。北斎や歌麿も登場するんだろうなと今からワクワクしている。しかし、蔦屋重三郎のことをそれほど知っているわけでもなく、どの絵師をプロデュースしたのかも詳しい訳ではない。この本が多くのことを教えてくれた。

 蔦屋重三郎略して蔦重、吉原遊郭で生まれ吉原のガイドブック「吉原細見」の編集改訂をはじめとして廃れかけていた吉原をV字回復させるための贈答本やイベント本を作ったそうだ。版元として実用書や狂歌本なども手掛けつつ戯作者たちをスカウトしたとか。山東京伝や曲亭馬琴、十返写一九を育てたという。

 つい、先日見たばかりの映画「八犬伝」の原作「南総里見八犬伝」を書いた馬琴を蔦重が育てた?なんと!映画に蔦重は登場しなかったが、八犬伝のファンタジックな世界と対比して、北斎と馬琴のやりとりがなんともおかしかった。馬琴の部屋でふたりが作品について話している情況を馬琴の妻お百が、「ジジイが二人部屋に籠って何をやってんだか」と愚痴るシーンは笑えた。そのお百との縁談を勧めたのが京伝と蔦重だったそうだ。

 売れない時代の喜多川歌麿とその妻を自宅兼店舗に住まわせて、才能を開花させたというエピソードや、謎の絵師、東洲斎写楽が10か月で145点以上もの作品を描いたという話。彗星の如く現れ唐突に消えてしまった写楽の正体も推察していて興味深かった。斎藤十郎兵衛と言う阿波徳島の能役者か、はたまた売れない頃の北斎かもしれないという。短い期間で唐突に消えてしまったのは、写楽の描いた作品がうれなかったから。しかし、写楽の評価が変わったのは明治以降。それも、海外の批評家や研究家の目を通して逆輸入の形で日本人に知られたというから少し残念。その中には岡倉天心を指導したというアメリカ人アーネストフェノロサもいたという。

 田沼意次が実権を握っていた頃は、絵師たちも華々しく活躍できたものの寛政の改革で松平定信が老中に就任すると統制がかけられ蔦重は、財産の半分を没収されるという過料を科されたという記録が残っているらしい。山東京伝は、洒落本の発売禁止の上手鎖50日の刑を執行されたとか。それでも蔦重は起死回生を試み、歌麿の「美人大首絵」を販売した。松平定信が実権を握っていた6年間、絵師たちが苦労を強いられたことを想像するとなんだかなあ。

 蔦重がプロデュースした絵師、作家たちを知るとこんなにも多くの才能を引き出し世に知らしめたのだと改めて凄い人物だと驚いた。まさに、大河ドラマの主人公に相応しいのかもしれない。大河ドラマに登場する絵師や作家を、果たして誰がどう演じるのか楽しみだ。
 
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morimori
morimori さん本が好き!1級(書評数:951 件)

多くの人のレビューを拝見して、読書の幅が広がっていくのが楽しみです。感動した本、おもしろかった本をレビューを通して伝えることができればと思っています。

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