DBさん
レビュアー:
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青の炎に焼き尽くされる話
カドフェス2023です。
四半世紀前に書かれたミステリーだが、そういえばスマホが出てこないなというくらいで古さはあまり感じない。
主人公は櫛森秀一、美術部所属の高校生だ。
ロードバイクで高校に通う姿が軽快に描かれています。
脚力をすべて推進力に変換するのがロードバイクだそうですが、バイトでためたお金でフレームを買い自分で改造して乗っている秀一は努力型の人間だと思う。
学校では穏やかな友人の大門や、同じ美術部でもあり恋人未満の紀子と平和な日常を過ごしていた。
秀一の父親は彼がまだ幼いころに事故で亡くなっており、義両親との生活が辛くなった母親は再婚し、子供を連れて櫛森家を出ていった。
だがこの再婚相手の曽根という男が妻の稼ぎをあてにして子供に暴力をふるうような人間で、親子は助けを求めて櫛森家に戻ることになる。
祖父母が亡くなって三人になった櫛森家だったが、祖父母が残した大きな一軒家で仲良く暮らしていた。
幸せな生活が一変したのは、十年ぶりに曽根が櫛森家を訪ねてきて無理やり家に居座ってからだった。
酒浸りで気に入らないことがあれば怒鳴りつけ、家の金を持ちだしては賭け事や飲み代に使ってしまう。
それでも母親はなぜか曽根を追い出そうとはしない。
酔いつぶれていれば害も少ないだろうと酒をあてがうだけだ。
秀一は母親と妹に平和な生活を取り戻してやりたくて弁護士に会いに行ってみたり、酒に薬を混ぜてみたりと行動的だ。
シアナマイド入りの酒を飲ませて酔い潰すという作戦だが、そのまま酒を飲ませ続けていれば目標は達成できる気がしなくもない。
「青の炎」は秀一の怒りの炎が赤を通り越して温度を上げ青くなった状態をタイトルにしたものだった。
友人が祖父から教えられた「瞋恚は害毒だから怒りを持たない」という教えと対照的だ。
青の炎を抱えたまま秀一は頭の中で事故死に見える方法をいろいろとシュミレーションするが、その合間に『罪と罰』や『檸檬』、『こころ』といった名作と呼ばれる作品が挿入されているのが面白い。
悩める年頃にあまり人生の絶望を突きつけるような本は読ませるべきじゃないのかもしれない。
前半では本当に計画を実行するのかどうかで引っ張り、後半はまた別の悩みに捕らわれます。
友情も恋も家族への愛情もありながら、ひとつ狂った歯車が全体に普及していくかのような話だった。
四半世紀前に書かれたミステリーだが、そういえばスマホが出てこないなというくらいで古さはあまり感じない。
主人公は櫛森秀一、美術部所属の高校生だ。
ロードバイクで高校に通う姿が軽快に描かれています。
脚力をすべて推進力に変換するのがロードバイクだそうですが、バイトでためたお金でフレームを買い自分で改造して乗っている秀一は努力型の人間だと思う。
学校では穏やかな友人の大門や、同じ美術部でもあり恋人未満の紀子と平和な日常を過ごしていた。
秀一の父親は彼がまだ幼いころに事故で亡くなっており、義両親との生活が辛くなった母親は再婚し、子供を連れて櫛森家を出ていった。
だがこの再婚相手の曽根という男が妻の稼ぎをあてにして子供に暴力をふるうような人間で、親子は助けを求めて櫛森家に戻ることになる。
祖父母が亡くなって三人になった櫛森家だったが、祖父母が残した大きな一軒家で仲良く暮らしていた。
幸せな生活が一変したのは、十年ぶりに曽根が櫛森家を訪ねてきて無理やり家に居座ってからだった。
酒浸りで気に入らないことがあれば怒鳴りつけ、家の金を持ちだしては賭け事や飲み代に使ってしまう。
それでも母親はなぜか曽根を追い出そうとはしない。
酔いつぶれていれば害も少ないだろうと酒をあてがうだけだ。
秀一は母親と妹に平和な生活を取り戻してやりたくて弁護士に会いに行ってみたり、酒に薬を混ぜてみたりと行動的だ。
シアナマイド入りの酒を飲ませて酔い潰すという作戦だが、そのまま酒を飲ませ続けていれば目標は達成できる気がしなくもない。
「青の炎」は秀一の怒りの炎が赤を通り越して温度を上げ青くなった状態をタイトルにしたものだった。
友人が祖父から教えられた「瞋恚は害毒だから怒りを持たない」という教えと対照的だ。
青の炎を抱えたまま秀一は頭の中で事故死に見える方法をいろいろとシュミレーションするが、その合間に『罪と罰』や『檸檬』、『こころ』といった名作と呼ばれる作品が挿入されているのが面白い。
悩める年頃にあまり人生の絶望を突きつけるような本は読ませるべきじゃないのかもしれない。
前半では本当に計画を実行するのかどうかで引っ張り、後半はまた別の悩みに捕らわれます。
友情も恋も家族への愛情もありながら、ひとつ狂った歯車が全体に普及していくかのような話だった。
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好きなジャンルは歴史、幻想、SF、科学です。あまり読まないのは恋愛物と流行り物。興味がないのはハウツー本と経済書。読んだ本を自分の好みというフィルターにかけて紹介していきますので、どうぞよろしくお願いします。
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- 出版社:角川書店
- ページ数:495
- ISBN:9784041979068
- 発売日:2002年10月01日
- 価格:700円
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